大変なももちゃん
智莉達のいる壊れた協会から十分離れたのを確認してから、薬を飲み亡霊から詩音の身体に戻る。
少しその状態で身体を動かし、違和感が無いことを確認し水晶を取りだし話し掛ける。
「チャシャネコか、今から戻るから。俺に伝える事を纏めておいてくれ」
「りょーかい、チャシャネコさんちゃんと纏めておくね。隠し場所は枕の下ね。
チャシャネコさんデート楽しみにしてるよ~」
学園に戻る前にチャシャネコに連絡を入れてから、学園の自分の部屋に入る。
部屋にはチャシャネコが直前までいた気配のみ残っており、チャシャネコの姿はない。
(チャシャネコ、面倒事を増やしてないよな)
そう思いつつ枕の下を調べチャシャネコからの報告書を受け取る。そこには、簡潔に誰が何時尋ねて来たかが書いてあった。
来たので詩音として分かるのが、琴音、朝実、美和、ももちゃんの四人。後名前を知らない三年生5人、二年生7人、一年生12人が尋ねて来ていた。
(なにが合ったここで?)
最初の4名以外何故来たのか分からず、一応左腕の完治の報告の為ももちゃんのいる保健室に向かう。
「ももちゃん入るぞ」
保健室周辺及び保健室内にももちゃん以外、誰もいないのを確認してからドアを開けて入る。
入ってすぐに視界に入ったのは、何故か力無く椅子に座って燃え尽きているももちゃんの姿だった。
「おい、大丈夫か?」
近くに行き呼び掛けるが応答が無い、ただ生きているのは分かるので復活するまでのあいだ椅子に座って寝て待つことにした。
暫く寝ていると、何かが保健室に来た気配で起きる。
「頭の部下のひとり、零と呼ばれています。今は詩音さんですね、頭からの伝言を承っております」
一瞬で気配の持ち主の所まで接近した、詩音のナイフが首を切り裂く寸前で、忍び装束の男が敵でない事を言う。
「ああ、知ってたけど、試してみた」
そう言った詩音は、椅子から一歩も動いていなかった。
(錯覚、いえそう思わせるだけの殺気ですか)
さっきみた詩音は、殺気の所意で見た錯覚だとわかり警戒を一段と強める。
(今までと、何か雰囲気が違う)
明確に何が違うかはわからない、ただ今で何が違う事に警戒を強める。
「そう警戒すんなよ、少し壊した仮面の欠片が引っ付いてるだけだからさ。
それより、ももちゃんからの伝言って何?」
壊した仮面の欠片、後で頭にお伝え仕様と心に刻み。自分の役目を果す。
「標的からの依頼書です」
そう言って一枚の封筒を渡す。詩音はそれを薄く笑いながら受け取る。
「やっと死ぬ気になったか」
一言小さく呟いた封筒を破り中の紙を取りだし読み始める。最後まで読み終わったのか、紙にマッチで火を燃やし始める。
紙が燃え尽き灰になった頃、詩音が意気なり立ち上がると勢い良く自分の顔を一回殴る。
そして、口から出た血を拭き取ると大きな溜め息を吐き出す。
「やっと殺せると思ったら、聖騎士を決める大会に出てほしい。それも、個人戦、団体戦の二つで優勝しろですか。
個人戦は良いとして、団体戦出に出る意味知ってます?」
突然雰囲気が変わった詩音に質問され、少し桃木の方に異動してから答える。
「わかりません。ですが個人戦優勝者には、聖騎士の称号と賞金が。団体戦優勝チームには、聖騎士の推薦と賞金が送られます。
それと個人戦、団体戦共に表彰があるのですか。その際に各学園の校長が一名賞状を渡すのが決まりになっています」
「その、賞状を渡す校長はどうやって選ばれるんですか?」
「先に行われる個人戦は前回、団体戦優勝学園の校長が。後に行われる団体戦は、先に行われた個人戦優勝者の学園の校長です」
「そうですか、有り難うございます。おかげさまで、手紙の意味がわかりました。
個人戦で優勝し団体戦優勝チームの表彰の権利をえた標的を、団体戦で優勝して表彰の際に殺せって事ですか。
何ともめんどくさい依頼方法ですが、それが依頼ならちゃんと以来道理にするのが暗殺者ルールですから」
そう言いきった人物をもう一度確認する。そこには、今までずっと見ていた詩音の仮面を被っている亡霊がいる。
ただ、何かが違う漠然とした何かを、もしかしたら頭に敵対するかも知れないそれを見つけようとするが。
「そう言えば、他にももちゃんからの伝言ってありますか?」
既に詩音の仮面を被た人物からは見付ける事が出来ず、頭からの伝言を伝える。
「頭の伝言は後二つです。
一つ目が先程の依頼書に関する事で、団体戦は5名で行われるのでメンバーを選んでおいてくれ。
最後の一つが。何でチャシャネコがいるんだバカ野郎、入れ替わってるならちゃんと連絡しろ!。です」
詩音がいまだに燃え尽きているももちゃんを一度見て、申し訳なさそうに尋ねる
「これって私の所意ですから?」
「そうであり、チャシャネコの所意でもあります」
(そう言えば、最後に紙に名前が書いてあったのがももちゃんだったよな。あれは、チャシャネコだと気付いて急いで対応してくれた結果だったのか)
もしももちゃんが対応していなかったら、もっと人が来てたのかと思いももちゃんに感謝しながら椅子から立ち上がる。
「もう戻りますね。それと、これをももちゃんに」
「これは何ですか?」
渡された小さな小瓶瓶に入った液体を見ながら、零が尋ねる。
「魔力回復材で龍の涙って言われてる物」
「―ッ、最高級品の魔力回復材ですか!!…頭も喜びます。私からお礼を言わせてもらいます、有り難うございます」
一滴でさえ手に入れるのが困難な龍の涙、ただその効果は凄まじい魔力回復材を、小さな小瓶とは言え満杯になるまで入っているそれを受け取りながら、零が深々と頭を下げた。
「まあ、ももちゃんには頑張って貰わないと私も困りますからね」
そう言い残し、詩音が保健室を後にする。
「行ったか?」
「はい、行きました」
部下の返事を聞き、燃え尽きていた筈のももちゃんが大きく溜め息を吐く。そして、部下を見ながら笑顔で尋ねる。
「さて、誰を団体戦の5人目に入れると思う?」
団体戦5人目、多分だが詩音と交流がある。琴音、朝実、美和の3人は決定だろう。後一人誰を入れるのか、零は少し考え答える。
「わかりません」
他に交流がある、葵と蒼はまだ参加出来ない。他には一応最初に絡んでいた連中がいるが、その後の交流は無い。
他に思い当たる人物が思い付かずそう答えると、ももちゃんは笑いながらそうだと答える。
「後一人誰を選ぶなんてわからないさ。ただ後一人このメンバーの中に入れる、それを知った生徒はどう思うかな?」
琴音は学校内でも最強に近い存在、朝実は学校内でも屈指の結界使い、美和はああ見えて(本人は隠しているが)3つの属性魔法を使える。そして、詩音は言うまでもない。
そんな今一番優勝候補のチームに入れる、その機会を生徒が見逃す筈があるかと。
「まさか、龍の涙が手に入るとは思っていなかったが。今から来るであろう、苦労の嵐の前報酬としては上出来か」
部下が持っている龍の涙を見ながらももちゃんが背伸びをして身体を伸ばす。
「さて、大変になる前に此方の仕事を終わらすか」
そう言って一枚の紙に何かを書いていく、そして出来上がると接着剤をかけ封筒に入れる。
「何時の様に校長に渡しておいてくれ。それと、何時も言っているが誰にも気づかれるなよ」
部下が手紙を受け取り保健室を出ていくのを確認してから、龍の涙が入った小瓶を大切な物を入れている特殊な場所に隠す。
「さて、誰が最後の一人になるか。まあ、最後の一人になる生徒はただの生徒では絶対に無いがな」
学園に生徒として潜り込ませている部下を倒し、出し抜き、最後の一人の座につくのが誰なのか考えていると、普通の生徒が来る気配を感じ取る。
「桃木先生、詩音さんの好物って何ですか?。それと、詩音さんにそれとなく推薦してくれませんか」
(また、このお願いか)
昨日からやってくるこの手のお願いに、ももちゃんは笑顔で答える。
「自分でアピールしなさい。それとここは、怪我人が来るところですよ。元気な人は、外でも走ってなさい」
「しッ、失礼しました」
少し強めに言うと、逃げ帰る様に保健室のドアを閉めていく。
「はぁ、これで今日16人目……後で少しだけ龍の涙飲もうかしら」
そんな事を考えながら、日常業務をこなしていくももちゃんだった。




