琴音の交渉
最後の一人がいる部屋のドアを開ける。中には椅子に座った40歳位の高価そうな服を着た男が一人、亡霊を見ると盛大に溜め息を吐き出す。
「くそどもが、何がボスが逃げられる時間は稼げるかと、だよ。全然稼げてねえじゃないか?。
それに、バカ高い金を要求したわりには呆気なく殺られやがって。何が元聖騎士だ、二つ名持ちだ!」
男が叫びながら机の中を漁り、分厚い封筒を取り出すと亡霊の目の前に投げる。
「その金でてめえを雇う、足りないってんなら追加で出す。依頼は桃木の暗殺と、依頼を断ったあのくそ猫の暗殺だ!」
亡霊が落ちたら封筒を拾うのを見ると、男が醜い笑みを浮かべる。
それに気付かないフリをしながら中のお金の額を調べる。そこには、100万ユースが入っていた。
「100万ユースしか今は出せないが、依頼に成功したら10倍の1000万ユース位なら簡単に支払ってやるよ。
ちっ、最初からてめえを雇ってれば良かったんだ!。なのにあのくそ部下が金掛かるとほざきやがって、結局こっちの法が金が掛かってんだろが。
まあ、あのくそ猫…チャシャネコとか言ったか?、元血塗れの……」
男が最後まで言い切る前に、男の首が空を飛び。辺りに血を撒き散らしながら地面に落ちる。
男の背後にはいつの間にかチャシャネコが佇んでおり。その顔には相変わらず笑みを浮かべていたが、目はゴミ落ちているを見るような目付きだった。
「はぁ……チャシャネコ俺の獲物をとるなよ」
「ごめんね亡霊っち。でも、チャシャネコさんが嫌いな名前を言いそうになるからついね」
耳を伏せ、尻尾を力無くダランとさせて全身で謝罪を表すチャシャネコを見ながら、何故ここにいるのか聞くと。
「ん~、何だっけ?………あっ、思い出した。亡霊っちに要事があったんだ!。
……え~と、確か琴音って言ったっけ?。まあ、その子が亡霊っちを探してたよ。何か戦闘を教えて欲しいらしいよ?」
一瞬何を言ってるのか解らなかったが、学校の事だと解り絶句する。
「何が何でそうなった?、それより何でチャシャネコが知ってるんだよ?」
疑問を解決する為にもチャシャネコに尋ねるが。
「チャシャネコさんも途中からしか聞いてないから解んないけど、ももちゃんって言う先生も許可してたよ。
チャシャネコさんが学校にいた理由は~亡霊っちの女の子姿を見に行く為、そう言えば今日は男の子何だね♪」
疑問が解決する所か更なる疑問が襲う。
(何でももちゃんが許可してんだよ?。それより琴音が探してる……ちっ、まだまだ薬の副作用が残ってるのに。それに、腕の傷をどうするか?)
ある考えが浮かぶが、チャシャネコの協力が必要である。何気無く、チャシャネコに提案を出す。
「チャシャネコ、提案なんだが。もし俺の事を助けてくれるならデートするってー」
「チャシャネコさんと亡霊っちがデート!!。うん良いよ何でも言って、何なら今から元老院の老害達全員殺しに行く?」
言い終わる前にチャシャネコが嬉しそうに飛び回りながら、ニャ~♪、ニャ~ン♪と鳴く。
余りの反応に一瞬辞めようか考えるが、それ以上いい案が思い付かず。仕方無くチャシャネコにお願いする。
「今から言うことをやって欲しいんだが、かなり辛いし危険だがー」
「辛い?、危険?、そんなの昔亡霊っちとの殺し相に比べたら楽勝でチャシャネコさんアクビが出るよ。
それにデートの為なら、チャシャネコさん本気で行くよ♪」
また言い終わる前にチャシャネコが答える。その手はいつの間にか黒い靄の様な物が覆っており、瞳は獲物を見付けた猫の様に光っていた。
「チャシャネコ一応言っておくが、本気を出す必要無いぞ。
………で、今から言うぞ。チャシャネコにして欲しいのはー」
最後まで話した時、チャシャネコの目にはまるでいたずらっ子の様な嫌な光が宿っていた。
(本気で心配何だが、仕方無いか)
「詩音ちゃんいる?、入っても良いかな?」
詩音がいると思われる部屋をノックすると部屋から、どうぞと声が帰ってくる。
部屋に入るとベットで横になっていた詩音が起き上がる。その顔は心なしか何時もの元気が無かった。
「琴音先輩ですか?。すいませんが、少し具合が悪いんで要件があるなら手短にお願いします」
声にも力が無く弱々しかった。琴音はそんな詩音を見て、自分が何も持っていない事を思いだし急いで購買に買いに行こうとするが。
「必要な物は冷蔵庫に入ってますから、買いに行かなくても大丈夫ですよ。それよりも何か私に話があるんじゃないんですか?」
詩音にそう言われ、ごめんねと言ってから本題を話す。
「実は詩音ちゃんに戦闘について教えて欲しいんだよね。僕はもっと強くなりたいんだ、だからお願いします」
頭を下げながらお願いする、詩音なら良いよと言ってくれると思っていたが。
「御断りします」
「………え?」
暫くの沈黙の後、詩音がゆっくりハッキリと答える。
「もう一度言いますね先輩、残念ですが御断りします」
「えっと、何でダメなのかな?。一応桃木先生の許可はあるんだけど?」
桃木先生からの許可がある事と、桃木先生に書いて貰った手紙を渡すが。
「桃木先生の許可は私には関係ありません。それに、残念ながら断る以外選択肢が無いので」
詩音は手紙を少しだけ読みすぐに答えた。少し変な答えだったが、全身からお断りですオーラの様な物が出ており聞くに聞けなかった。
少しの沈黙の後、詩音が唐突に話し始める。
「……………えっと、琴音先輩は何でそんなに強くなりたいんですか?。それに何で私に教わるんですか?」
「それを教えたら、戦闘を教えてくれるの?」
「……考えとく…です」
まるで誰かに聞いてから答えているような、不思議な感じがする詩音を見ながら両親が暗殺に殺された事を話す。
「…それで、先輩は復讐がしたいんですか?」
その質問の瞬間空気が変わった。空気がまるで粘土をもったみたいに重くのし掛かる。
「復讐したい……って思ってた事もあるよ。……それに、今も復讐しないとは言えないけど。……桃木先生の話を聞いてただ単純に強くなりたいって思たんだ!。
もしまたあんな事になった時に、後悔しないくらいに強くなりたいんだ!」
詩音の目を真っ直ぐに見ながら思った事を言葉にする。それを聞いた詩音が、意気なりチャシャネコの様な笑みを浮かべる。
「その答え好きですよ。…解りました、戦闘というか負けない戦い方を教えますよ」
笑みを浮かべたまま詩音が答える。
「ですが、今は具合が悪いんで良くなってから教えに行きます。それに、少し長く話した所意か疲れたので休みたいんですが?」
琴音が何か言う前に詩音がそう言い咳をする。いつの間にか空気から粘土も消えていた、このままここにいると詩音が休めないのを感じ琴音が部屋を出る。
「詩音ちゃんありがとね♪。後しっかり休んで明日は朝から元気に登校してね」
「わかってますよ。ちゃんとお願いしますから」
部屋を出るさいにそう言うと、詩音が笑顔のまま答える。何をちゃんとお願いするのか考え、きっと具合が良くなるように神様にお願いするんだなと思い。
詩音ちゃん可愛い、と小さく呟きながら詩音の部屋を後にした。
部屋の周囲に誰もいないのを確認すると、ベットの枕的に隠しておいた水晶を取り出す。
「そう言う事だからごめんね、亡霊っち」
詩音がチャシャネコの声で水晶に言う。水晶からは、溜め息と共が聞こえる。
「……チャシャネコお前……教えるて言ったって何を教えるんだよ?。
それに、断るのがお前に頼んだ事の1つだろ」
水晶から亡霊の声が帰ってくる。
「だからごめんね。それと、チャシャネコさん約束したからお願いね。
ん~教える事は暗殺者の事と、聖騎士が知ってる事で良いんじゃない?
あっ、そっちはちゃんと腕治った?」
チャシャネコに何を言っても無駄だと感じたのか、水晶からはただ一言今から治すとだけ帰ってくる。
「凄いね、そのうちチャシャネコさんが怪我したらその人教えてね」
「お前がそれほどの怪我をするのが考えられないけどな、………おい、俺は今大事な話を………チャシャネコ悪い明日の朝、俺が帰るまで俺に化けといてくれ………」
周りに誰かいるのか、複数の子供の声とそれを叱る少女の声が聞こえたのを最後に、水晶からは音が消える。
「何か大変そうだな亡霊っち……チャシャネコさんも頑張ろう」
詩音に変そうしているチャシャネコが気合いを入れ直した時、この部屋に向かってくる気配を複数感じた。
チャシャネコの仮面を隠し、偽の詩音の仮面を被ると同時に部屋のドアがノックされる。
「どうぞ」
詩音の声でチャシャネコが返事をする。
「チャシャネコ頼むから面倒事を増やさないでくれ」
そう言いながら、帰ったら面倒事が待ち構えてるだろう事態を騒々し溜め息を吐く。
「あっ兄ちゃんが溜め息吐いた」
「ほんとだ、幸せが逃げちゃうよ」
周りを囲んでいる子供達が色々な事を言う。子供達は大体が6歳から9歳位の少年少女達で、皆亡霊の事を兄ちゃんと言いながら嬉しそうに周りを囲んでいる。
「皆兄様が困ってます。それに兄様からのお菓子が冷めちゃいますよ」
少し遠くにいた14歳位の少女がそう言うと、お菓子、お菓子と言いながら周りを囲んでいる子供達が走って奧の部屋に入っていく。
「これで静かになりましたね。それで兄様今日はどうしたんですか?」
少女がゆっくりと亡霊の近寄っていく。
「腕を治して欲しくってな。それと何か足りない物が無いかの確認をな」
そう言うと傷付いた左腕を少女の目の前に出す。少女はゆっくりと両手で傷付いた腕を触り確認すると。
「兄様がこんな怪我をするなんて、いったい………ちゃんと治しますから大丈夫ですよ兄様。
それと、足りない物は、そうですね………今すぐに必要な物は無いですね。ただ、武器の数が少し心もと無いですね。
今腕を治す為の物を持って来ますので……あっ」
少女はそう言いながら歩きだし、小さな石に躓き転びそうになる寸前。亡霊に支えられる。
「智莉お前は目が見えないだからすぐに動こうとするな」
智莉と呼ばれた少女が少し顔を赤くしながら、亡霊の腕から逃げる。
「解りました兄様、ちゃんと気を付けます」
「ああ、ちゃんと気を付けてくれよ。それと、腕を治すのに必要な物なら持ってきてる」
そう言いながら遠くに置いてある袋に着けている紐を引っ張る。紐に引かれて飛んできた袋を掴むと、濡れれていた袋から雫が飛び散る。
飛び散った雫が落ちた場所には、赤い生臭い液体が広がっていく。
「何人分ですか?」
「20人。魔力が高い奴から集めてきたけど、足りないか?」
「この魔力の質なら大丈夫ですよ兄様」
飛び散った、そして今も袋から垂れている血には気にも止めず。智莉が袋を受け取ると、準備が出来たら呼びに来るので子供達の相手をお願いします。と言って別の奧の部屋に入っていく。
一人残り何気無く、先ほど智莉が躓いた場所を見ながら思う。
(この場所も、もうちょっと位綺麗に出来たらな)
今自分がいる壊れた教会の事を見る。何処かのお化け屋敷さながらに天井や壁、床の一部が壊れており。蜘蛛の巣や蔓が模様の様に壁を染めている。
(まあ、カモフラージュの意味があるからこれで良いんだけどな。ただ、責めて床位なら綺麗にしたいけど、智莉がそれじゃあカモフラージュの意味がありませんよ。とか言って綺麗にさせてくれないからな)
ここにいる子供の面倒を見ており、ここの防衛をしている智莉には強く言えず。それに、中途半端なカモフラージュが意味が無いのも分かっているのでせめてもと、さっき躓いた場所を綺麗にしてから奧の部屋に入っていった。




