元聖騎士と二人の暗殺者
「おいおい、襲撃者って亡霊かよ。こりゃあついてるぜ、こいつの首には莫大な懸賞金が賭けられてるからなぁ」
男達が笑う。そんな下品た笑いを無視して、白い拳銃を男の一人に突き付け引き金を引く。
「はぎゃっ!?」
笑っていた男の頭が弾け飛ぶ。頭部を失った体が前のめりに倒れる中、もう一度引き金を引いて心臓を撃ち抜く。
「てめぇー!」
仲間が完全に倒れた時ようやく状況が把握出来たのか、男達が慌てて戦闘体制に入るが遅かった。
「ぎゃあ!?」
「ひぎゃ!?」
立て続けに二人の頭が弾け飛び、辺りを赤く染め上げる。
「くそ、仲間の敵だ!」
残った男の一人が叫びながら剣を上段に構え斬りかかってくる。
「ま、待て。迂闊に飛び込むな、相手はー」
リーダー各である男が止めようと叫ぶが。白い拳銃をしまい、ナイフを取り出した亡霊に一瞬で首を斬られ、喉笛を鳴らしながら血の海に沈む。
「何でこんなに強いんだよ!。可笑しいだろ亡霊は、聖騎士すら殺せない名ばかりの暗殺者の筈だ」
そう叫びながら一歩下がった男の隙を見逃さずに、一瞬で距離を喰らう。
「なぁ……くそぉお!!〔水の弾丸〕」
リーダー各の男が鋭い斬撃と同時に水の弾丸を放つ、腐っても元聖騎士というべきか斬撃の威力と水の弾丸の威力共に当たれば致命傷になる威力があった。
(当たれば致命傷だな、当たればな)
水の弾丸をナイフで切り裂く、そして目の前に迫った斬撃を右足しの蹴りで弾き飛ばし指の骨を砕く。
「くそが、調子にのんじゃねえぞ」
剣を弾き飛ばされ持っていた指を砕かれながらも、残った方の手で右足を掴もうと腕を伸ばす。
後少しで足を掴める距離まで腕が迫った時、衝撃と共に視界が歪み力無くその場に崩れ落ちた。
「な、何をしやがった」
(何って、左足で顎を蹴っただけだけどな)
右足しの蹴りの勢いを利用し、体を独楽のように回転させ左足の踵で顎を蹴り抜いただけだった。
男の質問には答えずに、ナイフをしまい。白い拳銃を取り出しさっき倒した男達の頭と心臓を撃ち抜いていく。
「嘘だろ、俺達がこんな所で死ぬわけ無いんだ。これは夢だ、夢なんー」
最後に残った五月蝿く騒いでいる男の頭と心臓をを撃ち抜く。
(後は上の階の3人か)
最初の元聖騎士が殺された時点で、元聖騎士が敵わないと知るや否や周りの連中は逃げ出していた。
(逃げた所で聖騎士に捕まるか、裏で消されるかのどっちかだけどな。まあ、運良く逃げきった奴がいたら遊びに行ってやるか)
白い拳銃の弾倉を替えながら、上に続く階段を上がっていく。
9階まで上がり上の階から聞こえてくる不気味な音に眉をしかめる。聞こえる音は、何かを引き千切る様な音とそれを食べている様な音だった。
上の階に上がり最初に見たのは、狙撃で殺した男の死体に馬乗りになりながら喰らっている大男の姿だった。
此方に背を向けている大男に向かって白い拳銃の引き金を引く。死角となる背後からの高速の一撃、普通なら不可避の一撃を大男は後ろを見ずにかわす。
そして振り返った先にいた、亡霊を視界に納めると大声で吠えた。
「ヴォオオオオオオオオオ」
その声は人間より獣に近い声であり、声に同調して大男の体の刺青が不気味に光る。
(獣憑きか)
大男の刺青が不気味に光り始めると同時に、大男の身体に変化が起こる。筋肉は異常な迄に膨らみ、全身から毛が生え身体を覆っていく。顎が伸び、口に鋭い牙が生える。全身の変化が終わった時、亡霊の目の前にいたのは。
(これは、熊か)
全身を硬い毛と筋肉の鎧に身を包んだ熊だった。
獣憑き……自身の身体に魔方陣を刻み獣の力を奮う者達であり、裏の世界でも余り見ない連中である。何故ならー
「ガァアア」
獣憑きが叫びながら右腕を振るう。凶悪な爪を生やした右腕が風を切りながら迫るが、その距離はまだ遠かった。
(獣の力をえる変わりに、おつむ迄獣になっちゃ意味無いだろ)
ー獣憑きが力を使うさい、多くの者は知能が獣並みになってしまう。折角獣の力を手に入れても、使う脳も獣並みになって仕舞えば只の普通の獣である。
(ちっ、少しは期待したんだがな。獣には興味が無い)
迫りくる右腕を無視して、白い拳銃で頭部を狙う。この距離なら腕が当たる間に弾丸が頭部を撃ち砕く筈だった。
(なっ!?、左腕で防ぎやがった)
弾丸が当たる直前、左腕で頭部を守る様に弾丸を防いだ。一瞬驚いたがすぐに横に跳ぶ、跳んだ瞬間元いた場所を凶悪な爪が通り過ぎた。
その後、何度も頭部を狙って引き金を引くが、その度に腕や砕いた壁の欠片等で防いでいく。
何度目かになる頭部を狙った弾丸を、獣憑きが防いだのを確認すると同時に白い拳銃をしまいナイフに持ち帰る。
そしてそのまま、頭部を守る為に顔を隠すよう出している腕を狙ってナイフを振り上げる。
獣憑からは死角になる一撃を今度もまたかわし、後ろに跳んで大きく距離をとった。
(そういう事か)
2度の死角からの攻撃をかわした事と、獣の知能で弾丸を何度も防いだ正体が分かり溜め息を吐きながら言う。
「後3手、後3手で殺す」
そう言ながら投げナイフを取り出し投げつけるが、大きく外れ獣憑きの横をすり抜ける。
本来なら当たらない一撃の筈が、投げナイフは獣憑きの腕に突き刺さる。何故か獣憑きは自分の横をすり抜けた投げナイフが、軌道を変え鋭角に曲がり背後の壁に軌道を変えた瞬間、自らの腕を伸ばし投げナイフを受け止めた。
結果的にそれが、致命傷になった。亡霊が一瞬の内に放ったもう一つの投げナイフが頭上から襲い頭部に突き刺さる。
突き刺さる直前で獣憑きも気付いたのか、腕で防ごうとしたが刺さっている投げナイフからの毒により、体が麻痺し防げずに終わった。
頭部にナイフが刺さったままの獣憑きを無視して、白い拳銃を抜き壁に突き付ける。
「さあ、出てこいよ。あんたを守る獣(盾)は死んだぜ」
虚空に話しかける。少しの間があったが、壁が歪み歪みの中から女が出てくる。
女は拳銃を突き付けられているのにも関わらず、不適な笑みを溢す。
「まさか相手が亡霊何てついてないって思ったけど、逆ねついてるわね」
女が色っぽい声で言う。
「まさか、投げナイフの軌道を変えて私を狙って来るなんて。思わずそいつを動かして防いじゃった」
女がそいつと言いながら、獣憑きを見る。その目は使えなくなったゴミを見る目付きだった。
「ねえ、教えて欲しいんだけど。何で私の位置が解ったの?。今まで1度もバレた事が無いのに」
女が不思議そうにそれでいて、少し怒りを孕んだ声で尋ねる。
「それなら、最初から警戒してたからな。残った標的3人の内2人が二つ名持ちの暗殺者、なら2人同時に襲って来ることも警戒してる。
それに、死角からの攻撃を防いだ事と良い。獣の知能で弾丸を防いだ事と良い、誰かが教えてるって考えるのが普通だろ?
解らなかったのは、どうやって教えてるかだったけど。俺の攻撃に対し絶対にあんたがいた1ヶ所だけには、攻撃がいかない様にされてたからな。それで場所も解った」
女が嬉しそう笑う。その顔には隠しきれない歓喜があった。
「そう、そこまであの戦闘中に考えられる何て凄いのね。嬉しいは、貴方(亡霊)が男であってくれて、だって私の魔法はー」
言葉の途中で女の目が怪しく光る。直後亡霊が力無く膝から崩れ落ちる。
女が警戒しながら近付く、そして力無く崩れ落ちている亡霊の唇にキスをした。
「これで魅了が完了したわ」
女が安堵したように笑う。女は魅了の魔法を使う女王蜂の二つ名を持つ暗殺者であり、1度女の魅了にかかった男は死ぬまで女の元で働く事からそう呼ばれている。
魅了の魔法は、その効果の高さから発動条件が相手に接触しながらじゃないと出来ない魔法だが。
女には生まれつき魅了の魔眼があり、魅了の魔眼で相手を魅了した状態でさらに魅了をする事によって、女に絶対に逆らえ無いようにしていた。
魅了の魔眼と魅了の魔法、2つの魅了という鎖で縛った亡霊を見ながら女は今後の事を考える。
「少し前まで最強の1人と迄言われた亡霊が手に入ったんだから。
そうね、他の男達を使って私と敵対してる奴を皆殺しにするのも良いわね。
万が一にも襲われそうになったって、私には亡霊がいるんだから。
そうだ、まずは素顔を見ましょう」
そう言いながら亡霊の仮面に触れた瞬間。全身を激痛が襲う、余りの痛みに仮面から手を離し床を転げ回る。
「迂闊に暗殺者(俺)の装備を、さわるもんじゃ無いんだがな」
そう言いながら、亡霊がずれた仮面の位置を直す。
「なっ…何で?、……確かに…魅了……した……の…に」
痛みの所意か全身から冷や汗をかき、息も絶え絶えの女が呟く。
「あんたの魅了の魔法なんて最初から効いてないけど」
白い拳銃を構えながら話を続ける。
「効いた様に見せ掛けたのは、あんたがこの後どうするかを知りたかったから。特にあんたに魅了されている連中の事をな。
まあ、残念ながらあんたが言う前に俺の仮面に触れて自滅したからな。さて、このまま激痛の中で死ぬか、魅了した俺達の場所を吐いて楽に死ぬか、どっちが良い」
女が消え入りそうな声で呟く。
「なん…で…わたし……の…みりょ…うきか…ない…の…おし…え…て」
既に女の眼からは光が消えつつあったが。暗殺者として1人の女として自分の魅了の魔法がどうして聞かなかったのか、それを聞くまで死ねないと。その表情が語っていた。
「魅了の魔法は、相手の心に自分を見る度に幸福な気持ちと快楽を与える魔法だろ。
俺には、幸福も快楽も心の中に無いからな。あるのは、憎悪と憤怒それと……いやそれだけさ」
亡霊が言い終わると、女が悲しそうな悔しいそうな表情を浮かべる。
「かわい…そう…な…人……もし……あなた……を…魅了……できて……たら……あなたに……幸福…を……教えて……あげら……れたのね……残念…それが……心……のこ………」
最後に「りよ」と言い残し、女の眼から光が消えた。それを確認した亡霊は、そっと女の開いていた目を閉じる。
「最後の1人か」
そう呟き、死んでいる獣憑きの心臓と頭、女の心臓とを撃ち抜いた後。最後の1人がいる部屋に向かった。




