琴音の実力
「………え!?」
目の前で炎の投げ槍が、剣で斬られる。
斬られた、炎の投げ槍は、魔力を散らし霧散した。
(何で……、っ!)
何でか考えるより先に、相手が剣を構え迫ってくる。考えていた間に、相手との距離が一瞬にして縮まった。
(この距離は、不味い!)
直感でこの距離は、危険と感じ右手で持った剣を振るうが。相手は、斬撃を受けると器用に剣を回すように絡ませ、剣を奪いにかかる。
「させないよ[炎の矢]」
琴音の頭上から、炎で出来た数十本の矢が、一斉に相手に向かって高速で飛んでいく。
だが、相手は絡ませた剣を離すと、後ろに飛ぶと同時に左手を高速で振るう。
何を?、と。思った時には、炎の矢が、何かに当たり、威力と速度を大きく落とす。
相手は、速度が落ちた炎の矢を、簡単にかわし、最初にいた位置に戻った。
(投げナイフを炎の矢に当てて、威力と速度を殺すなんて、無茶苦茶だよ。………それ以上に、炎の矢より、温度が高い炎の投げ槍を斬った剣が無傷なのも、可笑しいか)
鉄の融点は、約1.535℃。炎の矢は、2.000℃以上ある。
普通なら炎の矢は、投げナイフを一瞬で溶かし貫く筈が。相手が投げた投げナイフは、炎の矢とぶつかった際、炎の矢を半分以上貫いていた。
因みに、炎の投げ槍は、3.500℃以上である。
(投げナイフに細工がされてた?)
半分程熔けてた、落ちている投げナイフを見る。それは、何処にでもある普通の投げナイフに見えた。
(普通の投げナイフだよね?。………なら、何で炎の矢と互角だったのか、それをまず、突き止めないと)
もう一度炎の矢を、今度は、3本放つ。
炎の矢を見た相手は、ナイフを取り出し炎の投げ槍の時の様にナイフで斬ろうとするが。何故か斬るのを辞めると、後に下がり死体を掴み炎の矢に当たるように投げる。
死体が炎の矢に当たった直後、炎の矢が爆発し、死体を吹き飛ばす。
(引っ掛からない、か。なら、これならどうだ)
炎の爆弾を相手に向かって放つ。相手は、少し横に擦れかわす。
炎の爆弾は、そのまま壁に当たり消える。
(嘘の魔法を見破ったって事は、魔力が見えてるって事だよね。相手は、魔眼持ち!?)
炎の爆弾は、何かに当たれば爆発すが、それ以外にも、魔力が届く範囲なら任意の場所での爆発も可能である。
それを横に擦れかわしたのは、それが、爆発しない別の魔法だと解っていたからであり、魔力を見ることの出来る魔眼持ちだと確認した。
(魔眼持ちなら炎の投げ槍と、炎の矢を防いだのも解るけど、何で剣とナイフ何だろう)
魔眼持ちは、魔力が見えるので相手の魔法のの弱点が解るが。普通は、魔法に魔法を当てて相殺させるのが当たり前であり。失敗したさいに、ダメージを負う可能性がある剣やナイフで防ぐ事は、無い。
(魔法が使えない……それとも、そう思わせてる!?。どっちだろう)
相手が魔法が使えないなら、魔眼だけに注意すれば良い。だが、魔法が使えるのに、使わないなら、不意打ちの可能性も考えて戦わなくては行けない。
(なら、魔法が使えるか確かめてやる)
「[炎の壁]」
炎の壁が相手を包む、それを確認してから、すぐに別の魔法を唱える。
唱えたのは、貫通力が強い炎の弾丸数百発以上。弾丸は、炎の壁を覆い隠す様に浮かんでいた。
「くらえ、[炎の弾丸]」
琴音の合図により炎の弾丸が、炎の壁を貫きながら、相手を襲う。
(この攻撃なら、魔法を使わないと防げないよ)
炎の弾丸が、全弾襲い終わった後に残っていたのは、無傷で立っている相手だった。
(嘘だ、魔法を使ってないのに、何で無傷!?)
魔法を使った場合、魔力に反応して爆発する。透明な爆弾を、炎の壁の内側に何個も仕掛けていたが、一つも爆発していなかった。
(炎の壁を目隠しに、炎の弾丸を放つのは、良い手だったな。俺が、眼で魔力を見る魔眼持ちなら、今ので倒せてたけど、残念ながら俺は、魔眼持ちじゃ無いんでね。
それに、あの程度の炎の弾丸なら、全部斬れ無きゃ、二つ名を名乗れないしな)
今、亡霊の仮面を被っている影霧 詩音にとって、百発の弾丸が、全く同時に数秒の誤差なく襲って来ない限り、全弾丸斬りさくのは、容易な事だった。
「さて、もう十分でしょう。これ以上やっても貴女に勝ち目はありません。それに、」
そこで区切り、右手を上にあげ指を鳴らす。指を鳴らした直後、最初に死体から貰った剣が浮かび上がり、琴音の首にピタリと当たる。
「もう終わりですから」
少しでも、動けば剣が琴音の首を切り落とす。誰が見ても、琴音の敗けだった。
「そちらの剣は、危険なので預からせて貰います」
そう言って左手で、最初の斬撃を受けた際につけておいた紐を引く。
琴音は、一瞬抵抗したものの諦めた様に剣から手を離した。
(やけに素直だな、もっと抵抗するかと思ったけどな。まあ、これで、自殺や自傷を防げるか。後は聖騎士が問題か)
聖騎士をどう巻くか、考えながら出入口に向かう。
「質問良いかな」
琴音が、此方を向きながら言う。
「一つならどうぞ」
気付けばそう答えていた。聖騎士が来るまで、もう残り少ない筈なのに、何故か聴かなくてはいけないと思ったからだった。
「何で僕は、負けたのかな。確かに、実力は負けてたけど、魔力量なら勝ってたよね。
それに、どうすれば勝ててたのかな?」
その質問に少し考えてから答える。
「確かに、実力は此方が勝っていました。それは、場数の差であり。命をかけて戦った差ですので、仕方が無いでしょう。
魔力は、貴女が圧倒的に勝っています。それに、此方は貴女を傷付けるつもりは無かった。
それを踏まえれば、貴女が勝っていも可笑しく無かった。でも、貴女は負けた」
そこで、琴音を見る。琴音は、何かを考えているようだった。
「貴女が負けた理由は、殺そうとしなかった事ですよ」
その言葉を聞いた琴音の顔が、驚きに染まる。
「でも、僕はー」
「確かに、貴女は、此方を殺そうとした。それは、最初の殺気で十文解りましたが。なら、何で攻撃が全て急所を微妙に外しているのですか?」
琴音が何か答えようとするが、答えられないのか、俯く。
「簡単な事ですよ、貴女が無意識に殺す事を拒んで要るから。だから、此方が勝てて貴女が負けた。
もし、全ての攻撃が急所を狙っていたなら、此方も無傷では済まなかったし、もしかしたら、負けていたかもしれません」
実際圧倒的に見えた戦いだったが、炎の矢を投げナイフで迎撃した時、本当なら炎の矢の魔力を貫き、消す筈だったが、火力に負け威力と速度を削っるに留まった。
それに、炎の弾丸も全弾同時に、それも、急所を狙って撃たれたなら、無傷とはいかなかった。
「なら、もし僕が心から殺す気で戦ったら、こんな事には、ならなかったかな」
琴音の声は、少し悲しそうだたった。
一瞬何を言っているのか、解らなかったが。琴音の魔力が暴走しているのを感じ、何を使用としてるのかが解った。
「自爆する気か!」
魔力が暴走し、体が魔力に耐え切れなくなった際。体の中にある魔力が体の外に出ようして起こる、爆発に似た現象がある。
その威力は、凄まじく。過去には、一国を焦土とかした事もある。
そして、それを自分の意思で行う時、ある名前がつけられた、それがー
「[生け贄の一撃]」
琴音の叫び声と共に、地下の部屋が目映い光に包まれた。
部屋が光に包まれる直前
(くそ、最悪だ)
心の中で叫びながら、ある薬を飲む。影霧 詩音の女子の体から、本来の男子の亡霊の体に戻る。
直後、部屋が光に包まれた。




