潜入二日目……琴音との戦闘
薄暗い部屋の中、二つの影が向かい合わせに立っていた。
(どうしてこうなった?)
今、目の前には、武器を構えながら魔法を詠唱し終わった琴音と、近付いてくる聖騎士の気配がある。
(逃げるには、琴音が邪魔だな)
琴音は、逃げられないようにする為か、唯一の出入り口であるドアの前にいる。
壁を壊して逃げる事も考えるが、ここが地下だと言うことを思いだし諦める。
心の中で溜め息を吐きながら、もう一度何故こう為ったかを思い出す。
数時間前
「何で結界の中にいるんですか?、先輩方」
保健室から戻ると、紅 琴音と三條 美和が結界が張ってある校舎の中におり、薄紫 朝美と双子(葵と蒼)が入る部屋の前でお茶を飲んでいた。
「「何でって、ここに二人(詩音と朝美)が入るって聞いたから、だよ」ですわ」
二人が同時に答える。
「「それに、まだ答え聞いてない、から」ですので」
(また同時だ……こいつら仲が良いのか?)
誰が教えたのかは、すぐに察しがついたが、結界の中にいる理由が解らなかった。
「結界の影響は、無かったんですか?」
朝美の結界はかなり高位の結界であり、無理に侵入すれば、それ相応の影響があり、実力が無ければ、入れても死ぬ事もあるだろう。
朝美と会った際の暗殺者も、結界の中で無かったら、もう少し長生き出来たかも知れない。
「結界?、あったけ?」
「そんなの無かったらですわ」
「………」
返す言葉が見つから無かった。それと同時に、答えが解った。
(朝美が許可したな)
結界の中に入る事を、朝美が許可した以外の答えが無かった。
それ以外、この二人が結界の中で無事いる理由が解らないでもあるが。
「先輩方がいる理由は、推測ですが解りました。で、何で部屋の前でお茶会やってるんですか?」
「部屋の中は、居づらい雰囲気があってさ。それに、詩音ちゃんに渡したいものがあるからね♪」
「あっ!、ずるいですわ。それは、私も貰ったんですから、二人で渡すのが普通ですわ」
そう言い合いながら、1枚の封筒を渡された。それは、見馴れた封筒だった。
「先輩方は、中身解ります?」
「僕は、知らないよ」
「私も、お知りませんわ」
二人が答えるのを、聞きながら封を開ける。中には、これまた見馴れた紙が一枚入っていた。
(仕事の依頼書か、このマークももちゃんからか)
紙の角にももちゃんの組織のマークが書いてあった。
内容を見ようとする二人に見られないようにしながら、読んでいく。
内容は簡単だった。
[依頼内容 紅 琴音 三條 美和 薄紫 朝美 3人の護衛及び、一年、二年合同授業の参加
報酬 300ポイント(前払い済)
合同授業の先生には、此方から言って二人一組のペアでは、君が大変だから、一年二人と二年二人の、経四人で行動出来る様にしておく。
まあ、大変だろうが頑張れ。これは、影霧 詩音への仕事の依頼であって亡霊への依頼では、無いから断るのは、なしだ]
読み終わり、何気無くポイントを確認すると、確かに300ポイント増えていた。
(何考えてんだ、ももちゃんの野郎。……まあ、最後の亡霊宛の依頼があるから、許すか)
最後に小さく huxanntomuhe.karihamikkagoniokonau.mattannsosikiwogokokesitehosiiと書いてあり、意味は、ファントムへ、狩を三日後に行う。邪魔な組織を5個程消して欲しい
つまり、報復を三日後に行うから、ゴミ拾いついでに、五個程狩りの邪魔になる組織を、前以て消してきてくれと言うことである。
「何て書いてあったのかな?、僕達にも教えて欲しいな」
「そうですわ、ここまで持ってきたんですから、聞く権利がありましてよ」
一瞬答えるか迷ったが、答えないと面倒になりそうなので答える。
「先輩方と朝美さんと一緒に、合同授業に出て欲しいと書いてありました」
暫く静寂の時間があった。そして、
「本当だよね!、ヤッター!!」
「嘘じゃありませんね!、本当ですよね!」
すぐ近くに落雷が落ちたかと思うくらい、大きな声で二人が喜ぶ。
「先輩方五月蝿いです」
少し殺気を込めて言うが、二人には意味が無かった。代わりに、部屋の中から朝美の悲鳴と、葵と蒼の叫び声が聞こえた。
「それ以上五月蝿くすると、合同授業出ませんよ」
言った直後、二人が固まり、再び静寂が訪れた。
「そう、そのまま静かにしてて下さい。今、朝美さんを呼んできますので」
(何が、そんなに騒ぐ事なんだか、解らないな)
固まったままの二人に、そう言い残し部屋の中に入る。
「何やってんですか?」
部屋の中には、横になり、団扇で扇いで貰っている朝美の姿があった。
「「お前の所意だろ!!」」
葵と蒼が同時に叫ぶ。
「何かしましたっけ?」
「「意気なりの大声と、殺気の所意だ!!」」
ふと、さっきの事を思い出す。大声と殺気がここまで届いたなら、どうして来たのかも解ると判断し、朝美に訪ねる。
「依頼があったので、外の二人と貴女を守りつつ。合同授業に参加します。
後、何で彼の二人を結界の中に入れたんですか?」
「結界の外に出るなと言われたので、結界の中に入れました。
琴音は、私の知り合いです。何か不都合でも?」
今だ横になっている朝美が、弱々しく。でも、はっきりと答える。
「それに、占いの結果でも、二人を結界の外に放置する方が、他の生徒に、居場所がばれる可能性が高いと出ましたので」
そう言う朝美に、違和感を覚える。
(何かが違うな)
喋り片や、雰囲気等。何時もの朝美と似ているが、何処が違うと感じる。
(最初に会った時の感じか、占いの為の人格か)
葵と蒼が反応しないことから、占いの為の別人格と判断し、考えるのを辞めた。
「合同授業の内容は、街のゴミ拾いなので、街の中で私と離れない離れないで下さい。
ただ、途中少し別の掃除をしてくるので。その際に何か会ったら、これを使って下さい」
そう言って、小袋を渡す。
「何ですかこれ?」
小袋を渡された朝美が、中から黒い丸い球を取り出す。
「煙幕玉です。強く地面にぶつければ、黒い煙が一瞬で辺りを覆い隠し、周囲の魔力を阻害して妨害しますので、その間に逃げて下さい
使えば、私には解りますので、すぐに助けに行きます」
朝美は、頷くと力強く立ち上がり。そのまま、前のめりに倒れた。
「「朝美様!!」」
倒れた朝美を、葵と蒼が素早く介抱していく。
「すいません、立ち眩みが………もう少し、休んでから行きます」
「解りました、外の二人にも、そう言っときます」
そう言い残して、部屋を出た。
そのまま、合同授業の掃除が一段落終わって。休憩と、集めたゴミを、琴音と朝美が捨てに行った隙をついて、もう一つの掃除を始めた。
無論残った美和には、眠り薬を嗅がせ、安全な所に寝かせている。
そして、最後の5個目の組織を消した終わった際。何故か琴音が、組織の地下室のドアを開けて入ってきた。
そして、死体を見てすぐに剣を構え、魔法の詠唱を始めた。
(くそ!、何でここに来たのか知らないが、不味いな)
変装してるが、すぐに戻る為に、女装のままである。
下手に闘って、正体がばれる訳にはいかない。それに、
(ももちゃんの依頼の所意で、怪我させる訳にもいかなか………ハァー、面倒くさいな)
色々と考えてる間に、琴音の詠唱が終わる。そして、油断なく武器を構えた琴音が叫ぶ。
「僕は、聖騎士魔導学園の生徒だ。現状に置いて、犯罪が行われた事が明白である為。聖騎士法第二条により、準聖騎士として、ここで何が合ったか聴きたい。
抵抗する場合、武力を持っての実力行使も許可されている」
聖騎士法第二条は、全国にある聖騎士魔導学園の生徒が、犯罪現場に居合わせた際、聖騎士に準ずる権限が与えられる法律であり、他にも、何条かある。
(さて、どうやってここから逃げるかだな)
琴音に、怪我させる訳にいかない以上。ここから、逃げるのが最優先である。
それに、早く逃げないと聖騎士が来てしまい。それこそ、正体がばれる可能性が高くなる。
どうやって、逃げるか考えていると、
「逃げようとしても無駄だよ。今ここに向かってるのは、聖騎士第一部隊の人達だから、僕を倒しても逃げられないよ」
(聖騎士第一部隊って、戦乙女隊かよ!!。何で、聖騎士の精鋭部隊が来んだよ…………ちっ、余計逃げないと行けなくなったな)
亡霊としてなら、聖騎士最強の精鋭部隊、戦乙女隊が相手でも互角以上に渡り合えるが。今は、影霧 詩音であり、正体がばれた時点で終わりである。
(煙幕玉は、朝美に渡して残り2個。戦乙女隊を巻く為に使うから、ここでは使えないか。
さて、仕方無い。脅してドアの前から退いて貰うか)
喉を軽く触り、声を変える。
「聖騎士が来るまで、貴女が生きて要られるとお想いで?。なら、残念ですがそれは、無理でしょう。貴女なら解る筈ですよ、実力差が」
それだけで人を殺せる位の殺気を込め、低い男性の様な声で、静かに言う。
琴音が殺気に反応して、左足を一歩後ろに下げた。
「それで良いんです。貴女を狙う理由は、ありませんかから」
殺気を込めたまま、今度は優しく言う。狙わない事を、アピールする為に両手を上げた。
琴音は、少しづつ後ろに下る。
(そのまま、逃げてくれ)
琴音が、ドアに右手を延ばした時。右手に異常に魔力が流れたのを、感じた。
直後、ドアノブが熔ける。
「何を………ッ!?」
何をしたと、言い終わる前に、高速で何かが顔目掛けて飛んで来た。
一瞬視界に捉えたそれは、丸い金属製の玉だった。
(溶かしたドアノブを、丸めて高速で飛ばしやがった)
琴音の右手には、小さく丸められた金属の玉が数十個浮いていた。
「今のを交わすなんて。…確かに僕じゃ勝てそうに無いけど、聖騎士が来るまでの時間稼ぎ位は、死んでも稼ぐよ」
そう言うと、琴音の雰囲気が変わる。殺気を纏い、相手を殺そうとする姿は、まるで
(まるで、俺達みたいだな)
殺し屋の様だった。
(これは、こっちも本気でやらないと不味いな)
そう判断し、思考を切り替え、仮面を被る。
直後、金属の玉が高速で襲ってきた。
(残念、遅いな)
亡霊の仮面を被り、全ての感覚が上がった状態で見た金属の玉は、止まって見える程ゆっくりだった。
金属の玉を、全て交わし。側に落ちていた死体から、剣を奪い右手に持つ。
気配が変わったのが解ったのか、琴音がすぐに魔法の詠唱を始めながら、武器を構え直した。
「行くぞ」
わざと襲う前に声に出す。
それを、合図に琴音の魔法が完成し、炸裂した。




