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誰が為の世界

作者: 鵠居士
掲載日:2015/08/19

ただの思いつきです。

近年、この世界はますます、我々のような存在には生きにくい在り様を見せております。



それは、そんな一言で始まる一通の手紙から始まった。

それは、世界中のある存在達へと届けられた。


同一の言葉で表され語られる、異なる存在達。

ありあらゆる場所に存在する存在達の下に、誰一人として受け取り損ねることなく届けられたその手紙には、暇を持て余す彼らの興味を大いに引く内容が綴られていた。




我々が輝かしく生きる時代はとうの昔に過ぎ去っていきました。

我々の存在が、ただ在るだけのものと成り果てたのも、とうの昔の事だったではないでしょうか。

今では、我々の名に何の力がありますか。

我々の名を忘れ、我々が世界に、人々にもたらした恩恵も何もかもを忘れ去ったという人間も、我々の名を知る人間よりも多いという状況です。それは、皆様の心にもしっかりとある考えではないでしょうか。


ある方々の名と御姿は、古臭い絵物語と化しております。

ある方々の名と御姿は、人々の身勝手な考えの下でのみ信じられるものとなっております。

勿論、人々の記憶に留まり、人々の言葉を絶える事なく捧げられている方も居ることは存じております。

ですが、それもまた、人々の身勝手な考えによって捻じ曲げられ、別のものへと変じてしまっている事の、多いこと、多いこと。


ある方など、酷過ぎる扱いを受けているではありませんか。


その方を仰いでいるにも関わらず、人の身勝手な考えと思いによって、その方の存在と力、考えが組み替えられ、細切れにされ。その方は唯御一人だというのに、その存在を巡って人々が終わることのない争いを続けている始末。大きく三者、細かく分かれると数多に。愛と平和を謳う御方であるというのに、愛を貶し、平和を打ち砕いているではありませんか。


もはや、現世に我々の居場所は無い。

皆様もそう思いませんか。

人々の心失くしては、我々は力を満足に振るうことは出来ません。

それが、我々という存在だからです。


私はそれが口惜しい。

人々に、再び我々という存在を見せ付けてやりたい。

この身に宿る力を、権能を、在り様を思う存分振るいたい。


そこで私は考えました。


皆様は、人が一つの世界を創り出している事を、ご存知でしょうか。

まるで、創造の権能を持つ方々のように、電子という領域に世界を創り出しているのです。

大地を創り、空を創り、仮初とはいえ命を創り。


それはまるで、今は失われてしまった、古き良き時代の再現ではありませんか。




そして長々と綴られていく、提案。


その名と権能、存在がまだまだ失われてはいない、一人の神が始めた遊戯への誘いの手紙。

それは、信仰する民を失って力を失い、神という役目が消えて久しい存在達の、心を揺さぶった。

暇なのだ。

信仰する民は無くとも、その名は一つの物語の登場人物として語り継がれ、それによって完全に存在が消えたわけでもない神々にとっては、祈りを受けることもなく、ただ在るだけの時間は暇過ぎた。


信仰を失っていない神々は別に暇というわけではないが、彼らの名前は形骸化してしまっていることが多く、神の名の下に信仰しながらも、その本来の思い考え、存在意義は忘れ去られてしまっているか、歪められている。そんな己達に絶望、ないしは落胆していた彼らは、心の何処かで逃げ場を求めていた。





あの古き良き世界で、再び神として力を振るいませんか?

その存在意義を見せ付けてみませんか?

思う存分に力をふるってみませんか?

人々に怯えられ、慕われてみませんか?


その申し出に、彼らは「面白そうだ」と食いついた。



プレイヤーとして、『世界』中で暴れまわってもいい。

ボスキャラとして、挑みくる人々をなぎ倒してもいい。

サポートキャラとして、苦しむ人々に助けの手を伸ばし慕われるのもいい。

それとも、何の干渉も行わず、自分の支配領域を作って、神話と変わらぬ暮らしをしてもいい。


何をするのは、神々の自由。

「よい暇潰しだ」と神々はそれに頷いた。





神話の時代、英雄と謳われた神々は迷いなく、プレイヤーとなった。

悪を好む神々は迷いなく、ボスキャラを選んだ。中には、プレイヤーとなってPK行為を楽しむものも居た。


多くの神々はNPCを装い、自分の支配領域を定めたり、自分の権能をただ自由気儘に堪能したり、とある意味で神という存在らしく自由気儘な自己主張をして世界を楽しんでいた。






「ふっふっふ。」

神々が姿を消した、それでも普通に人間の生活が何一つ変化することのない、何時もと変わらない日常の世界で、一人の神が笑い声を上げた。


その神の名は、ロキ。

トリックスターという迷惑極まりない存在として、今でも人々に愛され、多くの物語なのに活用されることで、力をある程度保ち続けている神だった。


「ここまで上手くいくなんて。俺って、いい仕事するぅ!」

そう思うよな、と話しかけたのは、ロキの隣に立っている二人の神だった。

一人は、ヘルメス。情報の伝達を司る、ギリシャの神だ。

そして、もう一人は建速須佐之男命たけはやすさのおのみこと。日本の最高神たる女神を姉に持つ神だ。


この三神、生まれた地域は全く違う。

が、神としての役目が失われ暇を持て余して仕方なかった昨今、ある繋がりをもって交流を深めていた。

その名も、『悪童同盟』である。

ロキは言うまでもないが、このヘルメスと建速須佐之男命も、神話の中に悪名を留めている。

それによって繋がりを持ち、どういうわけが気があったこの三神。今では時折、現世の居酒屋やバーなどで面白可笑しく飲み交わす仲になっていた。


そして、べろんべろんに酔っ払った状態で、ある計画を思いついた彼らは、今回それを実行に移したのだった。


「これで、邪魔する神々は居ない。」

「あぁ、奴等がゲームに飽きて帰ってくるまで、色々と好き勝手に大暴れ出来るぞ!」


神々がゲーム世界で遊んでいる間に、自分達の力を持って遊ぼう、と何とも馬鹿らしい計画を、彼らは本気で実行に移したのだ。


さぁ、と三神は動き出そうとした。

ロキは、どんな混乱を引き落とそうか、と企みを頭に駆け巡らせる。

ヘルメスは、あれを盗み出したら面白いかな、と泥棒の神としての権能を発揮しようと目星を探る。

建速須佐之男命は、海原を荒れさせようか、それとも強き者に戦いを挑もうか、と心を躍らす。


神話の時代が終わり、力を弱らせたとはいえ、この三神の名は忘れ去られた訳ではない。止めるものがいなければ、弱ったとはいえ神の力を用いて、ほんの少しだけ世界で遊ぶことは可能だった。





「やっぱり。」


じゃあ、また後で。

そう言って各々の目的の場所に向かおうとした三神に、溜息交じりの声がかかる。

「どうせ、こんな事だと思っておりました。」


まず、ロキの身体に蛇の胴体が巻きつき、その動きを封じた。

「ヨル!」

それは、ロキの息子ヨルムンガンドだった。

「父上。いい加減、いい年なんですから落ち着きを持ったらどうですか?」

「そりゃあ、無理だろ。親父に落ち着きを求めるなんぞ、世界が終わる方が早ぇ。」

「フェンリル!!」

人身に変じているヨルムンガンドの横には、同じく人身に変じているフェンリルが立っていた。

人の時間を持ってしてつい最近の事ではあるが、想像力が溢れるようになり、人型を持たない神々に人身に変じる力が備え付けられるようになった。そうあればいい、という人々の思いが神に変化をもたらしたのだ。

その恩恵をいち早く受けたのは、ロキの三人の子供達だった。

「お父様。お父様がお考えになった『世界』はほんに楽しゅう御座いますわ。わたくし達と一緒に、遊びましょうね?」

その恩恵のおかげで、半身が腐敗しているという醜悪な姿から、完全な美しい人の姿に変ずることが出来るようになったロキの娘ヘルは、とてもとても人に好意的だった。

人に迷惑をかける父親の所業を見逃すことはしない。


大蛇たる息子に雁字搦めにされて、ロキは逃げたくても逃げられない。


友人達に助けを求めてみたが、友人達は友人達で何とも言えない状況に置かれていた。

「さぁさぁ、お父様。何をなさいます?そうだ。至極真っ当に、プレイヤーとして頑張ってみてはいかが?普段なさらない事が出来るのが、ゲームというものの醍醐味なのでしょう?」

ほほほほ、と笑う娘と、うわぁと微妙な顔を晒す息子達に引き摺られながら、ロキは『世界』の中へと足を踏み入れていった。


「やだぁ~。せめて、せめて、PK職じゃないと、お父さん死んじゃう!!!」


「駄目ですわよ、お父様。ちゃぁんと、木の棒装備から始めましょうねぇ~」







「で、お前は大人しく行くのと、引き摺られて行くの、どちらがいいんだ?」


「大人しく行かせて頂きます、兄上。」


ヘルメスを迎えに来たのは、生まれてすぐのヘルメスの被害にあい、それ以来腐れ縁として付き合わされている異母兄アポロンだった。

足の速さには定評のあるヘルメスならば逃げることも容易い事だったが、この兄はネチネチとしつこいことで定評があった。

ヘルメスは逆らうことなく、『世界』へと入っていった。




「………」

「………」


「俺が悪かったです。」

建速須佐之男命を迎えに来たのは、姉たる天照と兄たる月読。

普段から無口な兄だけでなく、怒ると黙って引き篭もる姉の、ただただ睨みをきかせるだけの無言の責め苦に、弟は早々に白旗を上げた。

そして、耳を抓られながら建速須佐之男命は『世界』の中に引き摺られていった。




神が不在の世界は、何も変わることなく時間を進める。

なら、神々が集まり、自由気儘に権能を発揮し見せ付ける『世界』には、何が起こるのか。


それは、誰にも分からない。

ゲーム知識は一切無いので、VRMMOものを書いていらっしゃる方々を尊敬します。

本物の神々が混ざって遊んでいるゲーム。

もしかしたら、プレイヤーが閉じ込められるという定番の事態になるかも知れませんし、普通に楽しまれるかも知れません。それは、家族にド叱られている悪童同盟にも分かりません。

こんな話があったら読んでみたいです。


でも、ゼウスだけはどんなポジションにつこうと、フルボッコされてそう。

エロ親父ですから。

撃退アイテムは、『ヘラの○○』っていう名前ですかね?


ハデス、イザナミ辺りは、安定の引き篭もり?



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― 新着の感想 ―
[一言] 神々が創ったVRMMOってまた懐かしいネタが・・・ 2~3年前に投稿されてエタっちゃったのがあるんですよね。 確か【ミソロジー・ライフ】って名前だったかと。 あれは主に思兼神がトラブルメー…
[一言] ゼウスは寧ろやりたい放題してると思う。 神話でも大抵目的達成してるし、浮気バレた時も浮気相手を別の生き物に変えたりしてしらばっくれるし。 ヘラもヘラで浮気わかってるのに嫉妬心からの復讐相手は…
[一言] 神話体系ごとのギルド作って抗争とかおもしろそうw 仏教系の神とかどうなるんだろうね? ガルーダの迦楼羅天やインドラの帝釈天とか・・・ >VRMMOもの あれってまず精神や自我を科学的に確認…
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