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密談

引き続きチャーリー視点→ダガート視点です。コロコロ視点が変わって分かりにくいかも知れませんすいません。

小部屋に入るとダガートは素早く室内の白薔薇を手に取り、ドアの外に置いているサイドテーブルの小さな花瓶に挿した。

平たく言うと「密談中」というサインだ。これでよほどの礼儀知らずでないかぎり邪魔者は入ってこない。


室内に入るとドカっとソファに座るチャートリーに苦笑しながら声をかける。

「コニャックでも飲むか?」

「すまない」

「構わんさ」

コニャックをグラスに注ぎながら言葉を続ける。

「少ししたら会場を見てくる。殿下が近くにいるのなら声をかけるから、それまでここで休めばいい」

「そこまで手間をかけないでくれ。勝手に時間をつぶしてから抜け出すから」

「また捕まるぞ」


チャートリーは諦めたように肩をすくめる。

「ある程度は仕方がない」

「ご苦労なことだ」

ダガートは少し眉を上げグラスを渡し、自分も向かい側の椅子に腰を掛ける。


「ああ、ありがとう。いや、もうこの話はよそう。どうだ?去年の主日以来会っていないよな。何かおもしろいことはあったか?」


なぜかダガートは口を開いたあと少しの間を空けてから言葉を発した。

「…いや、特には。相変わらずの日課だ。平和なものだよ。そちらこそ殿下より男爵に叙されたと聞いた。おめでとう」


面倒くさそうに片手を上げ応える。表向きはガイン王国ナハエ共和国を拠点としている複数の商団を王国に勧誘することに成功し、三国間の貿易路を確立したという功績だが、実際父の力添えが大きかったから自分の手柄とは言い難い。


「伯爵位を継ぐまでのつなぎだよ。男爵となれば伯爵の息子より多少の発言権は増す。殿下も味方が一人でも欲しいんだろう」

「まだご成婚されてからそんなに経っていない、そう焦ることでもないだろう」

「種は今から蒔いておかないとな」

「なるほど、俺も上を目指すつもりだ」

「ああ、期待している」


言葉少なに交わされた会話には二人の男の次期国王を支える次世代としての決意が込められていた。


チャートリーがふと笑う。

「お前はもう少し気が回らない男だと思ったのだがな」

「なんだそれは」

「いや、学園時代にさ、覚えているかミュレ家の令嬢が」

「やめろ」


本気で嫌そうにチャートリーのからかいを止めるダガートを見て思わず相好を崩す。

「こうやってお前をおちょくれるのなら新年の集いに出るのも悪くないな」

何か言い募ろうとしたダガートはチャートリーの顔を見てはたと固まった。

「どうした?」


「…エディー…?」

呆然と呟かれた言葉に思わず目を見開く。



・・・・・・・・・・・・



学園時代から主に従姉妹であるエディエンヌ・レティスフォントに振り回されているせいか、チャートリーはかなり怒りっぽい所がある。

ダガートがなにやら女性たちに追い回されているチャートリーを談話室に先導すると彼は入室するや否や、よほど腹が立っていたのかソファに身を投げるように乱暴に座る。

とはいえ沸点が低い分静まるのも早いようでグラスを渡すころには完全に冷静さを取り戻したようだ。


逆に自分のことを聞かれ一瞬言葉に詰まる。


おもしろいことならあった。

下町でうまい食堂を見つけた。

可愛い少女に出会った。

その少女が自分の心を捉えて離さない。


などと目の前の男に話してどうするのかと、特になにもないと答えることにした。


会話を続けるとチャートリーは完全にリラックスしたのか、学園時代の出来事を持ち出してダガートをからかい始めた。

ダガートは色恋沙汰に鈍なところがあり、ミュレ家の令嬢に誤解されたまま決闘に巻き込まれたことがある。

結局リリアーナに助けられ、婚姻を無理やり結ばれそうになったすんでのところから逃れられた。ダガートとしてはかなり情けない思いをするはめになったが…。


そんな話をチャートリーが始めようとしたものだから慌てて止めると愉快そうに笑われた。


なんだ人をおちょくる元気があるなら会場に放り出すぞ。


そう言おうと彼に目をやり、ぎくりとした。

チャートリーの笑顔がエディーと重なったのである。


そんな馬鹿な。ダガートはうろたえた。

笑い方が似てるのか?だが見れば見るほど顔立ちも似ている。


知らずエディーの名をつぶやくとチャートリーが目を見開く。

すぐに不審そうな顔になった彼に構わずダガートは考えた。


偶然だ。それか遠い親戚か……。


親戚……いた。

エディエンヌ。チャートリーの従姉妹。

エディー、エディエンヌ、エディー…。

いいや違う、エディエンヌの顔はもうよく覚えていないが彼女の高飛車な声や話し方なら覚えている。エディーのそれとは遠くかけ離れているんだ…。

ああ、だが思い出したぞ、エディエンヌ嬢はそれは見事な金髪の持ち主だ。

エディー、エディーの髪は…。


呻いた揚句ダガートは間抜けな質問をすることになった。

「チャートリー、エディエンヌ嬢にはエディーという親戚はいるか?」

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