メイドさんの苦悩
私、紫堂咲はとあるお屋敷でメイドをしています。私は、自分でもどう言う時に
使えばいいのか――さっぱり解らない妙な能力を持っています。
「おい、姉ちゃん」
背後から声をかけられ、振り返ると数人の男女がニヤニヤ笑いながら私を見てい
た。
「姉ちゃん、ウェイトレスさん? 可愛い格好してんじゃん」
「ヤベー、超ミニスカだし」
「キャハハー、チョーウケルー」
一人の男が私の喉元にナイフを突きたて、
「オラ! 怪我したく無かったら、金と身体置いてけっ」
後ろで他の男女はゲラゲラ笑っている。
私は自分の特殊能力を使った。今まで使った事は無かったけど――緊急事態だ。
うまく発動できるだろうか。
「オラ! 黙って無いで早く出せ――」
男の声をかき消す程の綺麗に揃った足音。住宅地の樹木を揺らしながらガサガサと音をたてる何か。
「ワーイ!」
民家の樹木や茂みの中から――葉っぱ一枚を身に付けたグラサンのおっさんが大量に出てきた。――その数、約三百人。
「キモっ! 何アレ?」
私を恐喝してきた男女は逃げようと回れ右をしたが――
「サバラァ!」
両手を前に突き出したSADAKOの大群が列を揃えて走ってきた。辺り一面SADAKOで、もう私の目からはSADAKOしか見えない。
おっさんとSADAKOは路地裏に集まり、恐喝してきた男女を取り囲み、
「カエレ! カエレ! カエレ!」
カエレカエレの大合唱。
恐喝してきた男女は失禁しながら真っ青な顔をして、逃げていきました。
「そっか、こう言う時に使うんだ。……でも――」
私は辺りを見渡した。仕事が終わったのに、ズラッと並んだおっさんとSADAKOはニュートラルのポーズで整列している。
「これ、どうやって戻すんだろ……?」