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vol.5 告白

8月の始め…


翔と明奈の関係は相変わらず普通におしゃべりする友人のままだった。


気がつけば、翔と会える実験の授業は、あと1回で終わりだ。


その前日、明奈は学食でケーキを食べながら、友達の沙枝と話していた。


沙枝は中学校で出会った友達であり、高校は別れてしまったが、メールで連絡を取り合い、大学が同じだったため再会した。


中学校の頃、元彼や父親のことで、よく相談に乗ってもらっていた。


そして、今回は翔のことで相談に乗ってもらっていたのだが…


「…やっぱり、告白はしなくていいよ。」


「明奈、本当にそれでいいの? 私、長瀬君は大丈夫だと思うよ。」


「だけど、やっぱり男の人、怖いもん。友達として付き合ってるうちは優しくても恋人になったら…中学の時のアイツみたいに… あの時はすぐ別れたから良かったけど、そのまま付き合ってて、万が一大人になって結婚なんてしたらお父さんみたいになるんだから…。男の人ってそんなもんなんだよ…」


「長瀬君のことも怖い? 長瀬君もそうなるって本気で思ってるの?」


「長瀬君のことは全然怖くない。初めて会った時から不思議なくらい怖くなかった。それに長瀬君はアイツや父親みたいにならないと思う…」


「だったら…」


「でも、長瀬君が私のことどう思ってるかなんてわからないし! アドレス交換してるんだから別にいいよ。あっ、そうだ。別に向こうからメールが来たこともないし…」


明るい口調でいう明奈。


「ホントにそれで後悔しないの…?」


沙枝が悲しそうな顔で明奈を見つめる。


「…!!」


(このまま長瀬君と何もなく終わっても、沙枝や他の友達との楽しい日々がずっと続く…だから、何も悪いことなんてない…もともと恋愛する気なかったし………でも、何でだろう…何かすごく後悔する気がする…)


「ねぇ、明奈。何かあったら私が絶対助けるから。せっかく、男の子が嫌いで、恋愛も結婚もする気なくて、それなのに好きって思える人に出会えたんだよ…」


「…」


少しの間考え込み、明奈は小さく深呼吸する。


そして、明るい声で言った。


「よし!私、頑張ってみるね!! 沙枝、ありがとう。」


「うん!明奈頑張れ!! …明奈、もう1個ケーキ食べちゃおう!」


明奈と紗枝は、席を立ち、本日3個目のケーキを買いに行った。







その日、別の学食には翔と翼がいた。翼は翔の高校生の頃からの友達である。


「なあ、翔。明日で実験終わりなんだろ。二宮さんとこのまま会えなくなってもいいのか。」


「そうなんだよ…。だから告白したいと思ってる。」


「よし!そうしろって!俺、話聞いてたら、二宮さんと翔はお似合いだと思うぞ。」


「でも、また高校の時みたいなこと言われて終わりなんじゃないかって思ってさ…」


「そんなの告白してみないと分からないだろ。」


「そうだけど…」


「二宮さん、どんな人がタイプとか言ってなかったのか?」


「恋愛の話なんてしないよ…でも、たぶん性格の悪い人は嫌いだと思う。」


(そんなの誰だって嫌いだろ… )


「翔…告白しないで、後悔しないか?」


「…」


翔はじっと考え込んだ後、突然立ち上がった。


「する!ここで告白しなかったら、絶対後悔する!告白してみる!」


「おう!ダメだったら、次の日は、他の人も誘って、一日中傷心カラオケでもしようぜ!」


「ありがとう! …あれ、何で立ち上がっちゃったんだろう?」


(二宮さんのタイプが天然ボケでありますように…)






その翌日―


最後の授業でも翔は相変わらず、実験のまとめに苦戦していた。


「長瀬君、また計算合わないんでしょ。」


明奈がおかしそうに言う。


「う、うん…。また、教えてもらってもいい?…最後までごめんね。」


明奈はいつものように翔に計算を教える。そして、無事にまとめが終了し、プリントを提出した。


普段だったら、すぐに教室を出る準備を始めるのだが、この日は2人とも黙って座りこんだ。


目的は一つ…。


先に口を開いたのは明奈だった。


「これで授業終わりだね……長瀬君…えーっと………」


好きです!…と言いたいのだが、なかなか勇気が出ない。心臓だけがドキドキと高鳴る…。


すると、次に翔が口を開いた。


「二宮さん、いつもまとめ手伝ってくれてありがとう!それと………」


勢いよく言ったものの、やっぱり好きです!とは言えなかった…。


(ヤバい…緊張する…でも、せっかく「ありがとう」って言えたんだ…この勢いで…)


「私、長瀬君の…『好きです!』


「えっ!?」


「僕、二宮さんのことが好きです!」


明奈が告白を始めたのとほぼ同時に翔が思いを伝えた。


「あっ……私も長瀬君のこと好きです…」


驚いた明奈は放心状態になりながら思いを伝えた。


2人とも大きく深呼吸をする。そして、静かに見つめあった。


「ありがとう…二宮さん…」


「長瀬君こそ…」


「…僕たち恋人同士で良いんだよね?」


「もちろん」


「じゃあ、早速学食のケーキ食べに行かない? 安心したらお腹すいちゃった…」


翔が笑顔を見せてそう言うと、明奈も笑顔になる。


「うん!行こう!私もお腹すいた…。一日中のエネルギー使い果たした気がする…」


翔と明奈は実験室を後にした。



これから、2人の穏やかで楽しくて、ちょっとおバカな日々が始まる…


やっと明奈と翔をくっつけることができました。この小説でメインにしたいのは、恋人同士になってからの日常生活なのですが、短くても、やっぱり出会いから告白までの部分は必要かなと思いまして、vol.1~5を序章のような形で描くことにしました。それにしても駄文で申し訳ないです…。

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