vol.9-diary4 ドキドキプレゼント
明奈の誕生日に翔が選んだプレゼントとは…
そして、別の場所でも気持ちが動き出す…!?
とある、月曜日…
明奈は友人の沙枝と一緒に学食で昼食を食べていた。
「明奈、今度の木曜日、誕生日だね~」
「うん、でもその日講義が4限までびっちり入ってるんだよね…」
明奈がそう言うと、沙枝が尋ねる。
「でも、翔君には会うんでしょ?」
「うん、もちろん」
「楽しみだね」
沙枝がそう言うと、明奈が嬉しそうにうなずいた。
その時、たまたま2人を見つけた翔の友人の翼が声をかけてきた。
「やあ、明奈ちゃん」
「あっ、翼君。…沙枝、会うの初めてだよね?」
明奈が沙枝の方を見て確認すると、沙枝は案の定、複雑な表情をしていた。
翼の方も誰にも聞こえないような声で「やっぱり…」とつぶやく。
明奈は、必死に説明する。
「あ、あのね…翼くんは翔の友達なんだ。見た目は…その、ピアスとか茶髪とかで…チャラ男にしか見えない…っていう感じだけど、すっごく優しいの!」
「明奈ちゃん…はっきり言うね…」
再び小さな声でつぶやく翼。
しかし、沙枝は、明奈の言葉をすぐに信用した。
「へぇ~、翔君の友達なんだ。人は見かけによらないっていうもんね♪ これからよろしく」
「うん、よろしく」
翼はそう言うと、何か買ってくるからと一旦その場を離れた。
すると、沙枝は明奈の耳元でこう囁いた。
「つまり、翼くんって見た目はワルだけど、中身はすごくいい子ってパターンってことだよね。私、そう言うのに弱いかも…」
「えっ…?」
明奈は沙枝の顔をじっと見つめた。
* * *
「誕生日プレゼントってそれかよ~!?」
翌日、翔が明奈の誕生日プレゼントに選んだものを見て、翼は困惑した。
「うん、シェイミのランドフォルムとスカイフォルムのぬいぐるみセット!しかも、これ喋るんだよ!」
ちなみに、シェイミとはポケモンの1種で、とてもかわいらしい形態のランドフォルムと、かわいさと凛々しさを持ち合わせた形態のスカイフォルムという2つの姿をするという特徴がある。さらに、荒れた土地を一瞬でお花畑に変えてしまう能力を持っているポケモンだ。
「明奈はこのポケモンが大好きなんだ。だから、これ見つけたとき、すぐに『これだ!!』って思ったよ!」
翔はすっかり嬉しそうにしている。
(大学生におしゃべりぬいぐるみをプレゼントか…)
翼は少し不安になったが、翔の表情を見るとあまり悪いことも言えなかった。
「そうか…明奈ちゃん喜ぶといいな」
翼の言葉に、翔はプレゼントを見つめながら、大きくうなずいた。
* * *
その翌日…
翼が空きコマの時間を潰そうと学食に行くと、同じことを考えていた沙枝が一人、席についていた。
「やあ、沙枝ちゃんちょっと良いかな?」
「あっ!どうぞ♪」
翼の声に気付いた沙枝が、嬉しそうに言った。
「…そんなわけなんだけど、どう思う?」
翼は、翔が明奈に選んだプレゼントについて相談していた。
「う~ん、どうだろうね…」
沙枝も何とも言えないようだった。
「だって、対象年齢3才以上って書いてあったぜ。これじゃあ、恋人へのプレゼントって言うより父親から娘へのプレゼントだよな…」
「う~ん、確かに明奈は3才以上だけどね…」
「しかも、漢字に全部ふりがなが振ってあってさ…こんなのプレゼントしたら、さすがの明奈ちゃんも呆れちゃうんじゃないかって心配で…俺、翔が悲しむ顔見たくないんだよ」
「なるほど…。そう言われると、ちょっと私も心配になってきたな…。でも、きっと大丈夫だよ。明奈は、そのシェイミってポケモン好きなんでしょ? それに、明奈はカワイイもの大好きだし!」
「そっか…俺が心配しすぎなのかな…」
翼がそう言うと、沙枝が神妙な顔つきで口を開く。
「翼君ってさ…」
「ん、何?」
翼の方も思わず真剣な顔になってしまう。
「すっごく、優しいんだね!!」
沙枝は明るい笑顔を見せて、そう言った。
「えっ、いや、そんなことは…」
翼はそんな沙枝に、瞬間見惚れた。
* * *
明奈の誕生日当日…
「明奈、誕生日おめでとう!」
「ありがとう、翔♪」
講義が終わり、2人は明奈の家にいた。
「これ、明奈に…」
翔はそっとプレゼントを渡す。
「やったー!ありがとう。…開けても良い?」
明奈が尋ねると、翔はそっとうなずく。
プレゼントを開ける明奈…。中身はもちろんシェイミのおしゃべりぬいぐるみ…。
ドキドキする翔。
プレゼントを見た明奈はパァーっと笑顔になった。
「わー!かわいい!翔、ありがとう!!」
明奈は翔に抱きつく。
(喜んでくれて良かった!!)
明奈を抱き止めた翔はとても幸せだった。
* * *
次の日、明奈と沙枝は学食にいた。
明奈は嬉しそうにぬいぐるみを喋らせて遊んでいる。
「これシェイミが映画で言ってたセリフなんだよ~」
「へぇ~、…まあ、翼君の心配は結局、杞憂だったわけだ」
沙枝がそう言うと、明奈が不思議そうな表情になる。
「いや、あのね、大学生にそんなのプレゼントしたら、明奈、呆れて翔君のこと嫌いになっちゃうんじゃないかって。翼君、心配してたの」
沙枝が説明すると、明奈がおかしそうに笑った。
「そっか。でも、確かにちょっと変だよね。最初にこれ見たときは、正直『えっ?』って思った」
明奈は話を続ける。
「だけどね、そう思ったのは一瞬だけ。翔が私のためにプレゼントを選んでくれた。“女の人が喜びそうなもの”じゃなくて“私が喜びそうなもの”を選んでくれた。そう思ったらすごく嬉しくて…。昨日、翔と別れてから、何か涙が出てきちゃったんだ。」
そう語る明奈の表情はとても幸せそうだった。
「明奈、本当に良かったね!」
沙枝の言葉に、明奈はプレゼントを見つめながら、大きくうなずいた。
相変わらずの乱文で失礼します。
「女の人って何をプレゼントしたら喜ぶのかな~」という視点ではなく、「“睦月詩音”には何をプレゼントしたら喜ぶのかな~」という視点で、恋人にはプレゼントを選んでもらいたい…私の個人的な思いから、この作品を作りました。