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現状把握


意識がだんだんと冴えてきた。



乳母の膝の上でいつものご飯を食べながら俺は思考を巡らす。


自分だけど自分ではない。

思考に靄がかかっているような、まるで夢を見ている感覚だった。


意志とは関係なく反応してしまう身体もそう。

泣いてしまったり、お漏らししたり。


これが赤子というものだというのは割と早い段階で分かった。

しかし、自分が何なのか、どういう状況にあるのかを思考できるようになったのは最近のことだ。



その思考の結果、現在の状況は仏教でいう輪廻転生のような事だという結論に辿り着いた。

つまり俺は一度死んで生まれ変わったというハズなのだが、生前はどうやって死んだんだ。


いや、生まれ変わったのであれば、生前というより前世と言った方が正しいのか。


前世の事は靄が晴れるのに比例して断片的に思い出してきたが、死に際はよく思い出せない。

別に病気はしていなかったし突然死だったのだろうか。


まぁ何にせよこれぐらいの思考ができるようになったのだから過去のことはいずれ思い出すだろう。

大事なのは現在の状況把握と、これからだ。



現状分かっている事を振り返る。


つい先日、誕生日会のようなものが開かれていたことから俺は今ちょうど2歳の赤子だと推測している。


まだ言語は話せない。

雰囲気で何となく話しかけてくる人の言ってる事は理解できるぐらいだ。

あと家族の呼び名も分かってきている。




「でぃー」



頭を上げてそう言うと乳母が反応する。

これは恐らく彼女の名前か役職なのだろう。生まれて初めて覚えた単語だ。


彼女は1日のほとんどを俺の世話をしながら過ごしているが俺の母親ではない。

家族の中では俺の乳母か家政婦といった形で雇われているのだろう。

これが分かるのは前世の意識というか知恵によるものだ。


まず第一に彼女が古い時代の給仕さんのような格好をしている事。

両親の格好も古めかしいが正装のような格好をしていることが多く、話している時の雰囲気から関係性は察した。


俺が彼女の子供であるという可能性も少し考えたが、それも違う。

なぜなら彼女には俺とほとんど同じ年齢の子供がいる。

両親や彼女による俺とその子との扱いの差から俺が上位者である事は否応なしに感じた。


とりあえず話を戻すと現状認識の大事な一つ目は、俺が良いとこの坊ちゃんであるという事だ。

少なくとも家政婦を雇う余裕のある家に生まれた。

生まれた家による格差は、人生に大きな影響を与えるものだ。

極めてポジティブな要素、今風に言えばアドだ。



反対にネガティブな要素を考える。


まず第一に技術レベルが挙げられるだろう。

赤子として家の周りを見渡すだけでも家具の作りや蝋燭による照明から科学技術は存在していないと考えて良い。


前世に読んだ何かしらの本で科学の発展と幸福度に相関関係はないと読んだが、科学文明を知ってしまっている俺からすればこれは大問題だ。


それに何より技術レベルが低いというのはイコール医療レベルも心配だ。

昔の時代は乳幼児の死亡率が高いという事は知っている。

当然予防ワクチンなど打っていないのだから、この事に気付いてからは日々生きた心地がしない。

この点は何も知らない赤子であった方が良かったと思う。



次に、挙げられるのは両親のこと。


これは決してネガティブというばかりではないが、何というか愛されていない。

いや、愛されていないと言うと語弊があるかもしれない。


乳母の子供と比較しても大事にされているのは感じるが、少なくとも日本人的な価値観の下ではそう判断せざるを得ない。


しかし、これは決して親の性質という話ではないと考えている。

ここまでに整理したこの家の格や文明レベルから察するに現代日本人的な価値観を当てはめるのはお門違いだろう。

大事にされているだけマシというものだ。


それに俺は大人としての意識がある。

子供にとって親の愛というものの重要性は言うまでもないが、俺にとっては必要とまではいかない。

まぁそれが次の要素にも関わってくるのだが…。



最後に兄弟のこと。

これまたネガティブとポジティブの両側面がある要素だ。

(ネガティブ)(ポジティブ)だ。


兄の年齢は成長具合から見て俺より3〜4つ上。

兄も俺と同じく大事には育てられているように見えるが、これまた同じく愛されているとは言い難い。

そして俺の目から見ても兄は愛を欲している。


それを象徴するネガティブな要素が兄の癇癪だ。

こんな環境で愛されず育った兄は、弟の俺を可愛がりはしない。


会うと乳母に抱えられている俺にちょっかいをかけてくる。

酷い時には殴ってくる。


5歳ぐらいのガキとはいえ、こちとら2歳の赤子だ。泣くぐらいしか抵抗はできない。

乳母は守ってくれるが雇い主の子供である兄に対して遠慮している側面もある。


誰かに構ってもらいたいのだろう。

前世でも仕事の関係上、こういう子供は見てきた。


兄弟の関係性は人生において重要だ。

両親よりもその関係性は長く続くのだから。



そして、弟。

つい先日生まれたばかりで俺とは2歳差だ。

前世では末っ子だったから可愛くてしょうがない。


ポジティブな要素としては、その可愛さで充分だろう。

両親や兄との関係性がいまいちである事もあるが、弟を見て初めてこの世界での家族を感じたと言っても良い。


今の俺にとって、転生後のこの世界で生きる意味ができた。

そんなレベルの感動があった。



しかし、そんな弟にも一つだけ問題もある。


弟の可愛さと比べれば些細な問題、それどころかポジティブな側面もあると言える。

しかし、これが最も俺を悩ませている問題であり、思考の靄が晴れた今でも解決はできていない。


弟には犬のような耳と尻尾が生えていた。

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