病弱聖女セラフィーナ、可憐に布教
「……あなたは、“祝福”されていませんね?」
開口一番、それだった。
え? 怖っ。宗教の勧誘か?
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場所は聖王国の聖都ルミナリアにある、でっっっかい教会の中庭。空は晴れ、ハトが舞い、花は咲き、信者は正座。
そしてベンチの上、体調ゲージが常に赤の女の子が、薄布のローブにくるまって、俺をジッと見ていた。
儚い。儚すぎる。
顔は天使、声は天上、でも目が死んでる。あと、ずっと咳してる。え、ほんとに生きてる?ってレベル。
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名前:セラフィーナ・ホープ
職業:清楚系・奇跡の聖女(公式)
実態:信仰心が強すぎて世界の評価システムとシンクロしてる女
口癖:「神はすべてをお見通しです」「咳払い」
銀髪ロングに白いローブ。肌、透けてる。体温、たぶん冷蔵庫以下。
だがこの見た目で、今朝10人布教して3人泣かせてる。なにそれ。
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「ネオ様。評価ゼロ……神の声も届かない、最も穢れし魂……とても、興味深いです」
「待って待って待って。あの、オレそんなヤバいやつなんすか? なんかホラー始まってない?」
「いえ。とても素晴らしいと思っています」
セラフィーナはふわりと立ち上がり(なお立ち上がった瞬間に貧血で転倒しかけた)、俺に近づいた。
「この世界では、評価がすべて。でも、神はきっと……“それ以外の価値”もご存じのはず」
「神って誰?」
「ふふ……まだ、それは秘密です」
めっちゃ意味深スマイル来た。なんか──伏線感がすごい。
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「ネオ様。もしよろしければ……洗礼を受けていただけますか?」
「お断りします!!!!」
即答だった。なんか洗礼って単語の響きがもうダメだった。
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そのとき、背後からメルティアがぬるっと登場。
「おや、セラフィーナ様。ネオくんに、信仰の売り込み中ですか?」
「はい。とても清らかな魂で……見ていて、心が洗われます……ゲホッ」
セラフィーナが咳き込んで、そのまま布団モードに突入。信者たちが一斉に担架を持って走ってきた。チームワーク良すぎて怖い。
教会の奥に運ばれながら、セラフィーナは振り返って俺に言った。
「ネオ様……きっとまた、お会いできます……その時までに、あなたの魂が……どれほど穢れているか……楽しみにしております……」
「完全にヤバいやつじゃん!! 宗教系ホラーじゃん!! 清楚系の皮かぶった地獄じゃん!!」
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「……ネオくん。これでヒロイン候補、4人目ですけど」
「うん。全員ヤバいやつだね」
「ご安心ください。まだあと2人いますから」
「不安しかねぇよ!!」