ネオ、評価社会の呪いに挑む!ヒロインの闇と真実が明かされる
静寂に包まれた聖王国の一室。淡い月光が窓から差し込む中、ネオはヒロインたちと円卓を囲んでいた。
「お前たちの“評価”って、本当にお前たち自身なのか?」
ネオの一言が、部屋の空気を変えた。
白鐘メルティアが、メガネを指で押し上げる。
「……私は“自己肯定感監査官”として、他人の心の値を測ることに慣れ過ぎていたのかもしれない。けれど、そのたびに私自身の“自己肯定”が薄れていったのも事実よ。」
リュシアが鋼の拳を握る。
「騎士長として、強くあるべきってずっと思ってた。でも、本当は怖かった。『弱い私』が誰かにバレて、評価されなくなるのが…怖かったんだ。」
ミミはいつもの無表情で言った。
「私は“感情”を捨てることで科学者としての地位を保ってきた。でも、それは他人にとって都合のいい機械であれってことだったのかもしれない。」
エルナはふっと笑いながら、唇を噛んだ。
「明るく、軽く、ポップに! それがエルナのキャラ。でも、ホントは怖かったの。誰かが私を“つまらない”って思ったら、私の価値なんてないって、ずっと怯えてた。」
ルジェは小さく鼻で笑いながらも、その瞳には色のない苦悩が浮かんでいた。
「私は“悪”の象徴だった。裏切り者で、倒すべき敵。……けど、それでも誰かに必要とされるために、“忠誠”って仮面を被って、媚びるようになった。歪んだ私を、評価で上塗りしたのよ。」
そして――セラフィーナが、黙っていた口をゆっくり開いた。
「……私は、最初から“聖女”じゃなかったの。」
ネオが振り向く。
「セラフィーナ……?」
彼女は、震える指で胸元のロザリオを握りしめる。
「病弱で、儚げで、清らかで……そう振る舞えば、みんな私を守ってくれた。評価してくれた。でも、それは全部――“演じていた”の。」
その瞳に、じわりと光がにじむ。
「誰かに“評価”されなければ、私は存在しないと思ってた。だから、笑って、祈って、弱く見せて……でも本当はずっと怖かったの。誰かがその嘘に気づくのが。」
ぽろっ……と、涙がこぼれ落ちた。
「私は“神の声”を聞く聖女なんかじゃない。ただの――寂しい女の子なのに……」
その瞬間、誰もが言葉を失った。
メルティアがそっとセラフィーナの手に自分の手を重ねる。
「あなたがどんなに“嘘の聖女”でも、私たちは知ってる。あなたが本当に優しい人だって。」
リュシアが無言で背中をさする。ミミがロザリオの構造を解析するフリをして、顔をそらしたまま「泣くな」と小さくつぶやいた。
エルナは目尻を拭いながら、「次からは、笑うの手伝ってあげる」と言った。
ルジェは一歩後ろから見守りつつ、ただ一言。
「その涙も、あんたの価値よ。」
ネオはゆっくりと、彼女の前に立った。
「セラフィーナ。聖女でなくても、病弱でなくても、俺はお前が――ここにいてくれて嬉しい。」
セラフィーナの涙が、止まらなかった。
「ありがとう、ネオ……ありがとう……」
その瞬間、部屋の評価ランプが“ゼロ”を指した。
誰の数値でもない、本物の「心」が、そこにあった。