表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/34

死んだら「無評価」だった件について

目が覚めたら、天井が金ピカだった。


てっきり豪華なホテルか、セレブの邸宅かと思ったけど──違った。

目の前には、銀髪でメガネの美少女がいた。


バチバチに整った顔。

白磁みたいな肌。

銀糸みたいな髪がふわっと揺れて、メガネの奥の瞳は、えげつないほど冷静。


「あなたが、“ゼロ評価者”ですのね」


初対面でこれ。

ツッコミどころ多すぎて、脳が処理を拒否してる。


「……あの、すみません、ここ……どこっスか……?」


声が裏返った。

っていうか、自分の声が妙に高い。なんかこう、アイドルの少年期みたいな──


(え、俺、声変わり前?)


慌てて手を見る。

白くて小さい。爪までピカピカ。


鏡を見る。

……見たくなかった。


細っこい首。クリクリした目。ちょい垂れ気味の眉。

なんかこう、YouTubeで「この子男の娘だったのか!?」ってバズってそうな、

その系統の顔面がいた。


「これ俺!?転生でキャラクリ失敗した!?」


「失礼ですわね。あなたの魂に最適な“世界適応ボディ”をこちらで選定いたしましたの」


銀髪メガネの彼女が、涼しい顔で言う。


「わたくし、白鐘メルティア。“自己肯定感監査官”ですの」


「いや職業名どうなってんだよ!」


「主に、世界のバランスを乱す“自己否定系男子”を見張る仕事ですわ。あなたのように──」


キーン。


と、音がした。頭の中に直接。

光の通知みたいなやつが、空中に表示される。


名前:佐々木ネオ

評価ポイント:0(バグ認定)

世界認定ランク:無価値(New!!)

自己肯定感:ゼロ


「……あれ?この世界って、SNSみたいな評価システムついてんの?」


「はい。“バズポチライト”と申しますの。誰かに“いいね”されると力が増しますわ」


うっわ、やっちまった。

現代の地獄を、異世界にまで持ち込んじゃってんじゃん。


「ちなみに、あなたは評価ゼロですので──一切のステータス補正を受けられません」


「バフどころか希望すらねぇの!?」


「いえ、正確には“呪いの影響すら受けない特異点”……だそうですわ」


なんかちょっとだけチートっぽい言い方してるけど、中身クソ雑魚やん。

カラーバーすら点いてないぞ。電源入ってないレベルだぞ俺。


「それでは、引き続き監査に入りますわね。あなたの一挙手一投足、見逃しませんわ」


メルティアはそう言うと、手帳を開いて、

“第一印象:思ったよりキョドっている。声裏返った。評価−5”

とか書き始めた。


やばい、これ地獄だ。



その後、しばらくして現れたのが、もう一人のヒロイン(予定)の女の子。


ふわっとした金髪。教会風の白いローブ。儚げな雰囲気。

でも目は死んでない。むしろ超澄んでる。浄化済み。メンタル無菌室。


「はじめまして……私は、セラフィーナ。あなたをこの世界に招いた者です」


──聖女、爆誕。


「この世界で、あなたが自分の価値を見出せますように……心から祈っています」


口調も仕草も100点。

人間に優しさをインストールしたら、こうなりますっていう見本みたいな人だ。


でも俺、知ってるんだよね。


このタイプの子、笑顔で言ってることほど、あとで大体エグい。

現代社会の知見がここで生きる。俺だけが知ってる闇知識。


「この世界において……“評価ゼロ”というのは、神すら干渉できない、最後の“観測外領域”なのです」


はい出た。なんかすげぇ単語。


「そしてあなたは、その無の中から、何を見つけるか──試されているのです」


うん、なんかそれっぽいこと言ってるけど、要するにあれでしょ?


「お前、バグだけど逆に面白いから、放り込んでみた」ってやつでしょ?


ちくしょう、俺がやってたソシャゲの運営と同じ発想してる!


──こうして、俺の異世界生活は始まった。


しかもスタート地点は、評価ゼロ、自己肯定感ゼロ、

監査官に監視されながら、聖女に祈られるという、

いっそ“人生晒し配信”みたいな状況からのスタートである。


なんかもう、死にたい。


いや、もう一回死ぬのってアリなんかな?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ