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百戦錬磨の人生イージーモード



「本当に良かったです、公爵様に喜んでいただけて」


「レティシアは気にしすぎだよ。父上は君からのプレゼントなら、例え紙切れだろうと喜んでいたはずさ」


「あはは、そうでしょうか…」



 何言ってんのよ、紙切れなんて渡せるわけがないでしょう? アナスタシスは時々、大げさな言い方をするのよね。


 そう内心苦笑しつつも、私は微笑みを浮かべ続けた。



「僕からのプレゼントも、一応は喜んでくれたみたいで良かったよ」


「公子が用意したサファイアが埋め込まれたメダルもとても素敵でしたもの。公爵様がお喜びになるのは当然のことですよ」


「君は相変わらずだな」


「⋯⋯えっと?」



 うん? 一体何が言いたいわけ?


 戸惑った表情を浮かべる私を見て、アナスタシスはいつもの柔らかな笑顔を浮かべると、さりげなく話題を切り替えた。



「レティシア、君の誕生日ももうすぐだね」


「あぁ、もうそんな季節になりますか」


「十八回目の誕生日、もちろん僕も祝わせてもらうからね」


「ふふ、是非ともお願いいたしますわ。公子、今年の誕生パーティーのエスコートもどうかお願いいたしますね」


「もちろんさ。君をエスコートするのは、婚約者である僕の務めだからね」






∴∵∴ ୨୧ ∴∵∴ ୨୧ ∴∵∴ ୨୧ ∴∵∴






 ティアルジ公爵の誕生パーティーが始まってから、数時間が経過していた。

 眩しいばかりの青空が、いつの間にか夕暮れに変わり、陽が沈むと共に星の見える美しい夜空が広がっていた。


 誕生パーティーは午前と午後の部に分けられており、午前の部が終わると、一度用意された個室の部屋に行き夜の部に向けての準備が整えられる。

 昼間の華やかな雰囲気とは一転、夜になると会場はさらに豪華に、煌びやかに飾り立てられていた。やはり、公爵家の誕生パーティーは他の貴族のそれとは一線を画している。お金のかけ方、スケール、何もかもが違う。


 そんな賑やかな舞踏会の中で、私は手に持ったシャンパンを飲み干し、一人の男の元へと歩み寄った。



「公子! やはり、ティアルジ公爵家のお屋敷はとても素敵ですね。何度来てもこの素晴らしさに圧倒されてしまいますわ」


「先程ぶりだね、レティシア。君に気に入ってもらえたなら嬉しいよ。よければ、後で一緒に庭園に行かないか? 風に当たりながら散歩でもしよう」


「まぁ嬉しいです、公子様がよろしいのでしたら是非♡」



 笑顔を浮かべ、あえて少し照れたように言ってみせる。

 彼の気を引くためならこれくらいは当然のこと。

 愛想良く、相手に気に入られるように。

 笑顔を振りまいていれば、相手は必然的に自分に好意を向けてくれる。



「僕は皇子と話があるから少し待っていてくれるかい?」


「もちろんです、それではあちらのあたりにいるので終わり次第来てくださいね」


「分かったよ、すぐに君の元へ行くと約束するさ。何せ、僕は心配なんだ」


「心配? どうしてですか?」


「アスタリア帝国の天使様は、人を虜にするのがとても得意なようなので」



 アナスタシスは話しながら、視線を横へずらした。

 私もそのまま、同じ方向を見るとそこに居たのは数名の令息たちの姿が。


 あぁ、そう言えば何度か言い寄られたことがありましたっけ。鬱陶しいのよね、ほんと。まぁ、美しい私に惚れるなという方が無茶な話かしら。


 でも、今回ばかりは貴方たちモブ男さんたちに感謝してあげるわ。

 だって、彼の関心を引けたのだから。



「あら、それは私だって同じ思いですよ公子」



 アナスタシスに好意を持つ令嬢たちの目が、敵意として私に向けられている。

 それだけで、私の存在が一層輝いているように感じるの。


 アナスタシスから向けられる好意は、何とも心地が良い。

 だって、令嬢たちがアナスタシスに向ける好意が、そのまま私にも来ているような感覚になるから。

 価値のある存在が、私を想っている。それって、最高。


 アナスタシスは権力だけじゃなくて、容姿にだって優れている。

 『花よりも美しい花公子』なんてダッサイ呼び名がつくほど美しい容姿の持ち主。

 白がかった黄金の髪に、青い瞳を持つ、とっても美しい人。私と並んでも、何ら引け目を取らない。

 美しさと力を兼ね備えた存在。それが、彼を魅力的にしている。


 かわいい私と、かっこいい次期公爵。どう? みんな私が羨ましいでしょ? もっともっと、羨んでちょうだい。その嫉妬が私を満たしてくれるから。


 私は、この世に生まれたその時から百戦錬磨。

 美しい容姿に、絶対的権力。私の人生、イージーモード。


 それを証明してくれる、薬指にはめられた光り輝く婚約指輪。

 容姿が整っていないと、スタートラインにも立てない。そんな人生、ありえないよね? 私なら、首を吊って死んでやる。

 

 愛されない人生なんて、絶対に嫌よ。


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