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ただの魔王の友人だったのに  作者: NY


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アムネシア王国

客間に戻った俺は、窓から見える街並みを眺めていた。


「ほんとに異世界に来ちゃったんだな俺」


窓から見える街並みには大きなマンションやビルはおろか、

整備されたコンクリートの道路すらなく、街灯でさえあまりにも薄暗いものばかりが見える。

まあこの城の中の雰囲気や服装を見て、あまり文明が進んでいないであろうことは

大方予想していたわけだが、こうして目の当たりにすると

現代人としてはかなり絶望感を感じる。

当然WIFIや充電する電気もないわけで、持っていたスマホも使えず暇をつぶすものが何もない。

こうして街を眺めるくらいしかないというのは、遊びがあふれていた時代から来たものには、

娯楽が何もないのと同義なのである。


「阿久津様、シェリーでございます。お茶をお持ちいたしました。」


「ありがとうございます、どうぞ。」


心が沈んでいたからか、シェリーさんの声がまるで天使のささやきのように

心地よく部屋に響いた。

ドアを開けるとシェリーさんは手際よくお茶の準備をしてくれた。

シェリーさんが用意してくれたお茶は、ハーブのような香りのする紅茶で

一口飲むと頭の中のもやが晴れていくような味がした。


「ありがとうございます。とてもおいしいお茶ですね。」


「それはよかったです。こちらクッキーもご用意いたしましたのでご一緒にどうぞ。」


とてもおいしいお茶にクッキーなのだが、隣に無言でメイドさんが立っている

状況は男子高校生的には落ち着かない状況である。


「国王様にこの国について思ったことを教えてほしいといわれたのですが、

 この国は何か問題を抱えているのでしょうか?」


窓から城下町を見たところ、治安が悪いわけでも貧困にあえいでいるわけでもなさそうに見えた。

それなのに国王様はまるで問題があるかのように話をしていた。


「急を要するような問題はないのですが、根源的な部分で問題がありまして。

 それを説明するにはまず、この世界の歴史についてお話しさせていただきます。」


シェリーさんの話す内容は驚くことばかりだった。

まずアムネシア王国は一万年ほど前に建国され、世界最古の文明都市であるということ。

そして今この国にいるのはみんな”ハイヒューマン"と呼ばれる、ヒューマンから進化した種族らしい。

特徴としては寿命が非常に長く、平均300~500年あるという。

さらにハイヒューマンには必ず一つ特殊な能力があり、ヒューマンを導く立場にあった。

ヒューマンに農業や鍛冶、建築や自衛手段などについて教え、

まるで子供を育てるかのように接してきたという。

しかし約千五百年前に、数の増えてきたヒューマンによる独立運動がおこり、

ヒューマンとハイヒューマンによる戦争が起きた。

戦争といってもアムネシア王国からすれば、反抗期の子供をなだめるようなものであり、

自衛以外の抵抗はせず、ヒューマンだけの国ミズガルド帝国が建国された。

ヒューマン側に被害はほとんどなかったにもかかわらず、

歴史上ではアムネシア王国は悪であると記述されており、

ミズガルド帝国から分立したほかの国々からも、同様の扱いを受けているという。

さらにこの戦いはヒューマン側では聖戦と言われており、不当な支配から

人々を救い出したという英雄譚まであるらしい。

それでも戦後当時はハイヒューマン派と独立派で意見が二分されていたようだが、

今では当時を知る者など残っておらず、帝国の作った歴史を信じ、

ヒューマンはハイヒューマンのことを魔族と呼ぶようになったのだという。


「やっていることがまるで親の言うことが納得できなくて、周囲に当たり散らして

 家出する子供じゃないかよ。」


同じヒューマンとしてはとても耳が痛い話だった。


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