謁見
背丈の二、三倍はありそうな扉がゆっくりと開き、中へ入ると、
想定していた人数より少なくて驚いてしまった。
こういう場面なら周りに騎士や貴族が整然と並んでいるものを想像していたのだが、
玉座の間には玉座の前に一人の騎士と傍らに宰相のような人、
そして玉座に座る王様の三人のみだった。
情報量の少ない人間を玉座に入れるにしては、あまりにも警備が手薄ではないだろうか。
確かに宰相以外の二人はかなり強そうな見た目ではある。
騎士さんのほうはまるでライオンのような逆立った金髪で、左ほほに古傷と思われる
傷跡がついた見た目で、大きな槍斧のような武器を持っていて、
まさに歴戦の戦士といった雰囲気をまとっている。
王様は思っていた以上に若く、騎士さんとは対照的でまるで物語の勇者のような雰囲気をしており、
赤黒い短髪の髪に驚くほど整った顔立ちをしていた。
武器も持っておらず、体格もそこまで大きくないのだが、
まとっている威圧感が騎士さんの比ではないほどに強い。
周りを観察しながら玉座の間を進み、騎士さんのそばで王様に一礼した。
「よくぞ召喚に応じてくれた召喚者よ、余はこの国の国王アスト・シフ・アムネシアである。
楽にしてくれて構わない、余はそなたを客人としてこちらへ招いたのだからな。」
「ありがとうございます、私は阿久津 勇磨と申します。以後、お見知りおきください。」
俺はゆっくりと顔を上げ、アニメの受け売りのような挨拶をしてみた。
しかし召喚に応じたとは何のことだろうか?
俺は応じるも何も、気がついたらここに召喚されていたのだ。
何かこちらの認識と齟齬があるように思えてならない。
「先ほどは手間をかけさせてすまなかった。召喚の際に手違いが生じてしまってな。」
「いえ、こちらとしても大変すばらしい体験をさせていただきましたので」
実際その手違いのおかげで実に素晴らしい光景を見られたのだ。
召喚自体に関しては思うところもあるが、手違いに関してはむしろ感謝したいくらいである。
「ハッハッハ!そうかそうか!やはりそなたを召喚して正解だったわ!
余の前で冗談を言えるようなやつでなければ、余の友としては不十分だからな!」
一国の王とは思えぬほど無邪気で笑うので、驚きで聞き流しそうになったが、
王様の友達探しのために俺は召喚されたということか?
まあこの状況下で冷静に分析しているような変人でなければ、
冗談など言う前に喚き散らすか、状況が理解できずにうずくまっていることだろう。
「それで私はこちらで何をすればよいのでしょうか?」
「そのようにかしこまった口調でなくともよい。俺も少し砕けた話し方をしよう。
そのほうが勇磨も話しやすいだろう。」
先ほどまでの威圧感が嘘のようになくなり、心なしか息もしやすくなった気がする。
正直貴族とかの礼儀作法など全く知らないのでこの条件はとても助かる。
「まず勇磨にはこの国を見て回ってもらいたい。そこで気になったことや
改善点のようなものがあれば、定期的にこちらに教えてほしい。」
「それだけでいいのですか?」
「ああそれだけだ。ただでさえいきなりこちらの世界に連れてきてしまったのだ。
せめてこちらの世界を楽しんでもらわねば気が済まないからな。」
どうやら想像していたよりとてもいい国に召喚されたようだ。
まだ楽観できる状況ではないが、少なくともすぐに死んでしまうような心配はなさそうだ。
国を回り定期的に報告をするだけというのは、あまりにも簡単な内容だし、
当面の衣食住の保障と金貨一万枚(日本円にすると約一千万円)を必要経費としてもらった。
これ以上の待遇を求めては傲慢というものだろう。
「では詳しい内容は書面にて追って伝えるゆえ、しばらくはゆっくり休むといい。」
そうして俺はひとまずの安寧にほっとしながら、玉座の間を後にした。




