第二話 召喚者
初めて見る魔法はとても暖かく心地よいものだった。
まるで高級エステにでも来たかのような心地よさで、思わず眠ってしまいそうになってしまった。
「落ち着かれましたか?」
確かに緊張で凝り固まっていた筋肉はほぐされたものの、
初めて魔法を見たという興奮や、異世界に来てしまったという困惑が重なり
先ほどとは違う形で動揺してしまっているが、
「はい、だいぶ落ち着きました。ありがとうございます。」
とりあえず離れてもらわなければまた同じ状況になりかねないので、
ここは一旦大丈夫だと言っておこう。
動揺しているとはいっても、一般的に見れば落ち着いているほうだといえるだろう、
この部屋がとても居心地がいいというのもあるのだろうが。
「申し遅れました。私はあなた様の専属メイドとなりましたシェリーと申します。
まだまだ未熟者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
ん?専属メイド?なぜ先ほどまで覗き魔のような状態だったのに、
このような好待遇を受けているのだろうか。
「すみません状況が全く読めていないのですが、ここはどこですか?」
状況を整理するためにも、まずはここがどこなのかを聞いておこう。
「失礼しました。こちらはアムネシア王国の王城にある貴賓の方用のお部屋でございます。」
「あなた様は王自ら召喚されたのですが、手違いにより召喚場所がずれてしまったのです。」
王様に召喚ということは俺にも特殊能力があって、魔王を倒してくれとか言われたりするのだろうか。
それにしても大体こういうのは王様が召喚の命令を出して
召喚士みたいな人が召喚の儀式を行うというのが物語でよく聞く展開じゃないのか?
まあここの王様はそういう適性を持った人なのかもしれないな。
「えっとそれで私が召喚された理由は何でしょうか?」
「それについてはあなた様の体調が回復し次第、わが王より直接お話したいとのことでしたので、
今はどうぞごゆっくりおくつろぎください。」
◆◇◆
シェリーさんが来てから2、3時間くらいたったろうか。
日はすっかり落ち、外が暗くなってきたころ、俺は王様に謁見するために玉座の間に向かっていた。
夜なのもあってか王城内は驚くほど静かで、ほかの人の気配は全く感じられない。
かなり大きそうなお城なのだが、これほど人がいないと少しホラーゲームのような
不気味さが漂っている。
「この先が玉座の間になります。ここからは私は同席できませんので、こちらで待機しております。」
「俺礼儀作法とか何も知らないんですが、大丈夫でしょうか?」
「その点についてはご心配なく、あなた様は臣下ではない故必要ございません。」
とはいっても玉座の間で王様に謁見など、緊張するなというほうが無茶というものだ。
少し前まで夏休みを謳歌していた一高校生に、いったい何ができるというのだろう。
あちらの世界では特に不満もなく、そこそこ自由に生活できていたため、
頭の中で特に意味もない言い訳を繰り返しながら、俺は玉座の間に入っていった。




