不寛容な者共よ
世の中気に入らないことはいくらでもある。商品の名前だとか、映画のワンシーンとか、他人の話し方だとか、些細な気に入らないことはある。
しかし、存在してはいけない理由にそれがなるのだろうか。
評価をするのは別にいいが、人を罰する権利を人間に与えればろくなことにならない。それに懲りた人間は知恵を絞ってやっと法律を作った。なのに、『法律は破る為にある』等と歴史を学ぶ気さえない愚か者は言うのだ。学ぶことを止めた人間を何と呼べばいいのか、生物的にも精神的にも原始人としか言いようがない。自分のご機嫌がそんなに大事なのか。王様気分の愚かな原始人以下である貴方は、自身にいったいどれだけの権利と価値があると思っているのか。
世の中の「不快に思う人もいる。」という暴論で自分の都合を押し付ける考えなし共にはほとほと愛想が尽きた。僕が、「貴方が不快です。」と言ったらそういう人たちは、どこかに消えてくれるのだろうか。たぶん、激怒するだけだろう。半端に言語が分かる原始人は本当に困る。更に質が悪い場合はこう言うのだろう「名誉棄損だ。」と。周りを囲み圧倒的に有利な状況で、僕の名誉を尊厳を気付つけておいて、『名誉棄損』だと、どの口が言うのだろうか
今、「貴方が不快だ。」と言えたならどれだけ良いのだろうか。
僕の前で叫び続けている女子の言葉が僕の耳の上側から下側へ通り過ぎていく。
嫌な気持ちになったとか、他の子もそう思ってるとか、そんな内容だ。
座っている僕の席の周りを取り囲む原始人の足。
頭に音が響く、視界に白くモヤがかかる。
彼ら彼女らは、自分の事を被害者だと思っているのだろう。そして、僕が加害者だと。
もう何がきっかけだったのかさえ分からない。要するにこいつらは、僕が嫌いか、僕をいじめて楽しんでいるのだ。先生はあてにならない、うっかり忘れものをしただけであれだけ怒って人格否定までするのに、本当に叱って教育をするべき時には見て見ぬふりをするのだ。本当に、ここには卑怯な原始人しかいない。自分が不快であれば、泣いて喚いて話も聞かない。(聞いても理解できるとは思えないが。)自分に不利益があると分かれば、さっさと逃げ去る。なぜ僕は、こんな原始人しかいない場所に居るんだ。
いっそ原始人になってやろうか。
僕は、風切り音がするような速度で立ち上がって、そいつの顔を見つめた。何かを言っているが、僕は原始人だ言葉など通じるものか。筆箱の中で一番とがっていて、硬そうなシャープペンシルを右手で握った。勢いで、筆箱の中身が散らばり、床で消しゴムが跳ねるゴトンという音と、定規が落ちるパタンという音がした。僕は、右手を高く持ち上げる。目の前のそいつは僕の右手を見た。左目に映ったペンの先端が、どこまでも大きくなり。左目に僕のペンが刺さった。刺さったペンを避けるように顔を覆い、そのまま後ろへ倒れこんでいく。口が開いているが、叫び声は聞こえず耳鳴りだけが聞こえる。僕は右を見た、そこには怒りに顔をゆがめた奴らが見えた。光が後ろから当たっていて顔が見えない、足だけが妙にはっきりとしている。
ガヤガヤとした何を言っているのかもはっきりしない声が聞こえる。僕は唇を噛んだ。
僕はいつの間にか、右手にカッターナイフを握っていた。鋭い刃先には奴らが映っている。僕はそいつらの顔を右から左に、左から右に切り付けた。鋭い音を立てて、影がバラバラの三角形になる。後ろから笑い声が聞こえる。
チャイムが鳴る。僕は目を閉じた。
僕は振り返りながら、両手に持った柄が長くて頭の四角いハンマーをバットみたいに横にふるった。後ろで、笑っていた連中の頭を横薙ぎにした。重たい鉄でできたハンマーの頭は、連中の頭をガラス瓶のように粉々に砕いた。破片が光を反射する。
「おい、お前ら席につけ。休み時間は終わったぞ!」
僕は荒く息をする。肩が上下に激しく動く。
ガタガタと椅子が動く音と、話し声が聞こえる。
僕は目を見開いた。
目の前には、鼻先が付きそうなほど近づいた机の木目が
めちゃめちゃになったあいつらの残骸が
見えなかった。
僕は、暗いところでは水滴に顔が映ったりはしないことを知った。