7話 弁当と合戦
今日は僕にとって少し特別な日。
「さあ、今日こそは合戦について教えてもらいますよ!」
そう、この前の部活で正則達が言っていた合戦について教えてもらう日だ。
「はっ!? どこからその情報を!?」
「正則です」
「あちゃー……もうちょっとキツめに口止めしとくんだったねぇ……」
うーん、この狼狽えっぷり……さてはこの情報、極秘だったかな?
「それで、教えてくださいます?」
「あー、うん。そうだね。ヤスか佐吉が信頼できる人を呼んでおいで。どっちにしろ、3人じゃできないし」
「じゃ、オレは掲示板に連絡書いてくる」
信長様が合戦の連絡を入れに行った。僕も家康を呼びに行こう。
――
家康を呼びに行ったら結局、左近や吉継たちもついてきて来て部員全員が集まった。みんな合戦を楽しんでいるらしい。
部室だと狭いから体育館に移った。本来ならほかの部活が使ったりもするみたいだけど、今回はESS部で貸し切りなんだそう。
「じゃあ、先ずは……佐吉! オマエ、転生してから手に入れた能力はあるか?」
「転生してからの能力、ですか……?」
「おう。例えば、オレは寺とか宗教施設に行くと必ず火災が起こる。ヒデは何もしてなくても、とにかく目立つ。ヤスは薬の副作用を無効化するのと絶対に漏らさない能力だな」
なるほど……なんと言うか、微妙な能力だなあ……
「僕のは植物を操る能力、ですね。基本的に米と野菜と左近花……じゃないや、彼岸花です。一応、頑張ればマングローブとかトリカブトとかも生やせますけど」
そして最近の趣味は米の品種改良だ。おいしいお米ができると達成感があって楽しい。
「いや、トリカブトは要らん、というか法律的にアウトだぞ。それにしても久々に合戦向きの能力持ちだな……兵站任せようと思ったけど、前線に出てもらおうか……」
信長様が独り言を言い始めた。って言うか兵站だとか前線だとか色々教えて欲しいんだけど!?
「信長様、ルールとか、教えてくださいよ」
「ルール? ああ、弁当のおかずを奪い合う! 以上だ。」
「えっそれだけ!?」
「あー、特に言うなら、法律に違反しない限り怪我人がでない範囲なら好き勝手やって大丈夫だな」
はあ、すっごくユルいルールだ…
「それじゃあ実戦あるのみ! 今回の大将首は卵焼き! チーム割はさっき発表した通り! ……はじめ!」
ええっ!? もう始めるの!?
はわわっ僕にできることって何だ!?
「あーもうっ! 僕! とにかく、相手の妨害をします!」
「応! んじゃ、俺はガンガン攻めてくぜ! いくぞ清正!」
「ガルルル、ガウ! (おうとも! 遅れを取るなよ、三成!)」
はあ!? 何か清正が虎になってる! 何で!?
「っ! マングローブ!」
あっっっっぶな!
みんな勢い良すぎない!? とりあえずマングローブ生やしとこ。
「ガッハハハハ! 一昨日ぶりだな! 顔見知りだからって容赦はしねェぞ!」
ひぃっ! 佐々木殿じゃんか! めっちゃ怖い! マングローブも木端微塵にされてるし!
「さっ咲け、左近花!」
とにかく、まずは茎で足を絡めとる! よし、こんな感じか!?
「なんのォ! 草花ごときッ!」
うわっ千切られた! それなら、もっと強い茎を作って……
「植物を舐めないことです! もう一度、咲いて!」
よし、今度こそ!
今は大丈夫だけど突破されるのも時間の問題……うぅっ……胃が……胃がキリキリする……
「そこまで!」
ぎゃっ! 信長様、もしやメガホンで叫んだな!? 音割れで耳がキーンとする……佐々木殿も耳を押さえてるし……
「今回は結果発表はナシだ! 各々、片づけはキチンとしろよ! 佐吉は合戦の流れを掴めたか? なら良し! 解散!」
えぇ……始まりもいきなりだけど終わりもいきなりなんだけど………
「よっ! さっきも言ったけど、合戦の流れは掴めたか?」
「あっはい。でも、最初に言ってた兵站とかって結局何なんです?」
「ああ、アレ。途中のおかず補充係の事だな」
そうだったのか……それなら僕、あまり役に立たないような……?
「んで、今日のを見た感じ、オマエは兵站に向いてねぇな、と」
「そうですね。その場で料理のできる人が居るなら兵站もできそうですけど……」
「……なるほど、そうか。その手があったな! じゃあ佐吉、授業に遅れないように気をつけろよ! じゃあな!」
えっ……うわっ!? ヤッバい! 早くお昼食べて移動しなきゃ!
――
今回の初出人物
加藤清正
五奉行の一人で豊臣は好きだけど三成が嫌いで東軍に入った人。
転生したら正則の転生能力の虎になってた。
どうしてこうなった。