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日ノ本高校のミツナリ君  作者: GOAT
大型連休編
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48話 ビーチバレー

 朝食を食べ終えた僕達は、先生方の指示で、ホテルからほど近いビーチに来た。なんでも、大友殿のプライベートビーチらしく、貸切状態だ。

 照りつく日差しが熱くて、みんな、手を扇代わりにして扇いでいる。僕自身も、髪を括って正解だった。


「では、朝礼を始めるぞ! 此度は四校合同合宿に参加してくれた事、感謝する!」


 オーディン先生が、みんなの前に立って朝礼の言葉を言う。僕個人としては、朝礼するのはいいんだけれど、屋内でやった方がいいと思うなぁ。そのうち、誰か暑さで倒れそうだよ。


「……熱中症……気をつけろ……」

「うん、ありがとう。充分に気をつけるよ、治部様」


 いつのまにか斜め後ろに立っていた治部様に麦わら帽子を被せられて、スポーツドリンクの入ったペットボトルを渡された。治部様って、思っていたより過保護で、執事って言うより兄様みたい。


「――で、最近は、転生者による能力の暴走事故が急増している! よって、今回の合宿は能力の安定化を目指すモノである! 非転生者の君達は、転生能力への理解を深める会とする!」


 先生の話を聞いてヒュッと息を呑んだ。転生者による能力の暴走事故って、心当たりしかない。頼朝公に綱吉、そして僕自身のことだ。

 実は、あの体育祭の後、家康から二人の事を聞いていたんだ。

 頼朝公も綱吉も、能力が発現した時に、その強力な力を扱いきれずに、自身も洗脳状態にあったらしい。そして今は、その洗脳状態を解除するために、徳川総合病院に入院中、とのことだ。

 僕は植物を召喚するタイプの能力だったし、治部様のサポートがあったからまだマシだったんだ。でも、もし僕の能力が、ヒトの心に作用するタイプだったらと思うと……。


「……三成……? ……どうした……?」

「あ、いや。なんでもないよ」

「……そうか……無理は……するな……」

「うん、ありがとう」


 治部様、本当に勘が鋭いなぁ。でも、僕だって、無理をしたい訳じゃないし、適度に力を抜いて頑張ろうっと!



――



「では、この合宿における最終目標を提示しておく! お主らには、生徒対教師のビーチバレーで、我らから一点を取れるようになってもらう!」


 僕がボーっとしている間に話が進んでいたらしい。オーディン先生が、合宿の最終目標の話をしていた。でも、生徒対先生って、生徒側が圧倒的に数で有利だと思うんだけど……。


「しかし、これでは、お主らが圧倒的に有利だと思うであろう? それ故、これから一試合しようぞ!」


 うわ、先生、絶対に僕の考えを読んだでしょ。今、先生は僕の方を見てニヤって笑ったもん。ちょっと、そういう所が嫌らしいな。

 でもね、僕だって、あの乱世を生きた武将で、いわば負けず嫌いなんだ。つまり……。


「オウ、オマエら! 先公相手でも、売られた喧嘩は買ってやろうじゃねぇか!」


 ノブ様の言葉に反応して、日ノ本高校の面々が固まっている辺りから鬨が上がる。

 つまり、持ちかけられた試合は、負け戦でも買うよ。ちょうど今、ノブ様が言ったようにね!


「あ、暑苦しいわ……それなら、私が審判をしてあげてもよくってよ!」


 そして、いつの間にか、暑苦しさから逃れようとしたマリーが審判になっていた。




 両陣営がコートに移動して睨み合う。教師側のメインアタッカーはオーディン先生、生徒側のメインアタッカーはノブ様、佐々木殿、小越だ。

 でも、教師側の実力が未知数で不安だな……あ、でも、そうか。オーディン先生もロキ先生も、北欧神話の出身か……それなら、もしかしたら……!


「ねえ、治部様。体育祭の時の治部様みたいに、僕にも矢は扱える?」

「……! ……なるほど……そういう事か……私より……威力と……手数は減るが……できないことは……ない……」

「そっか、ありがとう」


 これは、もしかしたら勝てるかも……!

 僕が治部様との話を終えると、人工的に染められた金髪を陽光で輝かせながら、正則が近づいてきた。話の内容が気になったらしい。


「三成、何か思い付いたのか?」

「うん、可能性、だけどね。上手くハマればイケるはず」

「なるほど。で、最初のうちは様子見ってことか」

「そういうこと」


 だって、一番の懸念はまだ残っているからね。


「先攻は生徒陣営よ。それじゃあ……試合開始!」


 審判を引き受けてくれたマリーの合図で試合が始まる。サーブはヒデ様だ。


「行っくよぉ……そぉれっ!」


 ヒデ様の放った大きなサーブは、先生方に取られる事もなく……コートの外に落ちた。


「おっ、これってワッシらの勝ち?」

「いや、いやいやいや。ヒデ様!? ボールはコート内に落とさなきゃ意味がないんだけど!?」

「え、そうだったの? 流石三成、物知りだねぇ」


 だ……ダメだこれ……僕らが勝つなんて、出来っこないよ……! まさか、試合以前の問題だったなんて……!

 そして、気づいた時には、僕はマリーに向かって悲鳴のような声で叫んでいた。


「たっ、タイム! タイムです!」

「どうしたのよ、ミツナリ?」

「これから、生徒陣営でビーチバレーのルールの共有をします! 今の僕らは、試合以前の問題なんだ! 小越と宮笹も手伝って!」


 以前の部活見学で、キックベースのルールがあやふやだって政宗が言ってたから、少し嫌な予感はあったんだ。でも、まさかこれほどとは、僕といえども気付けないよ……!



 結局、ルールの共有とちょっとした練習で、午前の時間が全て潰れてしまったのは言うまでもない。

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