表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日ノ本高校のミツナリ君  作者: GOAT
大型連休編
50/69

46話 主従と友人

 ふぅ……お腹いっぱいだよ……流石にお腹を壊す程食べるなんて事しないけど、満腹感で眠くなってきたなぁ……。

 ふぁ……うぅん……秀吉様と、お話しなきゃ……。



――



 うーん、よく寝た……。

 え、「よく寝た」!?


「いっ、今なんっ!? 痛ぅっ……!」


 痛たた……今、頭がゴチンって、すっごい音がした様な気が……。


「あいたたた……おはよう、佐吉」

「秀っ!」

「しぃー……今は夜中で、みんな寝てるから、静かにねぇ」


 頭をぶつけた相手は秀吉様だったのか……! 思わず大声を出しそうになって、あわてて口を塞ぐ。そうか、今は夜中なんだね……。あれ? でも、


「僕、ベッドで寝た覚え、無い……」


 そう。僕、あの後は、眠気に耐えられなくてソファで寝ちゃったはず。なのに、今は何故かベッドに居る……。


「それはねぇ、ワッシが運んだんだよ……って言いたい所だけど、実際は、あのキツネ君が運んだんだんだよ」

「キツネ……もしかして、治部様……?」


 確かに治部様は、見た目は前世の「僕」だけど、キツネの耳と尻尾が生えてるし……でも「キツネ君」ってそのまんまだな。


「まあねぇ、あ、そうそう。君、お風呂入れてないでしょ? これから一緒に行こうか。温泉も、まだ空いてるはずだしねぇ」

「あ、はい」


 そうだね、話はそこでしようかな。



――



 流石に夜中と言うだけあって、温泉に入っている人は僕たち以外には居なかった。……えっと、何々? 美肌効果に肩凝り腰痛……今の僕には関係ないかな。


「ふぅ……いい湯だねぇ……」

「……うん」

「っと、そうだ。佐吉……いや、三成に話があるんだよ」


 話? もしかして、吉継が言っていた事かな?


「もうそろそろ眠くなってきそうだからキッパリ言うけど、ワッシは、今世でも三成と主従で居たいわけじゃないんだ。今世では、友達として接してくれないかい?」


 やっぱり、その話だったか……。


「……今はちょっと、難しい、です。僕は、『石田三成』は、ずっと、何度生まれ変わっても『豊臣秀吉』の家臣になるものだと思ってました。前世の頃から、ずっと」

「え、そうなのかい?」

「うん」


 前世の頃に、秀吉様の晩年の頃に一度、同じ事を言ったんだよ? そう言うと、秀吉様が慌てて思い出そうと、ああでもない、こうでもないと独り言を呟きだす。やっぱり、覚えてないんだね……。


「いやぁ、ごめんよ……流石に晩年期は認知症で……」

「わかってる。わかってるんです。でも、あの頃の事が悔しくて……ちょっと八つ当たりしただけなんです」


 あの頃に認知症なんて病名は無かったけど、確かに秀吉様の記憶力は衰えていた。それは仕方がないって納得していた。

 だけど……だけど、僕の名前と茶の味を忘れられた時は、絶望しかなかった。僕にとっては、お茶は、僕らが出会ったきっかけだったから……すごく、悔しかった。屋敷に帰った時に何度も泣いた記憶がある。

 それでも、秀吉様に仕える事ができているだけでも幸せだったから、ほんのちょっとの意趣返しも込めて、秀吉様が覚えられるはずもない誓いを立てたんだ。


「そう、か……ごめんよぉ……辛かったよね……」

「いいんだ。認知症は、仕方ない事だし、最期の瞬間には、僕の茶の事を思い出してくださったから」


 でも、悔しいものは悔しいから、ちょっと、泣けてきたや。


「それで、その……友人関係については、僕が折り合いをつけれるまで、少しだけ、待ってほしい、です」

「うん、うん……気長にゆっくり待つよぉ」


 秀吉様が、中々泣き止まない僕の背中を撫でてくれる。温泉に居るから、っていうのもあるけど、相当眠いみたいで撫でる手が温かいなぁ。

 そろそろ、僕も秀吉様も、のぼせそうだし、部屋に戻って明日に備えて寝ようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ