42話 飛行機と飴
「ハァーー……ハァーー……んんッ! ほんっと、ありえない! 何で飛行機の時間を間違えるんだよノブ様のバカ!」
「アッハッハ……マジで、ごめん……」
あの後、結局は飛行機に間に合う事ができた。できたのだけれども。本当に、ただただ疲れただけだった。
「……三成……大丈夫……?」
「……うん。ごめん、取り乱した」
飛行機の座席は隣に家康。後ろは吉継と左近、前がノブ様とヒデ様だ。
僕が落ち着いて程なく、機内アナウンスがあって飛行機が動き始めた。
「おぉーーっ! 三成様、動いてますよ! すっごいですね!」
「左近、そんなに揺さぶると三成は何も見えないよ」
「あっ、そうだった。すみません、三成様」
「うっ……大丈夫、次は気をつけて……」
いや、全く大丈夫じゃないけどさ。エチケット袋が必要な程でもないし、いけるでしょ。
「……無理……禁物……」
「うん、わかってるよ。本当に大丈夫だし」
油断も隙もないな……。家康、僕が無理をするとすぐに気づくんだから。
添乗員さんのアナウンスが入って、飛行機が離陸した。前の座席を見れば、日頃から眠そうにしているだけあって、ヒデ様は既に夢の中。ノブ様が一人、つまらないといった表情だ。
「んぁ? ンンッ! あー、あー」
「ノブ様? どうかした?」
離陸をして、空港が小さくなってきた時、ノブ様が急に咳払いをし始めた。一体、どうしたというのだろう。
「あー、いやな? 何か、さっきから耳がおかしくってだな」
「……気圧……変化……」
「ああ、なるほど。それじゃあ、添乗員さんに飴ちゃんを貰おうか」
ちょうど、添乗員さん達が飲み物のサービスに来ているし。
彼女達から受け取ったメニュー表を家康と覗き込む。見れば、ラインナップには緑茶があったけれど、もう売り切れているらしい。
……なんか悔しいな。仕方がないからウーロン茶にしておこう。
家康を見れば、僕と同じ事を思ったみたいで、渋い顔をしていた。と言うか、僕と家康だけじゃなく、日ノ本高校の面々はみんな同じ様な感じだ。
飴と飲み物を受け取ると、添乗員さんは足早に去っていった。
「はい、ノブ様。舐めてれば少しはマシになるはずだから」
「おう、サンキューな……それにしても、何でこんなのを知ってたんだ?」
「うん? あぁ、僕自身、よく耳がキーンってなるから母上が教えてくれたんだ」
その母上も、耳がキーンってなりやすいから、体質が遺伝しているんだろうなぁ。
ノブ様は飴を舐めているうちにマシになったらしい。窓の外を見てはしゃいでいる。
僕は、少し寝ようかな。朝から全力疾走して疲れたし。




