40話 合同合宿
憂鬱な中間試験も終わって、あと数日で連休がやって来る。だけどまあ、何か特別なことがあるわけでもなく、今日も今日とて部室で書類を捌きながらダラダラとしている。
「佐吉! 合同合宿だ!」
ダラダラとして……
「オイ佐吉! 聞いてんのか!?」
ダラダラ……
「さーきーちーっ! 返事しろよ! 聞いてんだろ!」
ああっ、もうっ! 無視できなくなったじゃないか! さよなら僕の平穏、こんにちは新たなトラブル。
大きな音を立てて部室にやってきたノブ様が、これまた大きな声で僕に寄ってきた。
「何? ノブ様、また何かやらかしたの?」
「なんでオレが問題を起こす前提なんだ!?」
ノブ様が悲鳴の様な叫びを上げるけれど、僕の知った事ではない。大体、ノブ様がアクションを起こすとトラブルがやって来るのがお約束なんだから。
しかし、合同合宿? 予算表にも書いてあったけれど……
「ノブ様、合同合宿って何をするの?」
「ああ、毎年のことなんだがな、日ノ本高校、西洋高校、東洋高校と、公立の安土高校の四校で沖縄に行くんだ!」
ノブ様が自信満々に合宿について説明する。沖縄に行くのか、すごいな。
そして……日ノ本高校、西洋高校、東洋高校に安土高校か……ん? アレっ!? 安土高校!?
「ノブ様! 僕、合宿には行きません!」
「へ? オイオイ、何だよ急に」
「僕、当日にお腹を壊す予定なので!」
「はあっ!? そりゃオマエ、サボりたいだけだろ!?」
クソッ、僕の渾身の言い訳がバレたか……。だけどなあ……安土高校か……。
「何だよオマエ、安土高校の連中と抗争したのか?」
ノブ様が心配してくれているけど、その心配は見当違いなんだよね。
「いや、抗争はしてないよ。ただ、僕の前の学校が安土高校なんだ」
「それなら別にいいじゃん。何が嫌なんだよ?」
ノブ様の言うように、普通ならいいんだけど……
「いやぁ、その……転校する時に、ロクに挨拶も出来てなくて……まあ、ハイ。僕が勝手に気まずくなってるだけです……」
そんなくだらない事でって一蹴されるかもだけど、僕としてはそこそこ重要な理由。もし、何も言わずに転校したせいで嫌われたら、と思うとなぁ。
「んなの、オマエが勝手に思い込んでるだけじゃん」
「うぅ……そうなんだけどさ……」
ノブ様の言う事は正しいんだけど、前世の時の様に、同じ時を共有した仲間に嫌われるのは嫌だ。もう、あんな思いはしたくない。
「なあ、佐吉……いや、三成。誰だって、嫌われるのは嫌だ。だけどさ、嫌われているだけなら、関係の修復も不可能じゃねぇ。聞いたことあるだろ? 『好きの反対は無関心』ってさ。ちょっとでいいから、頑張ってみねぇか?」
「ノブ様……」
「大丈夫。何かあっても、オレらがいるじゃん。何なら、オマエの事は治部が守るだろ」
みんなが居る、か……。少しだけ、頑張ってみようかな? なんだか、今日のノブ様は、笑顔が眩しいなぁ。




