35話 片付け
「いっ石田君、大丈夫ですか?」
「……泰時先輩?」
本日三度目の気絶から意識が戻ると、朝にも見た天井……ではなく、文芸部の北条泰時先輩の顔だった。
「……私も……居るぞ……」
死角から治部様まで出てきた。……んん? 治部様!?
「はぁっ!? 何で治部様が!?」
「……現実世界でも……お前を守る為に……顕現……した……」
「そして、怪我の救護係の手伝いを僕と一緒にしていたんです」
そうだったのか。それにしても、何か、忘れている様な……ああっ!
「そうだ! 閉会式! 今、どうなってます!?」
「ひっ!? いっ今はもう、閉会式は終わって、片付けをしていますよ」
「教えてくれてありがとう! それじゃ僕、もう行きます!」
「ええ〜!? もうちょっと安静にしててくださいよぉ〜」
先輩の静止を振り切って走り出す。安静にしなきゃいけない事はわかっているけれど、みんなが片付けをしているのに僕だけぐうたら寝ていられない!
「あっ、居た居た! 吉継! 左近! 今、どんな感じ? 結果はどうだった?」
「三成!? もう起きていいのか? 片付けはまァ後少しだが……」
「結果はですね、なんと優勝です! それに、三成様は義経殿と二人でMVP賞獲得です!」
「MVP? 僕が?」
僕は、気絶してばかりだった気がするけれど……。
「そも、あの合戦に勝てたのは、三成が盤面を整えたからだ。お前の助力無くして、優勝は不可能だった」
「でも、僕は治部様に助けられていなかったら……」
「その『治部様』は日ノ本高校の生徒じゃないでしょう? それなら、三成様がMVPですよ! 学園の決定なんで、ね!」
「……はぁい」
うぅ……それなら家に帰ってから治部様に感謝を伝えなきゃ。それにしても、MVPかぁ……前までの学校では考えられなかったなぁ。公立学校は能力の使用、原則禁止だし。
「ああ、そうだ。三成様は今日の夕方に後夜祭があるって聞いてます?」
「後夜祭? いや、初耳だね。今までの学校では無かったし、ずっとマンガの中の行事だと思ってた」
「そうかそうか、じゃあ三成は、僕らと後夜祭の準備をしようか」
「うん!」
何か、吉継の笑顔がいつも以上に怖いけど……気のせいか。後夜祭、楽しみだなぁ。
準備について吉継と左近に聞くと、グラウンドの整備とキャンプファイアーの用意だけでいいらしい。それなら楽だし、僕にもできそうだ、とグラウンドに来たけれど……。
「先ずはだな、三成。鬼灯と彼岸花の撤去をしようか」
グラウンド一面の左近花に鬼灯。吉継の笑顔がいつも以上に怖かった理由はコレか……!
「ひぇっ、僕、やっぱり腹痛が痛くなってきたなぁ!」
「三成様、それを言うなら『腹が痛くなった』です。それに、そもそも三成様は腹痛で倒れた訳じゃないでしょ」
ヤバい。僕の能力で出したモノは僕じゃないと片付けられないんだ! コレ、とんでもない重労働じゃないか!
「にっ、逃げるが勝ちだッ!」
「あっコラ! 逃げるで無いわ!」
これは逃げなきゃ。僕、体力無いんだもん。こんなの、やってられない!
この後すぐに捕まったし、何なら準備が終わった頃には息も絶え絶えになっていた事は言うまでもない。




