27話 PTA綱引き
先の借りモノ競争が終わって、玉入れ、1000m走、騎馬戦があった。僕は玉入れに参加したけれど、周りの全力具合がすごくて、正直、気圧されていた。秀吉様達の助けもあって、なんとか一位を取る事ができたけれど、また来年もあると思うと気が重い。
そして、騎馬戦の時は卒倒するかと思った。だって、小学校の頃にやった騎馬戦と違って、本物の馬を使っていたのだから! 本物の馬を使っているだけあって、騎馬戦は乗馬の得意なメンバーが圧倒していた。
将門公の居るオカルト研究部と武田信玄公の居る野ッカー部の圧勝だった騎馬戦も終わって、今度はPTA綱引きだ。PTAの方々や卒業生達の参加する綱引きは、勝ったチームにSAWAYAMAモールと大友百貨店の商品券が贈呈される為に、奥様方の気合いの入り様が少し怖い。
「みっちゃーん! うたちゃーん! 見ていてねー! お兄ちゃん、頑張るよー!」
恥ずかしいな、オイ! うたも、和歌同好会のスペースで羞恥から顔を真っ赤にして震えている。兄様は本当にこちらの気持ちも考えて欲しい。
「三成、うた! 父も居るぞぉ!」
はぁ!? なんで居るんだよ、父上は! 景品はウチの企業の商品券だから、勝っても意味がないのに!
「グルルぅ、ガウ、ガオゥ(そりゃ三成、お前と妹にいい所を見せたいんだろ)」
「清正? 正則、清正はなんて?」
「ああ、お前の兄ちゃんと親父さんは、お前とお前の妹に、いい所を見せたいんじゃ無いか。だとよ」
「……なるほど。そういう見方もあるのか。こういった種目って景品目当ての人しか居ないって思ってた」
そうか。兄様と父上は、僕達にかっこいい所を見せたかったのか。前世で仲の良くなかった面々と改めて話してみると、新しいものの見方が見つかってそれなりに楽しいな。でも、それはそれとして、人前で大声でアピールされるのは恥ずかしい。
「おっ、反抗期か?」
「はっ? そんなわけ無いだろ、バカノリ」
「おぉん? 馬鹿っていう方が馬鹿なんだぞ、馬鹿成」
反抗期とか、そんな事はないはずだ。多分。
目を離している内に綱引きが始まっていた。アナウンスを聞いたところ、チーム石田対チーム大友の構図になっているらしい。父上達も大友殿も気合い充分だ。
「へぇ。正継も正澄も、中々やるじゃないかい。大友チームは力自慢が多い印象があるのに」
「あっ、ありがとうございます。ヒデ様!」
僕の家族を秀吉様に誉めていただけると、とても嬉しい。それに、大友チームに比べて力のある男性の少ない石田チームが健闘している。あんなにも頑張っている様を見ていると、僕も応援したくなる。
「兄様、父上! 勝ったら、僕とうたが、今度の土曜日に、お二人にお弁当を作るよ!」
応援は、こんな風でいいのだろうか? 正しい応援の仕方はあまり分からないけれど、石田チームが大友チームを押してきているから良しとしよう。
お弁当の具材はどうしようかな。また後で、うたに相談しなくては!
僕の応援の甲斐もあって、父上達のチームが勝つのは言うまでもない。
――
今回の初出人物
武田信玄
甲州を治めていた戦国武将。武田の騎馬隊で有名。
野ッカー部の部員。
実家が乗馬クラブの経営をしている。
SAWAYAMAモール
名前の由来は、石田三成の所領の佐和山とショッピングモール。
特に米が美味いと評判。
大友百貨店
大友宗麟の実家が経営している百貨店。
海外からの輸入品でこの店に無いものは存在しないのだとか。




