24話 準備(後)
多少、トラブルはあったものの、無事に備品の準備が終わった僕達は、合戦用の弁当の準備の手伝いに向かった。
調理室では、クッキング同好会のみんなと吉宗、信長様達が居た。ちなみに、信繁は真田殿と別の所に手伝いに行った。ダークマター製造兄弟が居なくなった事に安心したのは僕だけでは無いはずだ。
弁当作りの手伝いとは言うものの、僕自身は料理をしたことが無いから野菜や果物の提供を担当することになった。
……さて、どんな野菜を出すか。普通のものを出しても面白くないしなぁ。歌うピーマン、踊るニンジン、茎が無限に伸び続けるジャガイモなんかも面白いかな。
「オイッ! 石田! おまっ、聞いてんのか! 返事しろよ、石田!」
「石田様! 前ぇ向かんかい!」
「ふぇっ!? えっ、はっ!? 何でみんな、そんな愉快な事になってんの?」
「オマエのせいだろッ!」
怒鳴り声に顔を上げると、伊達殿達がジャガイモの茎に絡まっていた。忙しい時に何を遊んでいるんだ、と思ったけれど、僕のせいらしい。無意識のうちに能力を使っていたみたいだ。申し訳ない。
「すぐに解くから、じっとしててね! ……まあ、細切れになりたいなら別にいいんだけど」
「待て待て待て! 一体、何をするつもりなんだ!? 石田!? 石田さーん!?」
「それじゃあ、行きます。……ハッ!」
僕が包丁を構えてみんなに絡まっていた茎を切ると、全員がその場にへたり込んだ。信長様達も顔が青ざめているけれど、何でだ?
「よっ、酔った……気持ち悪い……」
「つーか、切り方コエーよ……」
「えー……えっと、大丈夫?」
「誰のせいだと……! ハァ、まあ、大丈夫だ。うん」
少し釈然としないところがあるけれど、本人が大丈夫って言ってるし、いいかな。さあ、気持ちを切り替えて、今度はちゃんと普通の野菜を出そう。
おかずを粗方作り終えて、今度はおにぎり作りに作業が移る。今回の米は吉宗の能力で出したモノらしい。吉宗の能力は、なんだか親近感があって、僕は好きだ。
「そういえば、おにぎりって、今作って大丈夫なの?」
「そこはアレ、ウチの能力『黄金の茶室』で保管するさかい、おにぎり程度なら問題ありませんよ」
そうなのか。保管ができる能力って便利だよね。他の人の能力は、あまり見たことがないから、利休殿の能力の出し方は少し気になる。
「ねえ、利休殿。利休殿の能力、見てみたいな」
「おお、ええですよ。じゃあ、そろそろ量溜まってきましたし、やりますで……出てきぃ! 『黄金の茶室』!」
利休殿が両手を挙げて大声で宣言すると、外も中も黄金で、目が潰れそうな程の輝きを放つ茶室が現れた。
「うわっ、眩しい! でも、すごいな。物を出すタイプの能力ってコントロール、難しかったんじゃない? 僕も、コツを掴むまでかなりかかったし……」
転生能力は、どんな能力でも扱いが難しいけれど、僕や利休殿みたいに、物理法則を無視した召喚をするタイプは、慣れるまで相当な時間がかかるはずだ。それでも、利休殿は、そんな事はないと言うように笑っていた。
やっぱり、みんなすごいや。僕は、一応安定して能力を使うことが出来ているけれど、これが全力とは言い切れない気がするから。でも、今は考えるべきことはコレじゃない。明日、どうやって頼朝公をぶっ飛ばすかだ!




