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日ノ本高校のミツナリ君  作者: GOAT
体育祭編
26/69

23話 準備(前)

 いよいよ明日は体育祭本番。今日は、午後の授業は中止して明日の準備だ。準備に関してはクラス単位で行動するらしく、僕のクラスは備品の取り出しと点検が担当だ。そして、クラスの中でも幾つかのグループに分かれて準備にあたる事になった。僕のグループは、僕と吉継、小西に伊達殿と信繁だ。


「じゃあ、俺らは第伍倉庫に行って障害物競走の障害物を運ぼうぜ!」

「第伍倉庫?」

「あァ、障害物競走に必要な物は全てそこにある」

「それでも、量が多すぎるから何往復もする必要があるんだ。筋トレになるぜ」

「オイ真田、その話はするんじゃにゃーよ。今から気が滅入ってくる、にゃ」


 説明をしてくれた吉継と小西が遠い目をしている。大抵の事は軽々とこなす信繁も筋トレになるって言っているし、どれだけキツいんだか。


 第伍倉庫のある校舎裏まで来ると、他の学年やクラスの人達が既に大勢来ていた。以前、テレビで見た満員電車のように大勢の人だと言うのに、『壱』と書かれた倉庫には誰も近づく素振りを見せない。体育祭に関係の無い物しか置いていないのだろうか?


「ねえ、吉継。あの『壱』って倉庫には、行かなくても大丈夫?」

「あ、あァ。大丈夫だ。行かなくていい。と言うか、行くな」

「えっ、そっそうなの?」

「そうだ。お前は好奇心が旺盛だから言っておこう。第壱倉庫には近づくな」

「そこまで言う?」


 吉継がここまで言うなんて……。心なしか、とても焦っているように見える。それでも、吉継は僕のためにならない事はしないから、僕も第壱倉庫の事は詮索しないでおこう。


 順番待ちをしていた僕達がようやく倉庫の中に入る番になった。倉庫の中は少し埃っぽく、狭すぎず広すぎず、と言った風だ。ただ、大きな備品が乱雑に立て掛けられていて、いつ崩れるかが心配だし、足場が不安だ。

 まずは、平均台を運び出す。平均台は全部で六つ必要らしく僕達で運ぶには、三往復しなければならない。信繁は伊達殿と運ぶため、僕は吉継、小西と運ぶ事になった。


「それじゃあ、持ち上げるよ……っ、お、思ったより重いな!? 何で作ったらこんなに重くなるの!?」

「いやぁ、俺らにも詳しい事は分からん、にゃ。ただ、西洋高校のヘパイストス先生が作ったって噂にゃあ」

「ヘパイストス先生って誰!?」

「あー、うん。また今度、一緒にギリシア神話を読もうか」


 吉継の言い方からすると、ギリシア神話に登場するらしい。……もしかして、神様か?


 平均台の重さに愚痴を言いながら運んで、残りはあと一つ。コレで最後だ。僕達が平均台を手にかけた時、入り口近くの木材やハシゴが立てかけてある場所で悲鳴が上がった。


「うっ、うわぁっ!?」


 大きな音を立てて何かが崩れ落ちた。吉継と小西と共に音がしたした方に向かうと、立てかけていた物が全て崩れて入り口を塞いでいた。そして、よく見ると、三年生が一人、足が木材の下敷きになっていた。


「大丈夫ですかっ!?」

「だっ、誰です!?」

「二年の石田といいます! 今、助けるので、動かないでください! 吉継、小西、手伝って!」


 僕が、対佐々木殿用に強化した左近花をジャッキ代わりにして木材を持ち上げるから、吉継達は先輩を助けて欲しい。と言うと、先輩が不思議そうに僕に聞いた。


「どっ、どうして僕を助けるんです? 僕、貴方達の嫌いな文芸部の副部長ですよ……?」

「それが、何なんです? 僕は、所属する部活で助ける人を選ぶほど、薄情者になった覚えはありません」

「フッ、それでこそ三成だ。そんなお前だからこそ、僕はお前と友なんだ」


 よっ、吉継は相変わらず恥ずかしい事をアッサリと言うなあ! 言葉を失っている先輩を無視して木材を持ち上げる。そうは言っても、あまり長時間持ち上げることは出来ないから、すぐに吉継達に先輩を引っ張り出してもらって、応急処置を施す。どれくらいの怪訝かは分からないけれど、これだと体育祭に出れそうに無いな。


 後から騒ぎを聞いて駆けつけた先生に先輩を預けて準備に戻ろうとすると、僕のクラスの分は、もう終わったらしい。僕達が運ぶ予定だった平均台も伊達殿と信繁が運んでくれていた。そして、準備が終わったクラスは、合戦用の弁当の準備に取り掛かるように指示がきた。


 信繁に料理をさせないように、頑張らないとなあ……。




――


今回の初出人物


 ヘパイストス

ギリシア神話における鍛治の神様。ゼウスとヘラの子。ヘーパイストスとも。

西洋高校の物理教師。


 北条泰時

御成敗式目を制定した鎌倉幕府の人。

文芸部の副部長。

気弱な性格。


 御成敗式目

鎌倉時代にできた武士の基本法。「源頼朝なら、この時、この様に対応した」が基になっている。

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