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幕間 石田三成
逃げる。
逃げる、逃げる、逃げる。
もう、どれだけ走ったかも分からない。
家で寝ていた筈なのに、気が付けば周りには何もない暗闇に立っていた。着ている物も、パジャマではなく前世で愛用していた着物だ。
後ろから、左右から、何かの声に追われる。所々聞き取れないが、何かに対する怨嗟の声だ。
「殺せ」
「殺せ……殺せ」
「石……成……」「……い……みだ」
「……ぶ様が、お怒りだ」
「じ……様が……いて……る」
「……を取れ」
もしかして、前世で僕が殺した人達の声かもしれない。だって、あれだけ殺して、あんなにも大きな戦を起こして、恨んでいる人は多い筈だ。それなのに、僕は、平和な現代で、のうのうと生きている。
これは、きっと過去からの僕に対する断罪だ。
「っ、うわぁっ!?」
着物に足を取られて転んでしまう。
後ろから追ってきた存在と対面して、僕は目を見開いた。
だって、彼は、薙刀を構える、感情の無い顔は、前世の、僕で。
「……見つけた……石田三成……を……殺す……」
僕を殺すのは、僕なのか。
迫り来る薙刀に目を閉じて、そこで、僕の意識が途絶えた。




