18話 野ッカー部
今日はESS部に次ぐ勢力の野ッカー部に見学に行く予定だ。とはいえ、部長の伊達殿と副部長の信繁は同じクラスだから、ホームルームの後に二人について行くことになった。
部室で体操服に着替えてグラウンドに出ると、そこでは既に野ッカー部員がドリブルの練習をしていた。
「そういえば、野ッカーって、何をする部活?」
僕が二人に一番聞きたかった事がこれだ。『野ッカー』と聞いたところで、何をするのかが全く想像がつかない。
「おう、いい質問だな! 野ッカーはな、キックベースの事だ!」
「それって、キックベース部でも良かったのでは?」
「それじゃあ面白くないだろ。ウチの一年坊も言ってたぜ。『面白き事も無き世を面白く』って」
誰だよ、その一年。そんなことしたらESS部並みの無法地帯じゃんか。
「それじゃ、やってみようぜ。三成殿はキックベースの経験はあるか?」
「一応、小学生の頃に。元々、僕は非転生者用の学校に通ってたし」
転生者用の学校と非転生者用の学校ではカリキュラムに大きな違いがあるらしい。なんでも、転生者用の学校だと、体育の授業は転生能力の制御訓練に重きを置くのだとか。
僕は、前年度までは非転生者用の学校に行っていたから、通常の体育の授業を受けた事がある。道徳と同じで僕の一番苦手な授業の一つだったけど。
「経験があるのか! それなら安心だな。オレら、説明は苦手だからさ」
「そうなんだ。でも僕、ルールはわかるけど、球技は全くできないよ?」
「大丈夫、大丈夫! オレらだって、非転生者の真似事やってるだけで詳しいことは、よくわかってねーし」
それはそれで問題しかない。そんなあやふやで今までよくやってこれたな? でもまあ、誰もよくわかってないなら、僕が大ポカやらかしても大丈夫かな。誰もわからないし。
「うーん、言いたいことは色々あるけど、まあいっか。やろうか、キックベース」
そして、僕が球技を克服するための練習台にしてやる。……お前も練習台にしてやろうか! なんてね。
「集合! お前ら! 今日は見学に来ているヤツも一緒にやるぞ!」
「アイツはキックベースをプレイした事があるらしいから遠慮はするなよ!」
伊達殿と信繁が説明をしている。よく見ると、部員の中に前世の顔見知りがいるな。向こうも僕に気がついて、驚いた顔をしている。よーし、ぎゃふんと言わせられるように頑張ろう!
この後、逆に僕の方がぎゃふんと言わされた。みんな強すぎじゃん。
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今回の初出人物
高杉晋作
幕末の頃に奇兵隊を作った人。創作界隈で人気。
野ッカー部の書記係。
キックベース部が野ッカー部になった戦犯。




