17話 マンガ研究部
僕達は調理室で利休殿の料理を食べている。さすが、クッキング同好会の部長。作る料理がとても美味しい。戦国の世にこれをやっていれば……とは思うものの、現代の料理の基礎は江戸時代に入ってからである事を思い出して、なんだかしょっぱい気持ちだ。
そうして雑談をしていると、急にドアがかなりの勢いで開けられた。入って来たのは小柄な少年で、入ってくるなり僕達がの方に詰め寄ってきた。
「お前さん! ……ふんふん、なるほど、なるほど」
「あの、えーー、貴方は、一体……?」
僕が困惑して問いかけると、彼は「今気づいた」といった様子で顔を上げた。
「おぉ! アッシとした事が名乗り忘れてござんした! アッシは平清盛。マンガ研究部の部長にござんす」
気軽にキヨと呼んでくだされ、と言うとキヨは少し離れて、スケッチブックと鉛筆を構えた。一体、何をするのかと考えていると、キヨから指示が飛んできた。
「お前さん! お前さんは吉継のそばに立って! 吉継はまず、えー……」
「キヨ! 僕は石田三成です!」
「三成! 三成の腰に手を添えてくだされ! そうしたら、空いてる方の手で、三成の手を持って一気に引き寄せる!」
「うわぁっ!?」
僕は吉継に抱きとめられる様な体勢になっていた。あわてて抜け出そうと足掻くけれど、吉継はびくともしない。相変わらず、吉継は馬鹿力だ。
「そうそう、そのままキープ! 吉継は、もっと欲をはらんだ目になって!」
そこで、ようやく吉継がキヨに抗議した。
「キヨ公、僕達はその様な関係ではないのだが。どちらかといえば親子、もしくは兄弟よ」
「えっ、吉継、そんな風に思ってたの?」
「何っ!? そうでござんしたか……」
僕としては誠に遺憾だけど、キヨは申し訳なさそうに納得して、もう、この体勢を解いてもいいと言ってくれた。そうして、元のイスに戻ろうとした時、吉継が僕の足につまずいて、僕を巻き込む形で転倒した。
「あいたっ!?」
「うわっ! すまない、三成!」
気がつくと、吉継が僕を押し倒した様な体勢になっていて、キヨが興奮した様子でスケッチを始めた。
「すまない! 今しばし、その体勢を保ってくだされ!」
吉継の腕が震えてきた頃に、キヨから、もう大丈夫、と声がかかった。吉継は腕が相当しんどかったのか、腕を振ってストレッチをしている。
キヨは満足げに頷いて「よーし、やっと脱稿できる!で、ござんす!」と叫んで去っていった。嵐のような人だな。
「……吉継、平家一門って、みんなキヨや将門公みたいに押しが強いの?」
「さァ、僕も三年とガッツリ交流がある訳ではないからなァ……」
少なくとも、今の僕から言えることは、もう、スケッチのモデルはこりごりだ!
――
今回の初出人物
平清盛
武士で初めて政権を担ったすごい人。半年間だけ都を兵庫県に移した事がある。
マンガ研究部の部長。
腐男子。




