12話 頼ること
さて、今日は土曜日。部活動のない完全な休みだ。何をやろうか? 最近は部活で忙しかったからなぁ。久しぶりにマングローブか左近花の品種改良をやろうかな。前回の合戦で、佐々木殿に簡単に突破されちゃったし。
何をやろうか考えていると勘兵衛が僕の部屋に来た。もしかして、僕の独り言がうるさかったのか?
「殿、島殿と蘆野、福島様がお見えですよ」
「ありがとう、勘兵衛。それにしても、珍しいメンツだなぁ。左近、吉継、軽介ならともかく、正則か」
「部屋にお通ししますか?」
「いや、僕が出るから、通さなくても構わない
……では、少し行ってきます」
玄関を出て、庭を抜けた先の門の前で三人が待っていた。本当に正則だ。珍しいな、明日は大雪か?
「オイ、三成。顔に出てるぞ。まあ、その、おはようさん」
「おはようございます、三成様」
「おはようございます! 今日も愛らしい魅力が素敵ですね、三成様!」
「おはようございます。それにしても、今日は一体、どうしたんです? 正則が二人といると聞いて驚きましたよ」
僕が聞くと正則は清正を出しながら、顔を顰めた。まさか、清正とケンカしたのか?
「清正を遊ばしてやりたいんだ。学校や公園だと、通報されるだろ。虎だし」
「ああ、僕らは中身を知っているから平気でも、他はそうとは限りませんしね」
「それで、広くて高い塀に囲まれた場所、という事で三成様の家に来ました!」
なるほど、僕の家ならそれなりに広い上に、虎がいても通報されることは無い。正則と清正も大変なんだなぁ。
それならば、と僕は四人を庭に案内する。庭は、僕が普段から能力の制御を練習するために使っているせいで、様々な種類の植物が生えている。虎の清正には、いいアスレチック道具になるだろう。
清正が走って行ったのを見届けると僕は左近に五人分のお茶とお菓子の用意を頼んだ。左近が家の中に戻ると、正則が眉をひそめながら詰め寄ってきた。……んん? 何でだ。今回は僕、何もしていないぞ?
「なあ、三成。お前、何で良い子ちゃんぶった話し方なんだよ。俺、前世の時みたいなバッサリした話し方の方が好きだ」
僕の核心を突く話で、少し動揺した。確かに、正則の言うように、今世の僕は、人前では猫をかぶっている。……だって、以前の僕のままだと、また、沢山の敵を作ってしまう。関ヶ原の二の舞はゴメンだ。
「お前が、関ヶ原の事がトラウマになってて、もう同じ轍を踏まないように気をつけてるのは知っている。けどさ、俺らって、そんなに頼りないか? 日ノ本高校はさ、お前みたいに前世がトラウマになってるヤツを手助けする役割もあるんだぜ? ……もっと、ワガママ言えよバカ佐吉」
「正則、お前……」
僕の事をよく見ている人って、結構いるんだな。勘兵衛も、僕の記憶が戻ってすぐに自然体でいてくれ、と僕に言った。もしかして、信長様が言っていた「もう少し砕けた態度をとれ」と言う部長命令は、この事を指していたのか?
本当に、みんなには敵わないや。どれだけ頑張って殻を作っても、すぐに殻の内側に来てしまう。でも、少しくらい、いいかな? 一人で頑張るのは、流石に疲れるよ。
「ありがとう、正則。癖になってるから、すぐには、できないけど、もっと、頼りたい、です……じゃない。頼る」
「応、頼れ頼れ! 今のお前なら、大丈夫だ!」
大丈夫と言ってもらえると心強い。ふふふ、それじゃあ、まずは清正に飛びつきに行こう。あの柔らかそうな毛並み、かなり気になってたいから。




