11話 遊園地
ESSの部員だけでなく、生徒会のメンバーもいる中で僕は言った。
「遊園地、行きません?」
今まで私用で部を動かすことを嫌っていた僕からこの言葉が出て驚いたみんなの顔は面白かった。
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「ねぇミツナリ、私も来てよかったの?」
マリーが怪訝な顔で言うのおかしな話ではない。そもそも僕は日ノ本高校のESS部と生徒会しか誘っていなかった。ただ、敬愛する友人にも楽しんでほしいと思ってマリーも呼んだのだ。
「大丈夫です。僕としてはより多くの意見が欲しかったので」
そして、ここはバサラーランド。石田財閥とオオトモコーポレーションの共同出資で作られた遊園地。今日はバサラーランドの開園の日だ。
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「――それでは、楽しんでいってください。あっそうそう、アンケートに答えてくださると、オマケで当園のマスコット・ブショー君のストラップとボールペンをプレゼントです!」
「つー訳だ。はしゃぐのもいいが、あんまり佐吉と宗麟に迷惑かけるんじゃねーぞ! 解散!」
僕と信長様が話し終えると自由行動を開始した。
さて、僕は誰とまわろうかな……
「石田君、僕と一緒にいかないかい?」
「何を言っているの、ミツナリは私とまわるのよ」
「……三成……行こう……」
うわー……いや、「うわー」じゃない。
三人とも、それぞれ一人ならいい友人なのに、いっぺんに来るとたまに面倒な事になるんだよなぁ……でも、できればみんなで行きたい。四人でまわった方がきっと楽しいから。
「えっと、僕は、三人と行きたい。です」
「え、ええ。かまわないわ。王妃たる者、心が広くなければいけないもの」
「うんうん、いいんじゃないかい? 偶には普段と違うことをしてみるのもいいよね、僕のやった乙巳の変みたいに!」
「……三成が、そうしたいなら……」
いっそ清々しい程に方向性がバラバラだな……まあ、楽しんだもの勝ちだし、いいかな。
「じゃあ、行きましょうか。僕、絶叫系に乗ってみたいです!」
「そ、そう……まあ、構わなくってよ……」
「あー……うん。うん……」
「……」
えっ、なんか微妙な顔。絶叫系ってそんなにヤバいの?
――
――ジェットコースター・双ヶ岡――
京都にある双ヶ岡をイメージしたジェットコースター。僕はジェットコースターに乗ったことが無いからわからないけれど、かなり易しめに作られているらしい。
「……あら……? 思ったよりもあっさりしてたわね……」
「……これなら……いける……」
マリーと家康が驚いた顔で呟いている。相当苦手なんだな、絶叫系。
「父上から聞いたのですが、このジェットコースターは初めて絶叫系に乗る人の入り口と、怖いのが苦手な人に向けたものなんだそうです」
「なるほど、どんな人にも楽しんでもらえるように、かい?」
「えぇ、もっと怖いものは別でありますし、誰かの嫌がる顔は見たくないというのが当園の目標なのだそうです」
だって遊園地はみんなの為にあるのだから。
僕がそう言うと副会長殿がそれはいいと笑っていた。
少し見ただけではあるけれど、僕は遊園地が好きだなぁ。遊園地には僕の理想、大一大万大吉が、みんなの幸せが、詰まっている気がした。
この後、ジェットコースターばかりを選んで三人に少し怒られたのはご愛嬌だ。
――
双ヶ岡
京都府京都市右京区にある標高116mの丘。と言うか、ほぼ山。
歩いていると、その辺に大量の古墳がある。
インドア派にはちょっとキツいけど景色は良好。




