10話 西洋高校
僕達二年生は今日、体育館に集まっている。なんでも、隣町の西洋高校との交流会の日なのだそう。
日ノ本高校が日本で生きた人の転生者が通うのと同じく、西洋高校は南蛮方面の人達が集まっているらしい。
「私は西洋高校のESS部部長、マリー・アントワネット。貴方、初めて見る顔ね。私に自己紹介してもよろしくってよ」
そして、僕らは向こうのESS部との交流が担当。なんだけど……部長のマリーさん、この前の厩戸王みたいでビックリした。
「ちょっと!? 聞いていて!?」
「はっハイ! 僕は石田三成。ESS部の会計係で前世は豊臣政権下で行政を担当していました!」
「何よ、ちゃんと聞いてるならすぐに答えなさいよ……まあいいわ。ミツナリ、ね。特別に私を『マリー』と呼んでもよくってよ」
んん? 懐かれた? 何で? なんか周りもザワついてるし……
「はあ……? まあ、よろしくです、マリー」
「……! ええ、よろしく、ミツナリ。……お前たちも挨拶なさい!」
マリーの指示で西洋高校のESS部のメンバーが自己紹介を始める。けど、人数が多くて一回じゃ覚えれそうにないな……
「よっ! 遅れてすまん! 寝過ごした!」
「……ノブ……遅い……」
交流会が始まって十分ほど経ってから信長様と秀吉様がきた。交通機関のトラブルならともかく、寝坊って……今回ばかりは流石に家康も怒っている。
「いや〜ごめんね〜今、どんな感じ?」
「これからがメインといった所です」
「久しぶりね、ヒデヨシにノブナガ。寝坊も偶にはいいけれど、自分の臣下の足を引っ張るなんて主君としてどうかしているんじゃなくって?」
「ああ、久しぶりだな、マリー王妃。一つ訂正しておくが、寝坊は俺たち個人の責任だ。臣下の足は引っ張っちゃいねぇよ」
ええっ!? なんかいきなり険悪ムードなんだけど!? 喧嘩を売ったりって怖いからやめとこうよ……
「佐吉、王妃と仲良くなったんだねぇ。予想通りではあるけれど思ったより打ち解けが早かったね」
「予想通り、ですか……?」
「そう、王妃と佐吉は似てるからねぇ」
似ている……? どういうことだ? 僕とマリーは、性格や価値観も何もかもが違うのに……
「今、どこが似てるんだって思った?」
わっ、さすが秀吉様。僕の考えを読んでいる。
「王妃と佐吉はねぇ、二人とも、国に、時代に殺された者同士なんだよ」
時代に殺された……? もしかして、関ヶ原か? 確かに、周りから見れば時代に殺されたと思ってもおかしくない。それに、僕としても豊臣を滅ぼす決定的なきっかけになってしまったと、変わりゆく時代に乗れなかったと今では少しトラウマになっている。
でも、僕は時代に殺されたとは思わない。僕は僕の出来る限りを尽くした。
それはマリーも同じだと思う。
「……ミツナリ、貴方よく考えてることがわかりやすいって言われない?」
「えっ? い、言われます、たぶん?」
「今、貴方、思いっきり顔に出ていてよ」
顔に、出ていてよ……?
出ていてよ!?
「……っ! わっ、忘れてください!」
「だぁ〜め! 私、貴方が私は時代に殺されたわけじゃ無いって思ってくれてそれなりに嬉しかったのよ? 私は私の思うように生きて、私の思うように死んだ。時代に弄ばれた哀れな女じゃなくってよ」
「マリー……」
「だから、貴方ももっと堂々としていなさい! 肝が座ってるのかヘタレなのかややこしいのよ!」
「おっ横暴です〜!」
痛い痛い! 思いっきりほっぺを引っ張らないで!
力強いな、この王妃サマ!
――
今回の初出人物
マリー・アントワネット
「パンが無ければブリオッシュを食べればいいじゃない」の人。
最近ではこの発言は後年の創作説が強いらしい。
ツンデレな西洋高校ESS部の部長。




