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"Ebi" aka Susumu Yokota
Zen
を 聴きながら
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「……は?」
……私は、とさっと軽い荷物を落とし、かろうじてスーツケースに身体を寄りかからせた。……玄関を開けた瞬間の衝撃に。
……私がこのような衝撃を受ける一週間前に話は遡る。……先ずはその話を聞いてほしい
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……エビと……喧嘩した。……些細なことなのだが……私が、……共食いをするエビの残虐性?に耐えきれなくなったから……というのが、……ことの発端だった。……悪いか?……私は繊細なんだ。……誰もしんじないけれど……。……そう、……当の本人も信じなかった。……本人っていうか、……エビだけど……しかも、エビ曰く、……エビは私の幻覚らしい……けれど……ああ、わけわからん。もう……限界だ!……と、なった私は家を……自分で契約した自分のワンルームを……飛び出した。……よく考えれば、……私の一応部屋であるはずの私のワンルームから喧嘩したとは言ったって、何故私がとびださんといけんのだ。……という思いは後から抱えたが……エビは、エビ曰く、……私の幻覚らしいし……幻覚は、……そもそも物体が存在しないのだから……出ていくことも出来ない……だから私が出るしかない……何とも理不尽な話だが……結局はそういった結論を私は、無意識に一瞬で行い、……飛び出したのだろうと、後から冷静になったとき自己分析したが……そもそも何故このような分析をしなければならんのか。……私は、理不尽さに頭を抱えたくなった。
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……諸々の経緯はそのような……感じで、私は、1週間程自らが契約したワンルームを自らの意思で飛び出し、近くのホテル暮らしをしたが、そんなに何泊も出来る筈もなく、……三日過ぎたあたりから、意地を張っていたが、……その内、何故私がこんな目に……という理不尽すぎる怒りを感じ始め、6日目の朝、このワンルームに帰ってきた……そして、玄関を開け、冒頭の言葉に戻る。
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「……は?」
とさっと、軽い荷物を私は落とす。足元はこわばっていた。
『おかえりー』
……一週間前と変わらぬエビが、……代り映えし過ぎた部屋の中で……軽く挨拶を返してきた。
「……ただいま」
……啞然としながらも、……律儀に挨拶を返してしまう私の真面目さを呪いたい。……理不尽な怒りをぶつける前に、あまりの衝撃に言葉をのんでしまった……私は、悪くない。……悪くない筈だ。
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……部屋は、防音仕様にシフトチェンジもとい、魔改造され……電子キーボードに……何かよくわからん機材に囲まれたエビが、おしゃれなヘッドホンを装着し、何かよく解らん機材を指で操作していた。
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「……は?」