97話・ロゼッタ、ついでだから換金しちゃうんだよ
うりうりっとキーリの足をツンツンしていじめる悪役令嬢ロゼッタさんなんだよ。
まったく、SAN値直葬は駄目だってあれほど言ったじゃん。え? 言ってない?
じゃあ今言うんだよ。
ギルド長がギルド前で反省会はもういいから、というのでとりあえずキーリを立たせる。
足が痺れて立てないみたいだけど肩貸して無理矢理歩かせる。
このぐらいの罰は与えないと駄目なんだよ。
キーリが無理無理無理と涙目で首横に振ってるけど気にせず歩かせるんだよ。
「に゛ゃああぁぁぁぁぁぁぁ―――――っ!?」
「あ、あのバケモノが泣いて謝ってやがる……」
「あれが……S級冒険者……」
ギルドに入るとなぜか皆私達から距離をとるんだよ?
キーリったら暴れ過ぎだよもー。
まったく何したらこうなるの。いや、一応あらましは聞いたけども。
あ、ギルド長さん、折角だからゴブリン討伐の時に貰ったお宝を売りつけちゃうんだよ。ギルド長室でいいかね?
「あー、はい、よろしくお願いします」
なんで丁寧語になってるのかな? 謎である。
ギルド長室へとやってくると、ようやくキーリを解放してあげる。
へなへなと倒れ込むキーリ。なぜか恍惚とした顔でこれはこれで……とかびっくんびっくん蠢いてるけど、放置で良いかな?
「それで、何を売りに来たんだ? まさかまだゴブリンキング級のアイテムでも売る気か?」
「ゴブリンが溜めてた財宝を売りたいんだよ。金貨とかあっていくらするか分からないし、知り合いに聞いてみたらなんかすっごいのがあるみたいだから」
「そ、そうか、そうなると、売れるまで金を出せんかもしれんぞ」
「そこは理解してるんだよ、その内お店立てる予定だからその資金さえあれば問題無いんだよ」
「ああ、そう言うことなら後々の支払いということで出来そうだな。出してくれ」
んじゃー、まずは。どっかの貴族が持ってそうなジュエルブレイドをば。
「こりゃのっけから凄いのが出て来たな」
「おそらくだけど商人がゴブリンに襲われてたと思われるんだよ。どっかの貴族が頼んでたかもしれないから当たっといてくれると恩を売れたりするかも?」
「分かった。できそうなら当ってみるが、基本、競に掛けることになると思うぞ」
「多分貴族が買ってくからかなりな金額になりそうなんだよ」
「ああ、多分これだけでも一軒立つだろうな、店」
でも売りたいモノはまだまだあるのでアイテムボックスから次を取り出す。
「大量のライオネル金貨」
「それは普通に使えるから売れんだろ」
ですよねー。んじゃーコスタロカ金貨。
「コスタロカのもあるのか。なら換金して振り込んでおこう。手数料は貰うぞ?」
「それで済むならよろしくお願いしますわ」
次は……エグエール金貨だっけ?
「エグエールのものまであるのか。わかった。これも換金しておく」
最後にレグシオーネ白金貨だー。
「ぶふぉっ!?」
デスクに置かれたレグシオーネ白金貨を見て両目を飛ばすほどに驚くギルド長。
「こ、こここ、これは、本物、か?」
やっぱりすごい価値のある白金貨っぽい。
「れ、レグシオーネ白金貨だと? 博物館、いや、国宝級の金貨が、こ、こんなに?」
全部で十個出て来たんだよ。
「き、君は国でも買うつもりか!?」
「あー、やっぱりこれでも国が買えちゃうのかぁ」
「物凄いのが来るだろうとは覚悟していたが、こんなものが出て来るとは……さすがと言うべきか、予想の斜め上を天元突破するなお嬢様……ん? これ、でも?」
どんな評価なんだよ。
「さすがにこれを売ることは不可能だな。王都の博物館に寄贈するか、国王に売りつけて換金するくらいしか使い道がないぞ。あるいは、買うか、国?」
とりあえずアイテムボックスの肥やし確定かなぁ。
その内使うかもしれないし。
仕方ないので回収回収。ギルド長が名残惜しそうに白金貨の消えた虚空に手を差し伸べる。
あげないよ?
「あ、あとレオスの短剣が大量にあったんだよ」
「二束三文で売れるもんは下の買取所を使ってくれ」
「えー。もー、仕方ないなぁ」
「いや、最初に言ったよね。普通に買い取り難しい物を買い取るよって」
「だってただの令嬢ですよ。どれがキワモノかわかりませんよ。ほら、こんなの売っちゃっていいんですか?」
アイテムボックスからキーリの触手を一本取り出す。
活きがいいのでビチビチビチッと蠢きだす。
タコ焼きする時用に貰ったのが一本余っちゃったんだよ。
「これは……ぶふっ!? じゃ、邪神の触手なんざ下で売れるかッ!? 世界中が震撼するわっ」
「じゃー何が売れるのっ! ゴブリンの腰布っ!?」
「なんで最下級か最上位しかないんだよ!? 中くらいは無いのか中くらいは!」
「えーっと、ケルベロスの牙?」
「だぁかぁらぁっ! なんで最上級なんだよっ! あ、いや、S級だから問題無いのか?」
「ね。判断が難しいんだよ」
「ああもう、分かった。とりあえず出すだけだしてくれ。こっちで買い取るべきなのかどうか判断する。うん、もう、疲れた……」
ソファに背もたれぐたぁっと力を抜くギルド長。虚空を見上げてもう正気度が底を付いたような顔をしている。
おっと、触手仕舞っとこう。これのせいかもしれないし。