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95話・キーリクライク、騒ぎ起こしたつもりはないんよ?

 ウチ、キーリクライク・プライダルは主様からお前は邪魔や、外でとりぃ。と言われて平民街へと追いだされた。

 まぁ、言い方はちょっと毒あるように言うたけど、平民街に来た理由は似たようなもんやからええやろ。別に誰かに伝える訳でもないし。


 平民街にやって来る。

 一度主様と来たので冒険者ギルドの場所は分かっとる。

 冒険者ギルドは随分きったない場所に存在しとん。

 何しろ馬の糞がそこかしこに落ちとるから、臭いが凄いんよ。

 道端に普通に糞落としとる馬もおったし、ソレを踏みつけながら歩く馬車もおった。

 やから普通の道は糞だらけ。

 歩くのもちょっと嫌なので、ウチは触手で浮き上がって移動することにしとる。

 一応見栄えも考えて足裏を持ち上げるように影から出現させとるから人が見ても歩いてるだけとそんな変わらん筈やで。


 冒険者ギルドはウチから見て左側に馬車の停留所がある巨大施設で、入口前に階段が三段ほどあり、そこで皆馬糞を落とすように靴裏を段の角にすりつけてから上がっとる。

 うん、そのせいで滅茶苦茶汚いわあの階段。

 主様もあまりの惨状に常時浮遊状態で移動してるからなぁ、最近。

 踏みしめとるように見せて数センチ浮いとるんよ。


 触手を上手く使って階段を昇ったウチはギルド内へとやって来る。

 あ、あそこにおりはる人間はんはペレーラとかいう人やな。

 丁度ええからあの人に……あかんなぁ。別の人間に先越されてもうた。


 あ、あっちのはフレシカさんとかいう優しい受付嬢やない? 主様があの人も頼りになるいうてはったよ。残念ながら大盛況やわぁ。

 その隣んは、サテラやね。あの受付嬢にだけは絶対近づくな言われとるからあの娘は避けよか。

 となると、空いとるんは……


「おじさん、ギルド長に会いたいんやけど、入ってええ?」


「あん? アポかなんか取ってあんのか?」


「ペレーラさんいう人に言えば案内してくれる言うててんけど、今忙しゅうしとってな」


「ペレーラか、いや、でも俺にゃそんな権限ねーからなぁ。何の用事があんだ?」


「買い取りや。ギルド長さんが買い取ってくれる言うてん」


「買い取りならここのカウンターでもやってんぜ? ギルドカード見せてみ」


 ええんかなぁ? ま、ええか。ここでも買い取り出来るんやし、問題ないやろ。どうせギルドに買い取りされんのやから。


「……あ?」


 ギルドカードを見せる。すると何故かウチとカードを見比べ始めた。

 なんやのん? そんな、ンなバカな? みたいな顔して。


「魔族の嬢ちゃん。Sランク、なのか?」


「ランク? それはよく分かっとらんのよ。ギルド長さんにカード貰ったんも少し前やし、依頼うけたりするんは今回が初めてや」


 せっかくやし、適当に薬草採取でもしてきなさい。って言われてるから呼ばれよかなぁ思ってるんよ。


「どういうこったよ? ま、まぁいい。とりあえず買い取る物体はなんだ?」


「あ、これやこれ」


 と、お使いと称して主様に貰ったなんかごっつい剣となんか豪華な王冠をアイテムボックスから取り出しカウンターに乗せる。

 主様が使っとった魔法便利そうやったからいくつか教わったんよ。アイテムボックスもその一つや。


「へぇ、でっかい剣だな。どれどれ鑑定……はぁッ!? ゴブリンキングの大剣んっ!? ゴブリンキングの王冠んッ!?」


 思わず、と大声で叫ぶおじさん。

 その声にゴブリンキング? と周囲の冒険者がざわつき出す。

 騒ぎを聞いたペレーラさんが慌ててこちらにやってきた。

 どないしたん、そんな慌てて。


「ちょ、ちょっとこちらに来ていただけますか、ええ、ギルド長室に。ジーニアス、それ、渡しなさい。こっちで処理するわ」


「え? お、おう?」


 王冠を奪い取るペレーラさん。さすがに剣は重過ぎて持てれんかぁ。人間はひ弱やなぁ、でも主様普通に持っとったんよ? ウチの主様本当に人間やろか?

 剣はウチが触手使ってジーニアスいうおじさんから奪い取る。そっちのギルド証もや、返したってや。


 んで、やってきたギルド長室、ギルド長のライゼリュートさんがなんやぁ頭抱えていらっしゃった。

 騒ぎを聞いて沈痛な面持ちや。

 ギルド長はいろいろ大変そうやなぁ。


「君のせいなんだがね。はぁ。なぜ下の買い取り所でこんなもの売ろうとしたんだ?」


「やって、ペレーラさん忙しそうやったし、話しかけたおじさんがここで売りゃぁいいって言うてはったし」


「あのお嬢様はなんだって邪神様だけを使わしたのかね? 人間の常識通じねェの分かってねェのか!?」


 両手で頭抱えて机に頭ごつごつぶつけ出したんだやけど、どないしたん? 


「今回はジーニアスに伝えていなかった私のミスです。申し訳ございません」


「いや、ペレーラは悪くは無い。しかし、これで近場にゴブリンキングが出て狩られたことが知れ渡るぞ。クソ、処理が面倒なんだよ。ゴブリンの巣捜索依頼もまだ話聞いてねぇのに、どうすんだよ。報告書とかまだ作れねぇって。邪神様ァッ、あのお嬢は今日来ないのか!?」


「友達来るいうから来れんくなったらしいわ。やからウチにこれ換金しといてぇってお使い頼まれてん」


「何してくれてんだちくしょーっ!?」


 おかしいなぁ、ウチまだ邪神としての本性だしてないから正気度減らしたりせんはずやのに、正気度無くしたような気の振れ具合やなぁ。

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