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941話、ロゼッタ、なんで私に言うんだよ?

「ごきげんよう、なんだよ?」


 ライオネル王国でいつものように学校に出席していた私だったのだけど、なぜかメルクナードの使者とかいう人が至急メルクナードに来てほしい。とか言いだしてちょっと困った。

 それでもまぁ陛下に尋ねたらむしろ気になるから行って来てくれ切実に。と言われてしまったので来たんだよ。


 うん、メルクナードの会議室である。

 城にやってきたらここに通されました。

 全く、一学生に王城に来いとは恐ろしい国なんだよ。


「ロゼッタ嬢、よく来てくれた」


「それで、エルヴィル王子、何の用でございましょう?」


「ああ、それなんだが……彼女を」


 護衛にやって来ていた兵士達が部屋の外へと向い、一人の女性を連れてくる。

 きらびやかなドレスをまとった若い女性だ。

 十代後半くらいかな?


「ご、ごきげんよう」


「あ、はい、ごきげんよう。こちらの可愛らしいお嬢さんはどちら様?」


「ヘルツヴァルデの王女だ。この度の講和条約締結のために賠償の一部として送られてきた。国庫の宝物を貰おうと思っていたのだが、思いのほか兵士の返還資金を取り過ぎたようで、品物の代わりに送られてきたのだ」


 おおぅ。ヘルツヴァルデ、下手したら国が滅ぶくらいに敗戦のツケを払わされてるのか。


「いや、これでもだいぶ譲歩したんだぞ? 相手の王も捕まえたのに、向こうが自分が王だからソイツは一般人だって言って来て、それを了解して解放資金も減らしたし、とはいえ……一万弱の兵士捕まえてしまったからな。その返還資金だけでヘルツヴァルデの資金が尽きたらしい」


 そりゃ一万もの兵士返還要求に応じたら国傾くか。

 私なら一人アムリタ一本とかエリクシル一本とかで物品交換出来るんだけどなぁ。

 さすがに中堅国家には厳しいか。

 戦争するための資金も使った後だから余計にダメージが来たんだろうなぁ。


「なるほど、ヘルツヴァルデは火の車ってことかぁ。で? 私はなんで呼ばれたのかしら?」


「あ、あの、兄を……兄を助けてくださいッ」


「……はい?」


「あー、要訳すると、だな。俺達が勝ち過ぎちまったんだ。相手の国の王様含めて一万もの兵を殺すことなく捕縛しちまったからな。その全てを返還するために多額の賠償金をヘルツヴァルデが支払うことになった。ただ、王がこちら側にいるだろ? その為にこちらからの賠償請求は全て通さざるを得ない状況だったんだ、ヘルツヴァルデは」


 まぁ、それは分からんでもないなぁ。

 残された王位継承者とか絶望モノだよね?

 既に国を手放すしか方法が無いんだし。


「で、それを回避するためにコイツの兄が王位を簒奪して自分が王になることで講和を結ぼうとして来たんだ」


「うわぉ、それはまた思いきった奴が居たものね。確かに王が別にいるなら捕まった王の価値はかなり下がるし、場合によっては殺してくれてもいいんだよ? とか言えちゃうわけか」


「とはいえ、息子だからな。必死に国と父を守るために交渉してきたよ。私達としてもライオネルの御蔭で勝てたようなものだしな。相手の想いも分からんでもなかった。特に母上からの教育を受けたゆえにその辺りの苦労が良く分かってな。だから、このような講和条約で手を打った」


 あら、見ていいのこれ? 重要書類じゃない。

 兵士達の返還にこの資金か。

 それで、慰謝料としてこの品名と商業条約の締結。すっごいヘルツヴァルデに不利ね。

 さらに宝物庫の全てを差し出せという要求に、ああ、ここに王女をねじ込むことで回避したのかぁ。

 でも、この娘にこの宝物分の価値、あるかなぁ?

 どうやらメルクナードもかなり譲歩したらしい。

 ヘルツヴァルデの簒奪王さんの苦労に同情したようだ。


「それで、王であるヘルツヴァルデの王に無断で簒奪したらしくてな。戻ってきた王が国政を取り仕切るにあたって簒奪王を大罪人にせざるを得ないらしい」


「えー、なぁなぁでいいじゃん」


「いや、国を動かすうえでなぁなぁで済ますようになれば国が割れちまうだろ、さすがにそれは俺でも分かるぞ?」


「理由は明白なんだから皆に彼の御蔭で国無事だったよ。とか大々的にあぴっちゃえばむしろ国民的スター簒奪王爆誕、みたいな?」


「よくわからんが、ヘルツヴァルデの国柄ではそういう祭り的なモノはしないと思うぞ」


「兄は、頭が固いんです。こうと決めたら自分が不利益を被っても実行するような人で。今回も自分のせいだから自分が責任を取るべきだって。私にも、自分を恨めって。確かに、世間知らずで馬鹿な男の嫁にされるのは絶望的でしたけど」


「おい!?」


「だ、だって事実でしょ。エルったらお母様との勉強が始まってなければ私だって一度抱いて大臣達に下げ渡す気だったでしょうが」


「そ、それは……そ、それだってヘルツヴァルデの作戦だろ」


「何言ってるのよ、そこはこの国の大臣達の言葉を鵜呑みにしただけじゃないっ」


 ……なんだろう、意外とバカップルに見えてくるぞこの二人。


「でもよかったわ。エルがちゃんと常識持っててくれて」


「あ、あたりまえだろう。全く、王を継ぐのだから常識くらい勉強するさ」


 つまり、物を知らないお馬鹿が結婚相手になったと絶望してやってくれば意外とまともな思考を持ってて、ギャップか何かで惚れた、と?

 ごちそうさまです、爆発しやがってくださいコノヤロー。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] エルヴィル王子とゼルディス王子が悪い訳では無いんだけど正直プレッツィル殿下と比べると格で負け過ぎていて食指が動かんでござるです。でもエルヴィル王子とゼルディス王子悪い訳じゃ無いんだよね…
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