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94話・フレデリカ、魔法好きに悪い人はいないっ

「そ、そうか……」


「そうなのですっ」


 ロゼッタさんの家から出た私、フレデリカは、一路、テリテュリー家を訪れていた。

 一緒に来たケリーアは私の隣で紅茶を飲みながらジト目になっている。

 私の対面に座るのは長髪の少年。切れ長の目がケリーア的には知的というより冷酷そう。ということだけど、それならロゼッタさんも目元がどうみても、とくに笑うと極悪人のような……げふんげふん。


 この美少年が私の婚約者、ユルゲン・テリテュリー。伯爵令息です。

 降嫁じゃないの、婿養子なの。学園卒業と同時に公王になるんですよ。

 今日尋ねて来たのは、ロゼッタさんの所に友人として招かれたことをお話したくて立ち寄りました。

 最初は気乗りしませんでしたが、ロゼッタさんはそこまで我儘な人ではなく、魔法に造詣深いとても素敵な人でした。ええ、是非友達に成りたく思います。

 なんたって魔法好きに悪人などおりませんものっ。


「ケリーアさん。どうやらフレデリカの悪い病気が発動しているようだが……」


「悪いとはなんです。私はロゼッタさんの素晴らしさをですね」


「私としてはデリーのことを悪く言いたくないので言葉は差し控えたく」


「えぇ!?」


 ケリーアまで私が変な病に罹ってるというの!?


「デリーが魔法や本が好きなのは知っているよ。しかし、ロゼッタ嬢か。噂ではかなり我儘だと聞いていたが、デリーの話からするとその噂が嘘だったようだね。しかし、噂というのは無い場所からはあまり立たないはずなんだが、誰かがロゼッタ嬢を悪者にしようとしている……?」


 顎に手を当て考える姿も素敵ですユルゲン様。


「ケリーアさん、君はどう思った?」


「そうね。腹の立つ相手だったわ。私が礼儀を知らないかのようにっああ、今思い出しても腹の立つッ、デリーの目の前であんな恥辱をっ」


「あはは、泣いちゃったものね。でも最初に無礼なことしたのはケリーだよ?」


「確かに、ケリーアさんの行動はあまりほめられたことではないね」


「うぐっ」


「これを機に令嬢としての自覚を持って貰いたいね。その方がデリーにとっても良さそうだ」


「……礼儀とかダンスって苦手なのよ」


 そっぽ向いて罰が悪そうに告げるケリーア。

 ふふ、可愛い。

 ケリーアは苦手なモノ多いよね。確かおばけとかも怖いんだっけ? レイスは大丈夫なのに。


「ま、まぁ、そこは置いておくとしても、よ。意外とデリーを歓待する気だったのは確かね」


「へぇ、何故そう思ったんだい?」


「ティータイムのお菓子よ。凄く珍しくて美味しいものだったわ。私が来たことで慌てて追加してたようだし、最初の自分の分を私に譲ってたもの。意地の悪い侯爵令嬢だったら、アレを私に出すことなく自分で食べてたわね」


「おお、珍しくちゃんと見ていたんだね」


「失敬なッ! 私だってちゃんと観察してるわよ、ね、デリー」


「え? えー……うん?」


「デリーも小首傾げてるぞ」


「なんでよっ!?」


 だって、ケリーアってば観察してるように思えないもの。

 私てっきり感覚でいけすかない~って言ってるんだと思ってた。

 ちゃんと認める所は認められるんだね。ちょっと見なおしちゃった。


「ひどっ、デリーまで私をバカみたいに思ってたの!?」


「思ってないよ? ケリーはただちょっと考え足らずで考える前に手が出るだけだもの、ねぇ」


「やっぱり思ってるんじゃん!」


 半泣きで私の肩を揺するケリーア。

 ホントケリーアは可愛いなぁ。

 思わずくすくす笑ってみるが、多分二人とも私が笑ってるって分かってないよね?


「しかし、ロゼッタ嬢か。デリー、またロゼッタ嬢の所へ行くのかい?」


「あ、うん。お父様の許可を得てからだけど。魔法の先生に一緒に魔法を習おうって言ってくれたの」


「ああ、魔法、な。デリーは魔法が好きだものな。そうか。魔法、か」


「それも不思議なのよね。あのロゼッタ。炎の魔法を使って見せたんだけど、青くなったり緑になったり、炎なのに炎じゃなかったのよ。あれ、本当に魔法で出来るものなの?」


「炎が青や緑に? 赤やオレンジ、黄色ではなく?」


「いろんな色に変わったのよ。凄いのよロゼッタさんは。ああ、あの魔法も教えてくれるのかしら? 今から楽しみだわっ」


 二人が凄く残念な娘を見る眼をしてるけど気にしないわ。

 だって不思議で綺麗な魔法だったんだもの。あの魔法は心の汚い令嬢には使えないわ。だからロゼッタさんはとても良い人なのよ。

 だってあんな素敵な魔法を使えるんだもの。


「デリー……」


「魔法や本が絡むとケリーアになるなデリーは」


「ちょっと、それどういう意味よ」


「分かった。では次にロゼッタ嬢を尋ねる時は事前に僕も誘ってくれデリー。折角だから君の新しい友達とやらを紹介しておくれ」


「良いのですか! ふふ、喜んで。ユルゲン様が一緒だなんて、嬉しいですわ」


 そう言って、私は満面の笑みを浮かべた。

 いえ、浮かべるつもりで満面の笑みになったつもりになりました。顔の表情はかわらなかったけど、こればっかりは仕方無いのよ。私の表情筋は死んでるから。

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