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925話、ゼルディス、王族会議

SIDE:ゼルディス


 酷い目にあった。

 予想はしていたが予想の300倍は酷い内容だった。

 もう二度とやらん。


 パワーレベリングでレベルは200を越えた。

 レベルだけは超人級だ。

 しかし技術は兵士達に遠く及ばない。


 それでも、俺も兄上も普通の暗殺者からの暗殺程度なら跳ね返せるだけの実力は手に入れたのである。

 確かに、一瞬の激痛だけでここまで強くなれるなら、むしろメリットだと言っていいだろう。

 しかし、あの激痛はひどかった。


「さて、戻って来たな、エルヴィル、ゼルディス」


「はい、父上」


「三人で会議とか言っていたが、何をするんだ?」


「うむ。ロゼッタ嬢が言っていただろう? 我々メルクナードの今後に付いて、ヘルツヴァルデとの付き合い方をどうするか、だ」


「そりゃぁ……」


 俺は決まってるだろ、と言いかけて視線を兄上に向ける。

 ここで俺が出しゃばるよりは兄上の意見を聞いておいた方がいいだろう。

 あんまし有能ですアピールしちまうと王位継承させられかねないし。

 兄上もヘルツヴァルデの呪縛からは逃れたはずだ。性格的な失態はあるかもしれないが、もう兵士の排除とか大臣達の取り立て、ヘルツヴァルデにご意見伺い、等はしないだろう。


「俺としては完全に国交を断絶でいいと思う。下手に販路を残すとそこから侵略を受けるだろ」


 兄上は少し前から王族としての教養を覚え始めた。

 まさかの母上が自ら教鞭を取ることになったのだ。

 後宮住まいで滅多に出てくる事が無かった母上は、むしろこれ幸いと楽しげに兄上を教育している。


 御蔭で母上から教えられた言葉を早速使っているようだ。

 母上の思考に染まり切らないかが不安要素だが、母上は周辺のメイドや護衛兵たちから情報収集していたおかげで、父上以上に情報通だ。まさかヘルツヴァルデに侵略されそうだったことをいち早く知っていたとは思わなった。

 一人国を脱出する準備を整えていた母上を押し留められたのは本当にロゼッタ嬢の御蔭であろう。


 父上に告げても意味は無いし、兄上はヘルツヴァルデにべったりだし、俺は放蕩で役に立たないし、ってことでこの国見限ろうとしていた母は、俺達の意識が変わったとわかるや、ヘルツヴァルデとの国交は断絶しましょう、この国の政治に口だしますけどいいですわよね! とまるでロゼッタ嬢のようにさっさと断行し始めたのだ。

 御蔭で父上が困っていたが、俺にはどうでもいいので母上に国のかじ取りはお任せしよう。

 父上が治めている時よりも国が良くなりそうな働き具合だし。


「俺的にはどうせ戦争になるだろうからヘルツヴァルデ潰しても良いんじゃないかと思うけど、ロゼッタ嬢が言うには我が兵士たちは守りに特化している、ってことだからなぁ。現実的にも断交でいいんじゃないか父上」


「ふむ、やはりソレが妥当か」


「母上の意見聞かなくていいのか父上?」


「あいつが来ると話にならんだろ、全てあいつのやりたい放題になっておるじゃないか。はぁ、だからあいつは後宮から出したくなかったんじゃ」


「父上尻に敷かれてるもんなぁ。兄上も気を付けろよ。結婚相手次第だと自分の意見は通せなくなるぞ」


「肝に銘じるよ。女は抱くだけ、なんて思っていた自分の馬鹿さ加減を殴りたい。何が言いなりだ。母上のような女性たちが相手では意見すら言えなくなるではないか、これが、この程度が俺だったのか……」


 ある種の挫折だなぁ。

 ロゼッタ嬢の破天荒さに翻弄された後で母上の押しの強さを体験しちまったらなぁ。


「とりあえず、ロゼッタ嬢からこれからの方針について指示はあるが?」


「母上からも指示はでてるぞ? どうする父上?」


「うむ。まずは儂から、ヘルツヴァルデとの断交を行うにあたり、関税の復活、商業価格の見直し、ライオネル周辺国との国交樹立、大臣達の粛清、一般市民の役職斡旋、やるべきことはこの位かのぅ? エルヴィル、どうじゃ?」


「俺から、というよりは母上からでよければ。ヘルツヴァルデに連なる者全ての国外退去、また商業に関しては一切の断絶をすべき、他にヘルツヴァルデと国交のある国も断絶すべきだ、とのことだ。あと貴族と一般市民の垣根を取り払うのは愚考。何かしらの区別を貴族の優位を考えておけ、と」


「そ、そうか。ゼルディスは、どうじゃ?」


「俺というよりは、そこに居る影の男から報告かな、頼む」


 父上のすぐ後ろに立っていたライオネルの影兵に促す。

 父上は気付いてなかったようで、男が話し始めると椅子から飛び上がらんばかりに驚いていたが、笑ってはいけないのだろうな。噛み殺すのに兄上同様苦労してしまった。


「ではお嬢からの「うおぉ!?」方針について、似通ってる部分は端折りますね。まずヘルツヴァルデと国交断交した後は関税を掛け、訓練後の兵士数名を関門に置くこと。お勧めはエスター。ヘルツヴァルデの息が掛かった大臣達は役職を解き研修生としてヘルツヴァルデに家族ぐるみで放り出し、領地や溜め込んだ資金を接収すること。空いた役職にはまず中位貴族、余った役職に下位貴族、それでも余るなら平民を採用すること。また各部署に監査官の設置、これは浮浪者を育成し権限を与える方がよい。家族を人質に悪事への加担、などがなくなるので普通の平民より家族等との縁が消えている浮浪者の方が監査向きだということ。あるいはアルケーニスから出向させてもよし。それから……」


 ロゼッタ嬢はほんといろいろ思い付くなぁ……この国、ホントロゼッタ嬢一色にならんだろうな?

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― 新着の感想 ―
[一言] >この国、ホントロゼッタ嬢一色にならんだろうな?  というより、この国そのもの(王族の殆ど・民衆)がヘルツヴァルデにより思考力を無くしていたのでは、と思ったりしたんだよ。
[良い点] うむ。この国の王妃さまは有能そう。 [一言] もしこの作品が書籍化するなら今更ながらですが、主人公付近の年齢が若過ぎで、修正入りそう。+5歳は硬いかな笑笑 実際そう打診されたらどうします…
[一言]  そりゃ、前世で色々頑張っていればラノベとかで現実参考の役に立つ王宮(腐敗などによる魔宮)のあれこれはよく知ってるだろうしこれくらいはすらすら出てくるだろうな。 某ハート〇ン軍教官とかも知…
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