92話・ロゼッタ、魔法好きなら仲良くなれそうなんだよ
「さて、今回遊びに来て貰ったのはいいんだけど、正直友人との遊びって何していいのか分からなくて。普段お友達とは何をなさってますか?」
「何よ、今まで遊んだことないの? もしかしてボッチ?」
この世界にもボッチって言葉があるのね。クリティカルヒットで大ダメージ喰らってしまったわよ。想定外の攻撃だったわ。
「婚約者とはよく遊ぶけど、男友達と女友達って違うでしょ?」
「さりげなく自慢ですか……」
いちいち突っかからないでほしいなぁ。どうせ私が反論したら泣きだすんだからやめとけばいいのに。
「あの、私、お話聞くだけ、だから……」
「デリーと遊ぶ時は二人で話をすることが多いわ。私が喋ってデリーが相槌を打つの。凄く盛り上がるわよ?」
それ、あんたが一人ずっとしゃべってるだけなんじゃ……
いや、あえて指摘はすまい。
二人の遊びなんだから好きにすればいいんだよ。
でも、なるほどねー。
フレデリカさんは基本喋るのが苦手。逆にケリーアはほぼずっと喋ってないと落ち付かない人種のようだ。
でもお笑い系とは違うようで、ただのおしゃべりなだけ、それに相槌を打つフレデリカさん、彼女は自己主張は強くないようなので、話聞いてるだけでも充分満足出来るタイプのようだ。
フレデリカさんみたいのもOL時代新人に何人かいたね。
仕事の失敗を怒ると次の日には辞表出したりメールで辞めますって送って来る自己主張出来ないうえに怒られ慣れてない若者たちだ。
私はこのタイプの娘に慣れてるから出来るだけ怒ったり怒鳴ったりしないようにしてちゃんと君の事見てるよ、がんばれ。って感じに元気づけると結構長続きしてくれる。
でも他の誰かに怒られると結局しゅんっとして豆腐メンタル破壊されて次の日から仕事休んだり辞めたりしちゃうのである。
私の努力を返せ、あの子のためにどれだけ時間つぎ込んだと思ってんだあの女っ。できる子だったのにっ。
彼女が辞めた後に寿退社でさっさといなくなりやがってっ。テメーのがいらないってんだよっ。ちくしょぉーっ。
「外には、でません」
インドア派。しかも気弱か。
うーん。そういう子って基本一人を好むタイプだったりするからなぁ。
団体行動は苦手でケリーアみたいな子は基本嫌い。
でも相手がカリスマ性のあるタイプだと長いモノに巻かれるというべきか、慕って金魚のフンみたいに付いてくることがあったりなかったり。
そうだなぁ、フレデリカの場合本でも読ませとけば普通に何処でも過ごせちゃいそうだけど、ケリーアはつまらないだろうね。
騎士爵家というだけあって、剣振るうのが好きだったりするんだろうか?
とにかく空気を読めない彼女は先へ先へと向かう冒険者タイプ。いわゆる脳筋さんなんだよきっと。
「そうだねー。じゃあ、変わった魔法とか、どうかしら?」
「変わった魔法?」
「例えば、そうね。灯火の魔法とかあるよね?」
火魔法なんだけど火を灯すってことで生活魔法に分類される魔法だ。
ちょっとした火が欲しい時に重宝する。
例えばタネ火が欲しいけど周囲に可燃物が無い時とか。
「はい。知ってます。大した魔法ではないのに覚えるのに凄く大変だとか」
まぁ、普通に覚えようとすれば数年単位で時間を無駄遣いするらしいけど。
しかも必死に覚えた魔法は指先に小さい火を灯すだけの魔法。
割に合わないね。でも、ちょっと変わった魔法見せるならこれくらいがちょうどいいのである。
詠唱して指先にぽっと炎を作りだす。
ふふん。ここにオリジナル魔法で着色してやんぜ。
「これにね、ちょっと加えるとぉ。はい、緑になっちゃった」
「「えぇっ!?」」
おお。食い付きが良いんだよ!?
驚く二人の反応が良いのでついつい悪ノリしちゃう。
紫にしたり、青にしたり、白くしたり透明にしちゃったり。
普通の炎じゃなくてエタノールとかの場合燃えてても着色されないから透明な炎になっちゃうんだよ。見えない炎とか怖すぎでしょ。
「どう? 色変えるだけでも面白いでしょ」
「す、凄いっ!」
おお、フレデリカが出会った中で一番大きな声になった!?
「うぅ、炎の色が変わるなんて、今まで聞いたこと……」
気圧され気味に告げるケリーア。こっちは喰い付き悪いね。
でも、なんだかフレデリカさんがぐいぐい前のめりなんだけど?
ど、どうした? なんでそんなに顔近づけて来るのかな?
「あ、あの、魔法、得意なんですか!?」
「え? ええ、えっと、まぁ、それなり、に?」
「す、素敵です! 是非、私にも教えてほしいです」
お、おおぅ?
ま、まぁ、着色くらいなら、科学的な基本習えばすぐイメージできるだろうから問題はないだろうけども……
あれ? おかしいな。この娘ってこんなぐいぐい来る娘だっけ?
っていうか、近い近い近いっ! このままキスされそうなくらい近寄って来てるんですけど!?
「ちょ、ちょっとデリー、近づきすぎよ!?」
「え? あ、ご、ごめんなさいっ!?」
ケリーアの言葉に我を取り戻したフレデリカが慌てて引っ込む。
「その、魔法、好き、です」
そして消え入りそうな声に戻ってしまった。
ふむ。魔法好きなのか。ならその辺りから仲良くできそうだな。
なんならボーエン先生の授業一緒にしちゃう?
あ、でも家は公国だから遠いのか。どうしよう?