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91話・ロゼッタ、二人とも泣いちゃうとかどうすればいいの!?

「うぅ……」


 必死に堪えているものの、ケリーアの目元に涙が浮かんでいる。

 悔しいけれどこっちが正論だから言い返せないんだね。


「け、ケリー、あ、挨拶して、その、謝まろ?」


「で、でも、相手は悪名高い……」


「ふむ。私が悪名高いからなんだと? 礼儀を無くして良い理由ではないでしょう。そもそも悪名が高い相手に付け入る隙を与えるなど友人としてどうなのです? 貴女はフレデリカさんの立場を崩しに来たのですか?」


「ち、ちが……う。うぅ、うわーんっ」


 えぇーっ!?


「ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいケリーアちゃんに酷い事しないでください、うぅ、ふえぇーっ」


 ええぇーっ!?

 二人は感情が爆発して泣きだした。

 そもそも二人とも私と同い年なので8歳だ。

 成熟した大人相手ならともかく、私の正論は彼女達にはキツ過ぎたらしい。

 フレデリカを泣かせないように仲良くしようと思ったのに、どうしてこうなった!?

 私が泣かせてどうするよ!? この悪役令嬢ッ! はっ!? 私は悪役令嬢だから悪口にならなかった!?


「ま、待って待って。落ち付いて。ほら、二人とも泣きやもう。怒ってないから。ね。フレデリカさん、ほらほら、座って、貴女も、ほら、フレデリカさんの隣よ。はい、もう怒ってないからー、泣きやんでー、泣きやんでーっ」


 OL時代、よく正論で追い詰めて若いOLたちを泣かして来た悪い癖がこんな時にでてしまったようだ。

 やり過ぎた。

 ほ、ほら、二人ともプリンをお食べ。私のは後で良いから、美味しいよー。泣いてる場合じゃないよー。


「ぐす、ひっく……おいじぃ」


「ふぇー、うぅ、好きぃ……」


 二人とも泣きながら食べだした。

 どうすればいいのこれ!?

 誰か少女を泣きやませる方法教えてぇ、私も泣きたいよぉっ!?


「ずいまぜんでじだぁ、うぅ、おいひぃよぉ」


 ケリーアがなんか謝ってるけどそのままプリン食べてるから謝ってる感が全然無い。でも泣きながら食べてるのでイラッとすらこない。

 いいからとりあえず泣きやめぇい。


「ふえぇ……」


 フレデリカの方は顔の表情が変わらないのに涙流して食べてるからちょっと怖い。その顔、仮面じゃないよね? デスマスクとか付けてない?

 二人とも瞬く間にプリンを食べきった。

 そして遠慮なく告げる。


「ぐすっ、ふぐぅ、おがわりぃぃ」


「ふえぇ、わだじもぉ」


 ええ、おかわりっ!?

 拙いぞ、おかわりなんて用意してない!?


「失礼しますお嬢様。プリンを三つ、お持ちしました」


 なん、だと!? だがナイス!

 リオネッタが持って来たプリン三つを私達に配る。

 すごい勢いで食べ始めた。

 余程気に入ったようだ。泣きながらだけど必死に食べてやがる。

 なんか放置してたら私の分まで食べられそうだったのでさっさと食べておくことにする。


 んー。蒸しプリンおいしぃっ。

 わざわざ卵を取り寄せた甲斐があったんだよ。

 サルモネラ菌とかが怖いけど、加熱処理してあるから大丈夫なんだよ。

 プリン万歳。


 でもその内ぷるんっと震えるプッチン的なプリン様を作りたい。

 ゼラチン質の素材が無いからまだ作れないけどね。あと砂糖無駄に高過ぎ。

 しかも白砂糖が無いんだよ。茶色までしかないんだなこれが。

 ちなみにウチで取り扱ってるのは甜菜糖なんだよ。


 プリンを食べ終わった二人はおかわりを請求したそうにしたものの、素早く出された紅茶を飲むことで精神的ゆとりを取り戻したようだ。

 夢中でプリンをおかわりしてしまった事に気付いてケリーアは恥ずかしそうに顔を染めている。

 多分、フレデリカも同じ顔なんだろうけど、表情筋が死んでいるようなので、ハイライト消えた瞳でただただ虚空を見つめるだけである。


「とりあえず、落ち付いてくれたかしら?」


「あ、はい……」


「うぅ、なんか悔しい」


 消え入りそうな声で頷くフレデリカ。

 そして乱暴者のケリーアが悔しげに空になったプリンの容器を見つめながら溜息を吐く。

 そりゃ嫌っていた令嬢の世話になったうえに、プリンおかわり要求しちゃったもんね。

 ちょっとどう反応すべきか迷うよね。


「では改めまして。初めましてフレデリカさん、ケリーアさん。ロゼッタと申します」


「あ、はい。初めまして」


「……はじめまして」


 不貞腐れたようなケリーア。罰が悪いのは自分が泣き叫んだのを思い出してのことだろう。

 なんか、こうしてみるとツンデレな妹みたいで可愛く思えて来たなぁ。


「今回、突然呼びだしたのは、お父様が私の友人になりそうな人を見繕うから友人になってみたいと思った者を選べ。と無理矢理選ばされたのでできるだけ仲良くなれそうな人を選んだんだよ」


「……それが、私?」


「なので気に入らなかったら無理ですって言って貰っていいからね。無理はしないでね?」


「あ、は、はい。その、すいませんでした」


 今までのことを含めての謝罪はとても小さく、蚊が耳元を通過する音よりもずっと小さい声だった。

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