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91/1986

90話・ロゼッタ、二人来るとか聞いてないんだよ!?

 リオネッタがお友達候補となる御令嬢を案内して来た。

 今回やって来たのはあの書記係の子である。

 フレデリカ・ピーターアーツ。生徒会長になるユルゲン・テリテュリーの婚約者にしてピーターアーツ公国一人娘、公爵令嬢様なんだよ。

 

 物静かで何も言わずに婚約者が寝取られていくのを見守り、蜂蜜色のツインテールな友人に慰められてた可哀想過ぎる少女だ。出来れば彼女と仲良く成っておきたい。ユルゲンが主人公に寝取られるようなら私が理論で攻めてやるのだ。そのくらいしても罰は当たるまい。

 むしろ罰を受けろユルゲン。


「失礼するわッ!」


 へっ!?

 相手が物静かな御令嬢だと思っていたので、部屋でティーセットの準備をメイドさんにして貰って、私が料理長に最近よくお願いしている蒸しプリンを披露しようとセッティングしていたところ、どばんっと扉が開かれ、蜂蜜色のツインテール少女が乱入して来た。


 その背後から、待って、待ってぇと、ぜんぜん焦った顔をしていない可愛らしい少女がツインテール少女を押し留めようとしている。

 いや、待って。二人来るとか聞いてないんだよ?


「どちら様?」


「なっ! 自分から誘っておいてその態度はなによっ」


 えぇー。


「待って、ケリー、待って。いきなりはこっちが失礼だよっ」


 か細い声ながら必死に叫ぶ可愛らしい御令嬢。見覚えあるし、この子がフレデリカだね。ゲームで見たのと同じ顔だ。


「いいのよデリー。こういう無礼で頭沸いちゃってる我儘令嬢には最初っからガツンとやってやればいいのよ」


 いや、我儘令嬢だったのは認めるけど、さすがに見ず知らずの家にやって来て無礼千万なことするのはちょっと人としてどうかと思うんだよ。君が頭沸いちゃってるんだよ?

 多分、私の噂を知ってフレデリカを守ろうとしてのことだろうけど……これはどうなんだろう。うん、キーリ外に出しといて良かった。

 下手したら女の子相手にSAN値チェックモノの恐ろしいことが行われていたかもしれない。


「少々面食らってしまいましたが、フレデリカ様でいらっしゃいますか? 私はロゼッタ・ベルングシュタットと申します。本日は我が父の我儘をお聞き下さり遠路はるばるようこそ御来訪くださいました」


「ふぇっ!? あ、ふ、フレデリカです……あ、え、ちが、えっと」


 突然のカーテシーに面食らったフレデリカが焦りながらケリーアを必死に押しのけ前に出る。

 一度大きく息を吐き、気持ちを入れ替えると、私に向かってカーテシーを返す。

 スカートつまんでのお辞儀は御令嬢の嗜みなんだよ。


「いろいろと、失礼しましたフレデリカ・ピーターアーツです」


 か細い声で、消え入りそうに告げる。

 私達の挨拶を見たケリーちゃんとやらが、うぐっと気押される。

 どうやら私が激怒して今回の友人会がご破算になるとでも思っていたらしい。

 わざと心証悪くしようとしてるんだろうけど、ちょっとずれてるんだよ。


「失礼ながら、そちらの方は?」


「あ。その……付き添いで……」


「デリー、ケリーと呼んでいることから親しい友人の関係かと思われますが……」


 まぁ、多分親友なんだろうね。フレデリカ心配してのことだろうけど、ちょっとやり方がまず過ぎるわ。きっとその辺りは何も考えていないのね。ちょっと、指摘しておいた方が今後のためになりそうだし、意地悪く言っちゃおうかな。


「そ、そうよ、私はデリーの……」


「初対面なのに名も名乗らず相手を卑下するような方を友人にするのはどうかと思いますわ」


「ぐぅっ、そ、それは……」


「一応、こちらも令嬢で、貴女も令嬢なのですから、最初の挨拶くらいはしっかりとすべきかと思いますわ、フレデリカ様?」


「あ……すみませ……」


「ちょ、ちょっと、デリーは悪くないじゃない!?」


「あら、でも無礼な友人をこちらに連絡も無く連れて来るのはフレデリカ様の落ち度ですわよ。それとも、貴女もしっかりとした御令嬢であるのかしら?」


 そう、事前連絡がなかったからプリンは二人分しかないんだよ。どうするの! そこのメイドさん、気付け、大至急プリン一個追加、ティーカップもろもろもよろしくなんだよ。

 あ、気付いてくれた。慌てたように厨房に駆けて行くメイドさんによろしくと心の中でお願いしておく。


「くっ、ケリーアよ。ケリーア・スライフ」


 スライフ? うーん爵位持ちの家にそんなところあったかな?


「き、騎士爵家よ。文句ある?」


 ふんっと告げるケリーア。ああ、騎士爵家か。なら知らないのも仕方ないんだよ。普通の貴族と違って騎士爵家は一代限りの王国騎士のお貴族だからね。

 って、それって偉ぶる意味がないよね?

 だって男爵家よりも下の地位で貴族としては最下層。平民に与えられる役職だもの。


「えーっと、フレデリカ様、この方はなぜこんなに偉そうなのでしょう?」


「あ、ケリーは、その、誰にも物怖しないので」


 なるほど、フレデリカとしても物怖じせずずけずけ行ってくるケリーアに好感持ってるんだな。

 でも物怖じしないとかの段階飛び越えちゃってるよ。どう見ても無礼討ち上等、フレデリカの公爵令嬢パワーが無ければ即死案件なんだよ。


「なるほど。あ、どうぞフレデリカ様。こちらにお座りくださいませ」


「ちょっと、私は!」


「あら、招かれた友人という訳でもないのに椅子に座らせてほしい、と?」


「な、なな」


「ふふ。座る前にまずは言うことがございますわよね。そも、フレデリカ様の付き添いとして来たのであればなおさら、彼女に泥を塗りたくるようなことはすべきではないと思いますのよ?」


 ああ、ちょっとやり過ぎたかな。凄く悔しそうにしているケリーア、目元に涙が溜まり出す。

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