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880話、ロゼッタ、つべこべ言わずに掛かってくるんだよ?

「さて、とういう訳で、これよりライオネル式訓練を開始する。これがその訓練内容だ。パンダフ、トラヴィス、バリー、皆に配ってあげて」


 訓練内容を書いた紙を全員に配る。

 未だに信じられないと言った顔の彼らは、用紙に目を落とすと、わなわなと震えだした。


「ふ、ふざけるなッ! なんだこの出鱈目な訓練内容はッ」


「出来る訳ねぇだろ! テメェら、やっぱり俺らを潰しに来たんだろッ!」


「陛下は何を考えていらっしゃるんだ。こんな奴ら……」


 最後の一人は慌てて隣の兵士に口塞がれていた。

 うん、陛下の悪口は言っちゃダメなんだよ。

 王族侮辱罪、ダメ、絶対。


「おや、どうやら陛下の意向にそぐわない兵がいるようね? ランバルさん、どういうことかしら? メルクナードの兵士は陛下の言葉を信じることがないのかしら? それは国軍としてどうなのかしら?」


「そ、それは……」


「そもそも、頭を下げて我が軍を立て直してくれ。と言って来たのはゼルディス王子ですよ。王族が、兵士のために他国の軍に頭を下げる。そんなことをさせておいてどの口が気に入らないとか言えるのかしら? なんと腐った兵士たちなのかしら? これでは国を守るために組織された最初期のメルクナード軍のお歴々が嘆いてしまうでしょう」


「き、貴様……」


 血の気の多い兵士の一人が動こうとして周囲に止められる。


「お、お言葉ですが。我々は十分な訓練をしております。ライオネル軍に引けは取らぬと自負して……」


「まぁまぁまぁ、随分と大きな口を叩いたものだ事」


 折角感情を押し殺した兵士が反論してくれたけど、私はそれをさらに煽る。


「そんなにしっかりとした兵ならなぜ王族が他国に訓練を頼むのかしら? 王族から見て貴方達があまりにも頼りにならない、国を守らせるに適さない。そう思われたから苦渋の選択をなさったというのに、ソレを恥とすら思えないのならメルクナード兵など一人も要りません。さっさと辞めておしまいなさい。新しく募集をした方がよっぽど優秀な兵が集まる事でしょう。今尻尾巻いて逃げるというなら処刑や反逆罪には問わないよう陛下にお伝えいたしましょう。さぁ、さっさとおやめなさいな」


 おお、ヤバいくらいに殺気が膨れ上がった。

 これ以上は暴発しそうだな。

 んじゃ、そろそろ行きましょう。


「それとも、貴方達は本当に我が国の兵に勝ると、思っているのかしら? なら……パンダフ、貴方相手してあげなさい」


「ハッ!」


 あー、バリーとトラヴィスが凄く哀しそうにしてる。戦いたかったんだね。メンゴ。


「そいつに、勝てばいいのか?」


「ええ。勝てるなら、私達が手を貸すまでも無いでしょう。ええ、どうせです、全員で掛かっていらっしゃい。最初の戦いが終わった時貴方達のうち一人でも立てていたのなら。私達は引き上げますわ」


 くすり、大胆不敵に微笑を付けくわえる

 ぶちり、沢山の堪忍袋が切れる音がした、気がした。


「どんだけ見下せば気が済むんだライオネルッ」


「たった一人に全員でだと! 俺らがどれだけ弱いと思ってんだッ!!」


「ぶっ倒してやる。そしてあのクソ女泣かせてやるッ」


 おいおい、心の声漏れちゃってるぞ。

 ランバルさんがどんだけ煽ってるんですか、これヤバいですよって顔で私と兵士を交互に見ている。

 胃、大丈夫? 胃薬いる?


「じゃあ、パンダフ。お願いね。バリー、合図は貴方がやって。トラヴィスは私の警護ね」


「警護、要ります?」


 形式的にでいいからお願いね?


「ああ、ランバルさんも向こうに加わってください。あなたも訓練対象なのですから」


「そ、そうですな」


 こちらの実力は分からないだろうが、ある程度予想はできているのか、かなり青い顔で兵士達の元へ向うランバルさん。

 隊長格、あの人しか居ないけど、メルクナードの隊長って一人なの? その辺りも後で聞いとかないといけないわね。


「ふふ、お嬢。別に倒してしまっても構わんのだろう?」


「はいはい。お好きになさって」


「では、ライオネル軍対メルクナード軍模擬戦、開始ッ」


 怒りと共に怒号を響かせ兵士達が走りだす。

 パンダフが手にした武器は模擬刀、というか竹光。うん、竹刀なんだよ。

 頑張って再現したけど細部までどうだったか忘れちゃって。仕方ないからクラムサージュに錬金術で作って貰ったのだよ。

 ぶつくさ言ってたけどちゃんと人数分作ってくれるクラムサージュはいい人だ。


 兵士達が舞った。

 綺麗に放物線を描いて空を飛ぶ重装歩兵。

 あれは落下したら死んじゃうなぁ。でも手加減スキルが使われてるので致命傷には至らないのである。

 ならば回復魔法で全快だ。それまでちょっと待っててね。


「な、なん?」


 先頭集団が軒並み宙を舞ったことで兵士達の怒りが削がれた。

 御蔭で相手の実力がおかしい事に気付いた面々が警戒を始め、恐れをふっ切ろうとした兵士たちは突撃を始める。


 そして、メルクナード軍の地獄が始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >俺らがどれだけ弱いと思ってんだッ!! 干乾びたミミズ位?。
[一言] 大きくなって…(涙
[良い点] いまロゼッタが相手したたそれこそ鼻息で倒せそうだし(絵面はともかく)、部下に任せないと心が立ち直れる前に折れちゃいそうだものね…
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