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88話・フレデリカ、我儘令嬢の友達に成れって……憂鬱です

 ある晴れた空。

 白く自由に浮かぶ雲々の間を鳥が飛んで行くのが窓から見えた。

 ごとごとがたがた、道が安定しないのと、車輪が木で出来ているため恐ろしく振動する馬車に乗り、私達はライオネル王国へと向かっていた。


 フレデリカ・ピーターアーツ。それが私の名前です。

 ライオネルの属国となっているピーターアーツ公国。公王であるお父様はライオネル王国グランザム王の弟に当るので、実質的には私も王女の一人ということになる訳ですが、公国というだけで王国民からは少し下に見られるそうです。

 ようするに侯爵令嬢や伯爵令嬢といった具合に思われているのでしょう。

 否定しないので間違いが正されることはないのですが、私としては敬われるのがあまり好きではないのでこのままでいいのです。

 公国では王女の私も、ライオネル王国では公爵家令嬢ですし。


 ただ、侯爵家と同等と思われたりすることくらいは問題ないのですが、その侯爵令嬢と仲良くしろ、と言われるのは少し困ります。

 私としては友達が出来るのは嬉しいのです。でも私は寡黙で自分の感情をあまり外に出さないので、どうにも上位貴族の御令嬢方とは話が合わず、向こうも公爵令嬢相手に下手なことは言えないということで、取り巻きとして寄って来ても次第に別の侯爵令嬢などの取り巻きに向かっていったりで友人という名のポジションに収まる人がほとんど残りません。


 結果的に今居るのは、私の対面に座ってしかめっつらをしている騎士爵令嬢ケリーアちゃんだけでした。友達一人だけの公爵令嬢。ふふ、ちょっと悲しくなってきました。

 あと、お尻が痛いです。やっぱり馬車の移動は慣れません。出来れば二度と乗りたくないのですが、公爵である以上ライオネル王国に行ったり来たりの関係で何度も乗らなければならないのが辛い所です。


 本日、ライオネル王国に向かっているのは、なんとお父様に侯爵家から直々娘の友達募集で貴女の娘が選ばれました。つきましてはさっさと来やがれこの野郎。という内容の手紙を頂戴したのが始まりで、思わず握りつぶしたらしいお父様だったものの、紹介料として送られてきたモノが予想以上に欲しいものだったらしく、血反吐吐く思いで私を送り出したのです。

 ふふ、物欲に負けて我儘令嬢として呼び名の高い侯爵令嬢ロゼッタさんの元へ送られる私、お父様お怨み申し上げますっ。


「それにしても、なんでデリーなのよ。侯爵令嬢だからってなに、その友人になってやるから家に来いって。ふざけてるでしょ」


 話を聞いて、だったら私が守ってあげるわ! 私は貴女の騎士だもの! と闘う気満々で一緒に付いて来てくれたケリーアちゃんがふんすっと気合を入れる。

 憤懣やるかたないケリーアちゃんだけど、私の事をいつも心配してくれているからとても嬉しい。お母様からも、ケリーアちゃんみたいなもの怖じしないバカ……じゃなかった勇敢な子は滅多にいないから末永く仲良くしなさい。って言われてるもの、できるならずっとお友達でいたいな。

 でもお母様。ケリーアちゃんはバカなんじゃないよ。ただ、ちょっとモノを考える前に手がでちゃうだけで、物を考えるのが得意じゃないだけなんだよ?


「デリーが蔑まれたりするようなら私、死を覚悟でロゼッタとかいうクソ女と討ち死にしてやるから! 絶対に守ってあげるからね!」


 それ、相打ちじゃないのかな? 討ち死にしたら自分だけ死んじゃってないかな?

 蜂蜜色の髪を揺らして、こうして、こうしてっとロゼッタさんをぎったぎたにしてるところをジェスチャーして見せるケリーアちゃんにふふっと笑う。

 どうも、私、表情筋が死んでいるらしくて爆笑してても顔が変わらないって言われるの。今回も結構笑ってるつもりなんだけど、ケリーアちゃん曰く、いつも死んだ魚の目みたいな目してるね。って言われるの。もうちょっと言い方考えてほしいな。


 でも思った事をずけずけ言っちゃうケリーアちゃんだから裏表が無くて、私の事裏で嫌ってるっていう考えが透けて見えてこないのが良い。

 ロゼッタ様はどうなのかな?

 やっぱり噂通り、侯爵未満の人種は全て劣等種とか思っちゃうタイプなのかな?

 侯爵令嬢にはその思考が多いって聞くけどどうなのかしら?


 私、感情の起伏が乏しいし、その関係でやっぱり蔑まれるんだろうなぁ。

 今までもそうだったし。

 ああ、今から憂鬱だ。

 何が悲しくて蔑まれに行かなきゃいけないのかしら。


 いえ、でもプラスに考えよう。

 この一回を耐えきれれば、ロゼッタさんからお声が掛かることはないのだろうし、向こうもこんな根暗な公爵令嬢とはかかわりたくもないだろう。

 さっさと家に帰って魔法の練習したい。

 本も読みたい。ああ、一日中本だけ読めたら最高に素敵なのに……


 ああ、そうだ。どうせ傷心なんだし、帰り際に婚約者になってるユルゲン君に会いに行こう。ユルゲン君最初に会った時に私の性格がちょっと変わってて新鮮で素敵だって言ってくれたし。えへ。ユルゲン君のお嫁さんかぁ、政略結婚だって聞いた時は絶望したけど、あの人となら……えへ、えへへ。

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