879話、ロゼッタ、王命ですが何か?
「初めまして皆さん。本日より世話になる、メルクナート軍兵士長ランバルだ。礼儀作法がなって無いのは許してくれ」
「構いませんわ。軍部の縦社会性は理解しておりますもの」
私達はメルクナート王の言質を取ったあと、早速訓練場へと顔を出すことにした。
事前に王様に伝えておいたけど、ちゃんとお願いした通りの王命書いてくださっていてありがとうございます、なんだよ。
「大体のことはゼルディス王子から話を聞いておりますが、ライオネル王国の方々が我が軍の指導をなさるとか?」
「ええ。だめかしら?」
「いえ、我々としては陛下より御下命頂いた以上は従うまでです。ただ、兵士達が従ってくれるかどうかは……」
「問題ありませんわ。その辺りはライオネル王国で経験済みでしてよ」
私の言葉に後の三人が 頬を掻いたりそっぽ向いたりしている。
「貴方も含めて話がありますので、まずは全兵士を訓練場の中央に集めてくださいまし」
「了解しました」
ふむ、ランバルさんはそれなりに使えそうな人だな。
いや、油断はしちゃいけない。
ああ言う人に限って命令待ち人間の可能性があるんだから。
いえ、命令待ち人間が悪いわけじゃないんだよ?
彼らも元々はそういう性格じゃ無かったんだろうけど周りの阿保どものせいでそうならなくてはならなかっただけなのだから。
きっと上司がダメだったんだろう。
何を言っても聞いてくれない。自分たちの意見は黙殺される。
そういう経験が何度も続き、一方的に怒られることが続いた結果、上司にとっては扱いやすいYESマンができちゃうのだ。異見を告げることを諦めちゃったんだよ。
都合は良いかもしれないけどその人の良さを完全に殺してしまうので上司としては無能としか言いようのない人物なんだよ。
例え失敗するとしてもしっかり自分で考えて動ける人材に育てないと。
失敗が悪いんじゃない。その失敗に直面した時どう対処できるか、そここそがその人に問われる真価であって、その真価を問うためにはその人に経験が必要なんだよ。
その為には基礎をしっかりと教え込んで、その後に自分で考えさせるようにして行かなきゃいけないのよね。
勝手に見て覚えろ、じゃ余程やる気ある人じゃない限りは育たないんだよ。最初の基礎が出来てなきゃ我流で覚えて上手くいくなんて稀なのである。
「よし、準備完了みたいね。それじゃ、行きますか」
「さぁて、最初はやっぱ舐められますかね?」
「俺はお嬢に絡んで倒される巨漢のおっさんまた見たいっすわ」
「笑わないように真面目な顔すんの大変なんだよなぁ。まぁ……」
「「「行きますか」」」
私達四人はゆっくりと訓練場へと足を踏み入れる。
集まりながらも無駄話が収まらない兵士達が何事だ? とざわめいている。
どうやら私達のことはランバルさんしか知らないようだ。
うーむ、命令系統もこれはずったずただなぁ。
例によって例のごとく、令嬢のドレスを着こんでおしゃれに歩く。
兵士達の視線を一身に浴びながら、彼らの前にやって来ると、既に前に居たランバルさんが中央部を空けてくれた。
丁度兵士達全員の前で一番注目を集める場所なので、丁度良いと言えば良いんだけど、私の背丈が低すぎて後の兵からは見えないぞ。
まぁライオネルでも似たような状況だったけど。
「お嬢、失礼します」
見かねたトラヴィスが魔法で私の真下の土を盛り上げる。
うん、校庭にある校長先生が昇る高台みたいな場所くらいには高くなったわね。
ちゃんと私の前にもスペースを作ってくれたようだ。
うん、剣を突き刺すスペースなんだよ? じゃあ早速そいやっ。
「こほん。全員静粛にッ」
風魔法で声量を上げて、告げる。
ざわめいていた兵士達は、ざわめきを終えようとしなかった。
これは待ってても時間の無駄なんだよ。さっさと黙らせよう。
「これよりメルクナード王より下された王命を読み上げる。口上中声を上げた者は処罰の対象とする。しかと心に刻め」
さすがに王様の命令となれば皆押し黙るか。
「これはメルクナード王からの王命である。一つ、本日よりメルクナード軍全兵士の訓練は我々ライオネル王国軍が指導するものとする」
ざわり、とはならなかった。
皆何かを言いたそうだったが、さすがに王命と言われているのでなんとか押し黙ったようだ。
「二つ、我が軍による指導中、メルクナード軍属より抜ける事、また理由なく休むことを禁ずる。これに違反した者は処刑とする」
おお、ちょっと声漏れたな。
でもぎりぎり口を塞いで耐えたようだ。
「三つ、この王命はメルクナード軍が我がライオネル軍将軍であるバリー、トラヴィス、パンダフの三名より介入不要、あるいは合格を言い渡されるまで有効であるものとする」
なんか数人私を睨んでるけどこれ、正式な王命だからね。
「以上、三つの条件をメルクナード軍属の兵全てに命ずる。以上。ランバルさん、どうぞご確認を」
「は、はい」
私から王命の書物を受け取ったランバルさんが慌てて確認する。
「た、確かに、王命、拝謁いたしました」
ランバルさんから王命書を返してもらい、とりあえずバリーに渡しとこう。持っててね。




