870話、ナッシュ、魔竜島イベント・裏側4
SIDE:ナッシュ
「ん? どうしたんですペルグリッドさん、だ、ダメですよ。僕なんかにそういうことは」
まただ。ペルグリッドさんはなぜか僕を襲おうとしている。
洞窟探検をすることになって六人で探索することになったんだけど、分かれ道が三つあったので二人づつに別れることになった。
エレイン君が言うにはここで僕が脱落するらしい。
やり方は良く分からないけど、ペルグリッドさんと組んで彼女の目の前で死んだ事になるそうだ。
やり方は向こうに任せればいいからいつも通りに行動しろ、といわれたけど、僕本当にいつもどおりでいいのかな?
なんかそのままペルグリッドさんに襲われそうなんだけど。
ほら、また後ろでペルグリッドさんが僕に抱きついて来ようとしてるぞ。偶然よろけるようにして避けちゃうべきか、それとも抱きつかれるのは許容するべきか。
ん?
「うわ、ゴーレムだ!」
「へ?」
ペルグリッドさんが僕に飛びつこうとして間抜けな恰好で止まる。
さすがにこれは、遊んでる場合じゃないな。
というか、ここの洞窟ってダンジョンじゃないから魔物出ないんじゃなかったっけ!?
「ペルグリッドさん僕の後ろに。必ず守りますから」
ええい仕方ない。
とりあえずゴーレムは瞬殺だ。
僕の実力でも十分対処できるゴーレムだったようで一撃で崩れ去る。
ただ、ペルグリッドさんと距離が出来てしまった。
いや、むしろ僕が死んだ事になるなら離れていた方がいいのか。このままの距離を維持してみようかな?
「大丈夫ですか? 怪我してませんか?」
「え、ええ……」
尋ねながらも一定の距離を保っておく。
すると、他にゴーレムいないか警戒し始めた僕の後ろでペルグリッドさんが動く気配がする。
ん? 今の音なんだ? カチって、音が……
ばっと後ろを振り返れば、丁度ペルグリッドさんのお尻のあたりに岩の出っ張りが触れている。
おかしいな、あんな場所にそんなモノなかった……ような?
「これは……」
「ッ!? トラップ!?」
っと、呆然としてる場合じゃない。
天井がパラついてる。ぎりぎりペルグリッドさんが巻き込まれる場所だ。
どうやらこれが僕の死亡フラグらしい。
逃げようと思えばペルグリッドさんともども逃げ切れるんだけど、とりあえずエレイン君を信じてっと。
ペルグリッドさんに体当たりして落石ポイントから押しだす。
自分は逃げ遅れたていで落石側に残る。
いや、とりあえずちょっと身体強化しながらペルグリッドさんと逆方向に下がっておく。
「ペルグリッドさん、貴女だけでも逃げ……」
うわっ、目の前に大量の土砂が。
思わずバックステップで避ける。
あれ? こっち全然落石落ちてないな?
見る見るうちに天井まで落石が降って行く。
通路を覆い隠すほどに落石すると、ころんころんっと小さな瓦礫が最後に一つ、僕の足元に転がって終わった。
「ナッシュ君、こっち」
不意に、小声で男の声が聞こえた。
振り向くと、兵士さんが一人、おいでおいでしている。
僕が声を出そうとすると、慌てたように人差し指を立ててしぃーっとジェスチャーしてきた。
口を噤んで彼の元へと向う。
この辺りなら小声で会話できるだろ。
「あの、僕どうしたらいいですか?」
「ああ、とりあえずこっち来てくれ。一応君はここで脱落だからね、自宅に帰ってもいいし結末まで見守っていいし。どちらにしても一旦向こうに行こうか? ここには確認にエレイン君達が来る予定だ」
「りょ、了解です。えっと……」
「ああ、俺はプルータリスだ、よろしく」
「あ、はい、ナッシュです、よろしくお願いします」
とにかく付いて行けば言いみたいなのでプルータリスさんに付いて行く。
「いやー、こんな場所で天井まで落石降らせろとか無茶振りだよなー」
「えっと、無茶振りになるんですか?」
「そりゃそうさ。ここ魔竜島の地下っつっても岩盤薄いんだぜ? あの量降らせるとか空が見えちまうよ」
じゃあ、どうやったんだ?
「そりゃもう、俺がゴーレム生成のスペシャリストだからなんとか出来たって奴よ。というか、ゴーレム作るのが一番上手いからって理由でこんな場所に連れて来られた俺は泣いていいと思うんだけどどうかな?」
「そ、そうですね、泣いて良いと思います」
実際泣かれても対処できないけど。
ゴーレムが地面を掘り進んで別の洞窟へと辿りつく。
ふと背後を見れば、別のゴーレムが律儀に土を盛って洞窟を塞いでいた。
「あれ? ロゼッタ様!?」
「ナッシュ君お疲れー」
なんでロゼッタ様こんなとこにいるの!?
あ、そっか、この企画仕組んだのロゼッタ様だった。
え、じゃあホントにこれって計画通りなんだ?




