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87話・ガイウス、さぁ、策謀の時間だ

「最近、リオネルの様子がちょっと変なの。何か知らない?」


 その日、自室に戻った俺に、エレオノーラが心配そうに尋ねて来た。

 憂いを帯びたその表情にふむ? と考える。

 しかし、リオネルなど俺の人生には不要な存在なので様子が変だろうがなんだろうがどうでもいいのだが?

 いや、しかし、だ。弟の様子がおかしいということは、逆にチャンスか?


 俺としては王候補であるエリオット兄とリオネルは邪魔でしかない。

 できるなら早々に死んで貰いたい程だ。

 しかし、王位継承権の高いエリオット兄とは違い、リオネルは別に放置しても問題は無い。

 だが、機会があるというのなら、やっておいても損は無いかもしれない。


「で、どう変なのだ?」


「ええ。最近城内であっても無視されることが多くて、いえ、無視というよりは何か考え事をしているようで、気付かれない? が正しいのかしら?」


 考え事、なぁ?


「漏れ聞こえて来る声を拾えば、どうもロゼッタという名前がよく聞こえるの。その、ロゼッタが自分を裏切る? そんなバカな? と」


 裏切る?

 ロゼッタ……は確かリオネルの婚約者だったな。

 裏切り? ふむ……

 一度、ロゼッタとやらに会ってみた方が良いかな?

 もしも性格が俺好みであったなら、リオネル暗殺を手伝ってやるのも吝かではないのだが?


 上昇志向に野望的。常に上を目指し、他者を踏み台に出来る女。

 薄汚く意地汚く、婚約者を消し去ってでも、例えば第三王子を消して第一王子に乗り換える、なんて考えに賛同するクソな性格の女であれば。


 ロゼッタ・ベルングシュタット、お前は何を望んでいる?

 俺は王を目指している。お前は俺の踏み台になってくれるか?

 別に騙す気はねぇんだぜ? 第一王子の婚約者に興味は無いか? そう告げるだけだからな。


 結局は第一王子も殺すんだがな? その過程でお前に罪全てをなすりつけて殺すんだがな?

 せいぜい俺のために踊ってくれる愚かな女であってくれると嬉しい。

 そうであれば心おきなく踏み躙れる。

 死んだ後に名誉だけは回復しておいてやる。


「エレオノーラ、先触れを出してくれ」


「え?」


「折角だ。リオネルの婚約者、ロゼッタ・ベルングシュタットに聞いてみようじゃないか? 彼女なら理由を知っているんじゃないか?」


「まぁ、リオネルにあまり興味がなさそうだったのに、やはり弟が困っていると気にはなるのね」


 嬉々として喜び先触れを出しに向かうエレオノーラ。

 天然色が強く愚かな女だ。しかし、侯爵家の娘だという理由と俺好みの顔だったので俺の婚約者になることが出来た幸運な女だ。

 惜しむらくはあの性格か。俺としては意見をいうような女ではなく俺のしたいことを察して先回りで行うメイドのような、奴隷のような存在であればいうことがなかったのだが、どうにも夢見がちで何を考えているのか俺にはよくわからない頭の悪い女だ。


 弟のことを本当の姉のように心配し、兄のことを尊敬し、きっと立派な国王になるんでしょうね、と俺に寝物語のように聞かせて来る。

 何度殴り飛ばし蹴り飛ばし、言うことを聞かせ従順な女にしてやろうと思ったか。

 だが、今そのような事をして兄や父に疑惑を持たれるのは避けたい。


 あくまで自然に兄に死んで貰う。その後、俺が王位継承権第一位となり、父上に引退頂ければ……その時こそこのクソ女を俺が抱きやすい従順な女に変えてやる。

 ふふ、今からその顔が絶望に歪むのが楽しみだ。

 さあて、俺の野望のため。まずはリオネル。お前から消えて貰うとしよう。


 エレオノーラが部屋から出て行き、近くのメイドか執事に先触れを伝えに向かったのを確認し、部屋に居た俺専用の執事に視線を送る。

 こいつは俺の言葉しか聞かないからエレオノーラでは頼めないのだ。

 それをわかっているからか、既に忘れているからか、エレオノーラは決まって何かを頼む時は外のメイドたちに頼みに向かう。

 俺としては策謀しやすいのでそのままにしているのだが、本当に愚かな女すぎて大好きだよエレオノーラ。


「さて、オーギュスト、そろそろ動くぞ。影共の準備は万全か?」


「はっ、既に暗殺部隊も組織しております。ご主人様までバレる心配の無い精鋭ぞろいでございます」


 間もなく、リオネルも一人での各領地回りに狩りだされるはずだ。

 その護衛に暗殺者を紛れ込ませる。

 すでにリオネルの側近に成り済ましているからな、暗殺自体はいつでもできるが、逃げ場がなければすぐにバレる。

 しかし、屋外であるならば野盗に襲われた、あるいは魔物に襲われたとなれば幾らでも証拠を消し去れる。


 ああ、哀しいよリオネル。惜しむらくは王族に産まれてしまった事だろう。

 そうでなければ俺の自慢の弟に成れただろうに。

 くく、くくく、くははははははははッ!!

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