81話・ロゼッタ、ご紹介と依頼内容確認3
「と、まぁ、自己紹介も済んだし、そろそろ今回の依頼に付いて説明しようか」
「はい。といっても偵察任務、ですよね?」
「ああ。だが嬢ちゃんは偵察任務はどういうモノか知ってるか? ただ行ってゴブリンの巣を確認しました。帰ってきました。じゃねーんだからな」
お、おおぅ。なんか凄い迫力で言われたんだよ。
思わずたじっと足を後ろに下げてしまった。
おっちゃんが凄んで来ると何かわかんないけどちょっと怯んじゃうんだよ。
「いいか、偵察ってぇのは、まず見付からねぇこと。見付かった場合敵個体を速やかに排除。自分が近くに居る事を他のゴブリン共に知らせちゃならねぇ。見付かっちまったらしばらくは警戒しやがるからな」
「偵察中は音を立てるのも厳禁だ。話など持っての他。俺らに聞こえるってこたぁゴブリン共にも聞こえるってことだしな」
うん、私一人だけなら魔法でなんとでも成りそうなんだよ。
魔法便利だな。
とりあえず今日は皆さんの普段している偵察を教えて貰うことにしようっと。
それから軽い説明を受ける。
キーリもちゃんと聞くように。
え? 気配殺すのは簡単や? ゴブリンなんかにウチは見付からへんよ?
畜生、邪神だったよこの娘。ゴブリンたち相手なら隠蔽状態で巣の中見回って来れるくらいには隠蔽スキルが凄いんだって。卑怯だな。
皆でぞろぞろ森へと向かう。
斥候任務、だよね?
ゴブリン滅ぼす訳じゃないよね?
森の中に入っても皆隠れる気配は無いんだよ?
隠蔽スキル使ってる?
あ、ゴブリン出て来た。って普通に倒すんかい!?
どうやら森の浅い部分に出て来るゴブリンは駆逐するだけでいいらしい。
ゴブリンの巣が生まれるのは大体人里から離れている、強力な魔物の多い場所。つまり森の深部が殆どらしい。
だから今は隠蔽スキルとかは使うことなくただただ4パーティーでの過剰戦力で迎撃すればいいらしい。
出会った魔物さんが可哀想になって来るよ。
そろそろ深部かな? と思える場所に来ると、皆の気配が一気に消え始める。
隠蔽使い始めたようだ。
私? 既に使ってるよ。森に入った時からキーリの隠蔽魔法で存在感は希薄なんだよ。
(お嬢、ここから先の説明は僕がするね)
リエナート君が近づいて来て話しかけて来た。
レイドパーティー組んでるからか皆の居場所は把握できるのだ。
隠蔽スキルは仲間には効果ないようだ。
にしても、やっぱりリエナート君は女の子みたいだなぁ。
近くに来ると匂いも花の香りがするし、綺麗好きなのか他のおっちゃんたちが数日風呂に入ってないのがバレバレなのに、彼だけは小奇麗だし。
せっかくなのでその辺りを聞いてみると、彼の実家が宿屋らしく、お風呂完備してるらしい。
つまり、毎日のように風呂に入れるのだ。そりゃ小奇麗だよね。
御蔭で皆の臭いがひどすぎるように感じてしまうのでパーティーでは大変な思いをしていると嘆いていた。
しばらく世間話しながら歩く。相手に聞こえる程度の小声なら大丈夫らしい。一応大事を取って風魔法で声が外に出ないようにはしといたよ。真空を挟めば聞こえないのだよ。
なんだか思考的なモノが似通ってるのは凄く話しやすい。
というか、これは女の子同士の会話なんだよ。なんで違和感なく話し合えているのかな?
「あ、合図だ、話は終わりだよロゼッタさん。ほら、あそこのゴブリン見える?」
なんか仲良くなった御蔭かお嬢からロゼッタさんと呼ばれるようになりました。なんだか距離も近い気がするんだよ。これはまさか、私に気がある!?
だ、ダメよリエナート、私には婚約者が……
「あ、こっちに来るよロゼッタ」
「どうしますの?」
「うん、自分の隠蔽スキルを信じてやりすごそう。これからしばらく動かないように」
ゴブリンが目の前にやって来る。
私達は微動だにせずゴブリンを見送る。
ゴブリンは私達に気付くことなく真横を通り、別の誰かの元へと向かっていく。
あ、動いた?
ヘイホーさんが即座にゴブリンに近づき背後から首を掻き切る。
あ、暗殺者なんだよ!?
秘密裏に処理されたゴブリンがアイテムへと変化し、回収されていく。
さすがに手際が良いんだよ。
皆暗殺者が向いてると思うんだよ。
なんでそんなに上手いのかな?
数体のゴブリンを倒した後、私達は厳重な警戒をしているゴブリン達を見付けた。
どうやらあそこが目的の巣がある場所らしい。
うん。なんか大量にいる気がするんだよ?
「おいおい、こりゃヤベェなんてもんじゃねぇぞ?」
って、声出てるよカルデモンさん!?
すぐに気付いたヨイコラサーに窘められて黙るカルデモンさん。
こらこら隊長がやらかしてどーするんだ。
にしても、ゴブリンの数多過ぎじゃない?
これは大家族もびっくりなんだよ。
しかし、これ打つ手あるんだろうか? 最悪キーリを中心に投げ込めば何とかならないかな?
あ、なるんだ。ゴブリン相手なら邪神ちゃん負ける気しないらしい。
うん、敗北フラグに成りそうな気がするんだよ。




