792話、アルケー、タダより高いモノは無いのだよ
SIDE:アルケー
オレは今、武闘大会の客席で、戦闘を観戦していた。
正直、今年のレベルは結構低い。
というか、実力者と非実力者ばかりが当たっているせいで見ごたえのある戦いがディムロスとボートマンだけだった。T男とかいう優勝候補もワンパンで勝利してしまったし、二回戦以降でなければ燃えるような戦いは見えないらしい。少し退屈である。
退屈と言えば、この暗殺者どもだな。
暇潰しにベルングシュタットの影どもに数匹見逃して送ってくれと伝えてみたものの、暗殺特化の組織であるアルケーニスを相手にしてはぽっと出の暗殺集団など雑魚同然である。
ぽいっと捨てるように投げたナイフに額を貫かれた暗殺者が人知れず倒れる。
吹き矢でメテオラを狙ったらしいが狙いが甘いし近過ぎる。
それでは自分がここに居るので狙撃して暗殺阻止してください、と言っているようなものだ。
吹き矢を行うなら3倍位の距離を空けて出直してこい。
再びナイフを投げる。
民間人に化けてメテオラに近づいていた男がうなじにナイフを受けてすとんっと椅子に座り込む。
影たちが民間人に化けてソイツの友人を装い回収。すぐに撤収していった。
しかし、数だけは多いな、叛竜王国からの刺客だったか?
各国に有る暗殺集団に片っ端から声でも掛けているのかもしれないな。
アルケーニスはあそこからの依頼は受けるなと各地に厳命はしてあるが、末端はやりそうだな。
別に阿呆がメテオラ暗殺に動いて処理されるのは構わんが、末端の行動すら把握できてないとなるとロゼッタの奴に突かれる隙になりそうだしな。
「随分と、お暇そうですなぁ」
「ケーニスか。何か用か? 貴様の胡散臭い顔はこ奴らには刺激が強過ぎる」
「おやおや、これは手厳しいですな。ロゼッタ嬢にお願いされていたナッシュ少年への伝言を無事伝え終わりましたゆえ戻って来たのですが? 観戦しても良いと許可は頂いておりますよ」
ロゼッタめ。なぜこ奴に観戦チケットを渡したのだ。
「とりあえず近づくな。歯茎がうつる」
「被害妄想すぎでは!? 仕方ありませんな、キーリ嬢、ご一緒よろしいですかな?」
「そこでウチ巻き込まんといてくれへんかな? 折角観戦に注視して赤の他人決め込んどってんで?」
この野郎、オレを切り捨てるつもりだったのか!?
こんな似非紳士の相手など組織内以外でしたくもないのだが。
「子供の教育に悪いからケーニスゴーホームや。そこでおとなしゅう座って『私は空気』とか繰り返しときぃな」
「ではお言葉に甘えまして。私は空気私は空気私は空気……」
「ちょぉ!? 隣に座んな、変な言葉吐き続けるなこのキチガイがっ」
「言われた通りにしただけですのに、酷い扱いですなぁ。ですがそこがまたチャーミングで私は好きですよ首領殿。ハッハァ!」
気持悪い笑みにオルとロスがひぅっと怯えてキーリに抱きつく。
オレがナイフを投げると、ぎりぎりでケーニスが避けて真後ろの男に突き刺さる。
悲鳴を上げるより速くケーニスが杖で男を付いて喉を塞ぐ。
「しかし、多いですなぁ。おや、こちらはアルカエスオロゥの専属暗殺者ではないですか。珍しい方もいらっしゃったものだ」
「おいおい、そんなのもいるのか。なんでそんな奴らが叛竜王国なんぞの願いを聞いている?」
「さぁて、私ではなんとも。所感でよければお話ししますが?」
ふむ、叛竜なぁ。
「とりあえず、話せ」
ナイフを投げつつ話を促す。
「仮説として二つ。一つはこの機に天竜復活を完全に阻止したい国が加担した結果。二つ目は叛竜王国の裏に大国がいる場合ですな。暗殺組織が大金を積まれてやっているだけ、とも考えましたがアルカエスオロゥの暗殺組織まで出張って来るとあってはその線は薄いでしょうな」
「なるほど、つまりお前は、この機にライオネルに巣食うアルケーニスの排除に暗殺集団が動いたわけではない、というのだな?」
「そも、彼らも独自に国家を根城にしている集団です、他国に巣食った同胞を殺すためにわざわざ危ない橋は渡りますまい。余程この国に食い込む旨みがあれば別ですがな。そういう意味で、アルカエスオロゥの暗殺者がいるということはそれなりに意味があるということですな」
南の宗教国家がちょっかいを出し始めたか。
「ケーニス、影の奴らと共同して暗殺集団がどこから参加しているのか調べろ」
「了解いたしました。では、観戦したらすぐに」
「今すぐ行けよ!?」
「ロゼッタ嬢にメテオラ様の警護を依頼されておりますでな。このチケット以外、タ・ダ・で。影の方には既に連絡済みですので私一人参加せずともやってくれますよ。優秀ですからなぁ、ハッハァッ」
チッ、ロゼッタめ、なんでこんな奴にまで警護依頼を出したのだ。
確認に向いたいが暗殺者共が多過ぎる。さすがにここでオレが抜けるのは不味いか? 試してみよう。
おっとしまったぁ。吹き矢を防ぐのミスってしまったぁぁぁ。
メテオラに毒矢が当たる刹那。何処からともなく生えた触手が矢を弾く。
……よし、ロゼッタに聞きに行こう。ここは邪神一人居れば事足りるだろ。




